第6.5話 いじめ(葵視点)

私がAクラスの先輩を倒した後、私と啓斗は一緒に弁当を食べていた

「やっぱり葵の料理は美味しいな、昨日は自分の料理を食べたからより一層美味しく感じるし」

そう言われ、胸の鼓動が少し早くなるのを感じながら平静を装って会話する

「そう言ってくれると作った甲斐があるわ。素直な感想が一番嬉しいし、啓斗の場合はお世辞じゃないってわかってるから安心して感想が聞けるし」

なぜ私が啓斗の言葉が嘘じゃないとわかるのか、それは啓斗との付き合いが長いから・・・ではなく、私の能力が関係している。啓斗はまだできないが、私は青龍の力の一部が常に発動されている状態にある。それにより相手の心を見ることができる。と言っても相手の心を読むのとは違い、私の場合はどれほど心の汚れ具合を見る程度。この力で悩んだこともあったがその話はまた今度。つまり、啓斗の心は透き通っており、嘘をつく時の心の澱みが全くないため、啓斗の言葉が嘘でないことはすぐに気づくことができるということだ

(あら、あれは)

そんな時、視界の端に啓斗に対して一際強い負の感情を向ける5人の生徒が映った。そしてバレないように彼らを見ていると、その生徒たちは妬みのような、恨みのような感情を啓斗に向けたまま下駄箱の方に歩いて行った

(なんだか胸騒ぎがするわね)

その生徒たちを怪しんだ私は尻尾を出さないように意識して能力を使い、小さな龍の姿をした分身を作り彼らを追いかけさせた、その瞬間

「そういえばさっきのやつなんで葵に・・・」

と話しかけられたので啓斗に考え事をしているのが悟られないように私は会話をするのだった。


お昼を食べ終わり啓斗と別れた後、私は下駄箱に来ていた。私の分身は視界を共有することも可能で、さっきの生徒たちが毛糸の靴を盗み、果し状のようなものを置いていったのを見たのでそれを確認しにきたのだ

「靴を返して欲しければ屋上に来い、必ず1人で来ること・・・、靴を盗んで屋上に来るように仕向けるなんて、姑息な手を使うわね。今すぐ懲らしめたいけどお昼はあと少ししかないし・・・。午後の授業が終わったらすぐに屋上に行って、啓斗が靴がないことに気づく前に下駄箱に靴を戻しておくしかないわね」

そう言って、私は自分の教室に早足で帰っていった。



午後の授業が終わったあと、私は帰りの用意も後回しにして屋上に来ていた。するとそこには20人ほどの生徒がいて、一番前にいる生徒に見覚えがあることに気づいた

「また貴方なの」

「これはこれは、俺の未来の彼女候補のSクラス『神童』の葵じゃないか、どうしてお前がここにいるんだ」

「時間をかけたくないから単刀直入に言うわ・・・貴方達、私の啓斗に手を出して覚悟はできてるんでしょうね」

その後、お互いに挑発しあった後に私に向かってたくさんの生徒が襲いかかってきた、それに対し、私は迫りくる攻撃は避けたり受け流したりして対処して、少しでも隙を見せた生徒には重い攻撃を放ち一撃で気を失わせた。

十数分後、20人程度の数で私が負けるわけもなく、最後には私だけがその場に立っていた。私は主犯格と思われるAクラスの男に近づき、啓斗の靴のありかを聞いた

「啓斗の靴はどこ?正直に答えなさい。嘘をついたらどうなるかなんてその出来の悪い頭でもわかるはずよ・・・でも、もっと痛めつけて欲しいなら嘘をついてくれても構わないわよ」

そう言って私はその男を威圧した。するとその男は案外あっさりと口を割り

「そこに、ある、ゴミ箱の中だ」

と怯えながら言った。そうしてゴミ箱の中を見ると少し汚れた啓斗の靴があった。私は靴の汚れを取るために清めの力を使い汚れを洗い流した

「これでよし、思ったより時間がかかったけど啓斗が屋上に来てないってことは、バレてないってことだから、とりあえず一件落着ね。あとはこいつらの処遇だけど・・・学園は動かないだろうしほっといたらまた啓斗に嫌がらせするかもしれないし・・・。仕方ない、私の力を使いましょう」

そう言って、私は清めの力をここにいる生徒たちに使った。私の清めの力は頭の中にある余計な思考を一旦洗い流して冷静させることができる。記憶を消すわけではないのでそこは安心。ただし、相手が自分より格下で、尚且つ戦闘不能でないといけないが

「これでよし、Aクラスの生徒もできたからこれが使えないのはSクラスだけ、もしかしたらAクラスの上位の生徒もできないかもしれないけど・・・、考えても無駄ね」

そう言って私は屋上を後にした。

自分の教室に戻ってきた私は帰る用意をしていた。そして、用意が終わったのと同時にスマホにメッセージが送られていたことに気づいた

「啓斗からのメッセージ。何かしら」

そう言い啓斗からのメッセージを確認した

『葵、僕の靴下駄箱に持ってきてくれ』

それを見て私は

『わかったわ、今持っていくから下駄箱で待ってて』

と打った文字を送信してポケットにスマホをしまった。しかしその瞬間とあることに気づいた

「なんで啓斗が靴を持ってるのが私って知ってるのよ」

そのことに気づいた瞬間たくさんの疑問が頭の中を飛び交った

(もしかしてあの現場見られた?見られたとしたらいつから?そもそもなんで屋上にいたの?どこで知ったの?何が原因で私が屋上にいたことバレたの?)

そうして混乱している時に私はあることを思い出した。

「そういえば・・・あの手紙、啓斗の下駄箱に置いたままだった」

そのことに気づいた瞬間、追い打ちをかけるように屋上で言ったことを思い出した


「貴方達、"私の"啓斗に手も出して覚悟はできてるんでしょうね」


それを思い出した直後、顔が熱くなるのを感じながら私は心の中で

(私のバカーーーー!、なんであんな恥ずかしいセリフを堂々といえたのよ!このセリフ聞かれてたら、いや聞かれてなくても、恥ずかしすぎてまともに啓斗の顔見れないじゃない!)

と叫んだのだった

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