第5話 いじめ(前編)
そんなこんなで僕と葵は学校に到着した。葵のSクラスと僕のFクラスは反対方向にあるため下駄箱で分かれることになる
「じゃあまたお昼に」
「ええ、中庭集合ね」
そう言葉を交わして僕と葵はそれぞれ自分のクラスに向かって歩き出した
「にしても登校するたびに葵が有名人だって嫌でも思い知らされるな、登校している生徒どころか葵が近くに住んでるって知ってる近所の人たちでさえ葵が近くにいたら目で追いかけてるんだから。いや、目で追いかけるのは葵が可愛いからか?まあ、もしそうなら納得だな、今まで見てきたどんな美女より葵の方が何倍も可愛いからな、中学では葵の知らないところでいつのまにかファンクラブができてたぐらいだし、もしそうならこの学校の生徒もなかなか見る目が・・・っ」
と続けようとしたところである生徒が僕にぶつかってきた
「おっとと、すみません前をよく見てなくて、次からは気をつけます」
と僕が謝罪を口にすると
「・・・ふんっ」
と言って去っていった
「コミュ症なのかな?・・・なんて冗談はさておき、なんだあいつ感じ悪いな、もしかして不良か?だとしたら怖いな、目をつけられてないといいけど」
そう言い、一抹の不安を抱えながらも僕はまた自分のクラスに向かって歩き出した
「最高峰の学園でも不良っているんだな・・・、いや、むしろ最高峰の学園だからこそか。実力があれば入れるから、自分より下の相手を見下すような強者が学歴目的で入学してくる・・・。学園側がいじめを黙認してるのもそこそこ有名な話だし・・・、こうやって並べてみると不良生徒がいない方がおかしいぐらいだな」
と今度はちゃんと前を見て、独り言を呟きながら教室に向かった。
教室に着いた僕が自分の席に座ろうとした時
「なんだこりゃ」
自分の席に落書きが施されていることに気づいた。周りをよく見ると僕のことを疎ましく思っていると思われる男子が、5人ほど固まって僕のことを睨みつけていた
「机に落書きとか小学生かよ・・・なんて言ってる場合じゃないな、登校2日目にこれか、先が思いやられるな。・・・にしてもなんでこんなことしたんだ、僕は何もしてないはずだし」
なんて言っているが実際はなんでこんなことをしたのか大方予想がついている。おそらくFクラスという最底辺のクラスにいながら、『神童』と呼ばれてるこの国トップクラスの実力者である葵と仲良さそうに、話しながら登校している僕に嫉妬しているのだろう
「まあでも、数ある嫌がらせの中から落書きを選んでくれたことには感謝だな」
そう言って僕は能力を発動した
「洗い流せ」
僕がそう言った瞬間、机が水で覆われて落書きが瞬きする間に綺麗さっぱりなくなった。僕の能力である青龍は清めの力を持っていて、落書きなんかはすぐに消すことができる
「皿洗いや、掃除に洗濯はこの力一つでなんとかなるから家事が楽なんだよな」
余談だが、僕の家の掃除機や洗濯機は両親が家を出て以来一度も使われていない
「こちとら中学でも嫌がらせ受けてたんだ、自慢できることじゃないけど嫌でも耐性がついた。あいにくとこんなことでいちいち落ち込むほどやわなメンタルはしてない。・・・まあ、落書きを消さなくていいならそれに越したことはないけど」
そう言って僕は自分の席に座った。
「中学でも同じようなことがあったな、あの時はいつのまにか解決してたからいいものの、今回はどう解決しようか」
正直に言って、葵を心配させたくないのと葵を頼る癖をつけたくないという2つの理由で今回は僕一人で解決しようと思っている。だが、僕は葵ほど頭がいいわけではないため、しばらく経ってもなかなかいい案が思いつかなかった
「ああ!くそっ!こんな時に妙案の一つも出てこない自分の頭が嫌になる。いじめっ子全員まとめて叩きのめす、なんて脳筋ゴリ押ししか思いつかないとかどうなってんだよチクショウ!そもそも5人相手で勝てるわけないのに・・・」
「キーンコーンカーンコーン・・・」
そんな感じで授業が始まるまで過ごしていたらチャイムが鳴ってしまった
「やべっ、授業の用意何一つしてない、とりあえずこのことは帰ってから考えるか」
そう言って僕は急いで授業の用意をするのだった。
あれから時は過ぎて昼休みになった。今は葵と一緒にお昼を食べるため中庭で葵を探している最中である
「えーと、葵は・・・あっ、いた!」
そう言って葵が座っているベンチに向かおうとした瞬間・・・
「葵の前にいるやつ誰だ?」
葵の目の前でいかにもチャラそうな生徒が話しているのに気づいた、しかも周りにいる生徒もみんな葵たちのことを見ている
「ってあいつ、朝僕にぶつかってきた奴じゃん、何やってんだ」
そう、葵に話しかけていたのは朝の感じ悪い生徒だった。そのことに気づいた僕は様子を見守るために隠れて聞き耳を立てることにした
「いいだろ、あんなFクラスの雑魚よりもAクラスの俺の方がお前を楽しませられるからよ。俺の女になれよ葵」
(あいつAクラスだったのか)
と僕が思っていたら、葵がAクラスの奴を睨みつけた
「気安く呼び捨てにしないでください。先輩だからそこには目を瞑ったとしてもあなたの心は汚れきっている。そんな下衆と交際するつもりはありません。手荒な真似はしたくないのでどうかお引き取りください」
「ヒュー、随分な塩対応だな、そして生意気。俺は気の強い女は嫌いじゃねえ」
そう言い舌なめずりする目の前の生徒を葵は一層強く睨めつけた
「貴方の好みなんて聞いてません。早くこの場から立ち去ってください」
「そうツンツンするなよ・・・そうだな、嫌だ、と言ったら」
「その時は実力でねじ伏せます」
そう葵が言った瞬間中庭の空気が張り詰め、空気が一層重くなったのを感じた
「そうか、なら・・・」
とAクラスの生徒が俯きながら言うと、顔を上げた瞬間
「やれるもんならやってみろ!」
と言いながら能力を発動したAクラスの生徒の頭には半円型の耳が現れ、葵に殴りかかった。それに対し、葵も能力を発動して迫り来る攻撃を全て紙一重で避けている。その光景を見ながら僕は
(あっ、あいつ終わったな・・・)
なんて呑気に考えいた。そんなことを考えてる間にも2人の勝負は続いていて
「オラオラどうした!さっきから防戦一方だぞ、実力でねじ伏せるんじゃなかったのかよ!」
「・・・」
「無視するなんて悲しいじゃねぇか!なんとか言ったらどうだ!それとも、避けるので精一杯で喋る余裕もないか!」
「・・・こんなものね」
「ああ!なんて言ったん、ゴフッ!?」
Aクラスのやつが言い終わるより早く葵がアッパーをかまし男の体が宙に浮いた。そしてそのガラ空きの体に葵は正拳突きを叩き込み、男を吹き飛ばした。そうして真っ直ぐ飛んでいった男は背中から校舎にぶつかり
「がはっ」
とうめき声を漏らしてその場に倒れ込んだ
(あーあ、葵をナンパしなけりゃこんなことにはならなかったのに。まあ、自業自得か)
と僕は思いナンパした男が死んでないことを祈るのだった。
ちなみに僕はナンパした男を心配しているのではなく、葵が殺人者になることを心配いているでそこのところ勘違いしないように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます