離れていても、離れているからこそ

この物語の中心には、二人の青年がいます。
一人は主人公のレンドール。もう一人は親友のエラリオ。
幼なじみであり相棒である彼らが決裂するところから、物語は幕を開けます。
決裂、とは言いましたが、彼らは決して敵同士になったわけではありません。互いの信念、希望と責務がぶつかったがゆえに、袂を分かつことになるのです。

舞台は巨大な渓谷に囲まれた国。〈白の巫女〉の預言が大きな影響力を持ち、“護国司”が政を行い、“護国士”が治安を守る世界です。
レンドールとエラリオも、その護国士の一員です。
ある日彼ら護国士のもとに、白の巫女の預言が下されます。その預言とは「谷の先にすべてを滅ぼす黒き瞳の魔物がいる、その道を変えたければ魔物を倒せ」という内容でした。
果たしてレンドールとエラリオの前に、黒き瞳の魔物が現れます。しかしその姿は、年端もいかない少女でした。

幼い少女を巫女の予言どおりの魔物にさせないため、保護しようとするエラリオ。
護国士としての使命を果たそうとするレンドール。
二人の決別は、やがてこの世界の成り立ちの秘密にも関わる、大きな渦となっていきます。

この物語は、ある意味では「バディもの」と言えると思います。レンドールとエラリオ。二人の距離は遠く離れてしまいますが、それでもなお互いをよく理解し、信頼し合っています。
エラリオならこうする。レンドールならきっとそうする。
目の届かない場所へ行った相棒を、まるですぐ側にいるかのように、彼らはお互いを“見て”います。
その絆の深さ・強さには、他の誰にも踏み入ることはできません。
離れていても互いを理解し、離れているからこそ揺るぎない信頼を抱く。
常に一緒にいなくとも、これは立派なバディと呼べる関係ではないでしょうか。

それぞれの譲れない思いを貫こうとする二人の青年。そして希望を見出された黒き瞳を持つ少女。
預言の真意とは。少女は本当に魔物なのか。彼らが旅の終わりに目にする、世界の答えとは。
どうぞその目で確かめてみてください!

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