第2話 放り出された森でオークと戦う

 馬車に乗っている間は、拘束具をつけられた。

 

 移送される途中、さまざまな街や景色を見た。


 夕焼けのように赤黒く輝く草花や宝石のように透き通るように光り輝く湖、真っ白に雪化粧した山々など美しい景色を見て感慨深くもなったり、雪道の凍てつくような寒さや砂漠の照り付けるような暑さにうなされたりもしたのだ。


 そうしながら、俺はクリエント街の近くまで移送された。


 クリエント街の近くの森につくと、馬車が止まり、俺は馬車から放りだされる。


「いてっ‥‥‥」

(もう少し優しく出せよな。でもこれで、ようやく馬車の生活ともおさらばだ)

 

 その後、俺は拘束具を解除してもらい、開放される。だがもう一つの不安があった。


「‥‥‥あの‥‥‥ここは森のようですが‥‥‥」

「そうだ。お前は、この森に解き放たれるのだ。」


「そんな‥‥‥こんな森に放置されたら生きれませんよ‥‥‥」


「それが狙いだ。お前みたいなものを生かしておく必要はない。だが、少しかわいそうな感じもしなくもないからこの剣だけはやろう。」


 護衛のものは、俺に向かって剣を放り投げてきたのだ。


 俺は放り投げられた剣を受け取った。その後、護衛らは馬車から俺の荷物の入ったバッグを取り出すと、じゃあなといい去っていったのである。


 残った俺は、荷物の入ったバッグを担ぎ、剣を装備して、森をさまよっていたのである。


 森は薄暗く、魔物の叫び声が響いていた。


 俺は、恐怖しながらも魔物に出くわさないように、茂みに隠れながら進む。


 だいぶん歩いた。でも、森を抜け出せてはいなかったのである。


 さらにしばらく歩くと、光がさすところが見えた。もしかして出口か。


 俺は喜びながら出口に向かって走った。しかし、その出口付近にいる魔物に俺はおびえた。


 その魔物は立派な牙を生やしていて、体毛が分厚くて図体が太いオークであった。そのオークは番兵のように立っていたのである。


 俺は、そのオークを見ておびえと震えが両方出た。


 このままではまずいと思ったが、オークも俺の存在に気づいたようだ。逃げられるような距離ではなかった。


 戦うしかない。俺は、バッグを近くに置き、剣を取り出し、備えた。


 オークは、俺が臨戦態勢に入ったのを理解して、槍を前に出して、こっちに向かって走り出す。


(こっちに来る‥‥‥オークは猪と同じで直進ばかりだ。寸前でよけて攻撃だ。でもちゃんとダメージ入るかな)


 オークは、そんな俺をよそに突っ込んできた。突っ込みながら、槍をふるってきたのだ。


 俺は、寸前のところで真横に飛んだ。槍は当たらなかった。


 そして、よけたと同時に、オークのお腹に向けて剣を刺した。どうやら俺の不安な考えは外れ、もろに食らったオークの腹からは、大量に血が出ていた。


(‥‥‥倒したか)

 そう思った矢先、オークが槍をふるってきた。


 俺は唖然としながらも、何とかしゃがみこむことに成功してよけれた。その後、俺は少し距離をとった。


(くそっ‥‥‥やはり、あの一撃では死ななかったか。こうなったら仕方ない、剣術で対応だ。)


 俺は、剣を体の正面に添えた。


 オークは再び、突っ込んできた。槍を再びふるおうとした。俺は、ふるってきた槍を剣の側面でしのぎ、そのまま、剣を振り上げて、首に剣を振り下ろした。


 振り下ろすと、オークの首は真っ二つとなった。


 少し沈黙の後、俺は口を開いた。


「やったぞ!!オークを倒したぞ!!剣術をしっかり学んでおいてよかった。」


 俺は、学んだ剣術でオークを倒してはしゃいだ。


 その後、バッグを担ぎ、オークの身に着けていたものを回収した。


「くそっ、オークの服とズボン、槍しか身に着けていない。しけてんな。」


 愚痴をこぼしながらも、回収したものをバッグに片付ける。もうパンパンだったが、ギリギリ入った。ただし、槍だけは手に持った。その後、バッグを担ぎ、出口に向かって歩き出す。


 出口を出ると、輝く太陽と、透き通るような青空、雄大な草原が広がっていた。さらにその先には、少し大きな街が見えていたのである。


「あれがクリエント街か。」


 俺は、街を確認すると、そこに目掛けて走り出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る