白き花が染まるとき。

売春島の存在は知っている。現状や過去について、また、インタビューやドキュメントの類も見たことはある。知っていても、鮮烈なリアリティを本作は持っていて、それを私たちにまず呼び起こす。

親に売られ、そこに宿った「赤井 花」という少女は、白い存在だ。

純真無垢。その四文字が、花を表す言葉として浮かぶ。作中で、この白い花は、幾たびも赤く染められてしまうが、その赤色は望ましいものではなかった。

「頭が弱い」あえて言えば、そうなるだろう。

彼女の穏やかな幸せが、そこにあった。だがサナイという存在に、ハナは絡めとられてしまう。

花が赤く咲いたとき、それは悲しみの終焉。

彼女を愛した穏やかな記憶が、最後に残るメモと同じように、せめて花の最期を微笑みで見送ったと、願わずにはいられない。

『花は、咲(わら)う』

著者の願いが、タイトルに要約されている。花は咲い、ほどかれて、私たちの心の土壌に撒かれた。

そしてまた、このタイトルを、私は「咲(さ)こう」とも呼びたい。

花が遺してくれた蕾に、宿る燈火を消さぬよう。

現代に生きる私たちに、著者は本作を捧げてくれた。

ありがとうございました。