素晴らしい作品でした。
実在した売春島に売られて行った少女たちが寄り添って懸命に生きる姿が胸を打ちます。
綺麗だけど知恵遅れの花ちゃん。花ちゃんを懸命に助ける主人公の想子。それを少し遠目から見守る置屋の女将。みんな、不幸な境遇の中でも小さな幸せを見出して、日々の暮らしに耐えています。
そのほんの小さな幸せの象徴が、変哲もない、一杯の中華そば。これが最後まで作品の背骨となっています。
悪い男に身請けされていった花ちゃんを、想子が訪ねるところがラストシーン。誰もが、花ちゃんを想って、心で涙を流すことでしょう。
本作はカクコン10に出品中とのこと、結果は分かりませんが、こういう作品が受賞の栄誉を得るべきだ、と私は思いました。健闘を祈ります。
昭和の終わり、船乗りを相手にした離島の花街(っていうのかな?)が舞台。
”売られて”来たことを悲観する主人公と、同じ境遇にいながら明るく生きる花。
彼女達の暮らしとその後が書かれている。
花街という関心引く舞台設定と二人の暖かい関係性の対比がすごく効いていて、だからこそラストの誰もが共感するただただ純粋な後悔が生きている。
例えば同じテーマを現代の大学を舞台に描いたら退屈になる。先達がたくさんあって、もうひとつ加えれば重たくなりがちなこのテーマを読みやすくて心に響く作品に出来ていてめっちゃ好きです。
一つ気になったところは構成を綺麗にするために意図して二人の描写に徹底されてますか?その効果ですごく読みやすくなって良かったです。けど作者さんの筆致で突貫の例になりますが「お客さんが来ない晴れた日のただ自然が綺麗な島の様子」「停泊が多い荒れた海」だったりキャラクターで言えば「花街にある良心」、女将さんや他のお客さんの描写を読んでみたいです。
もっとわがままに書かれた作者さんの自我がぶりんぶりんに出てる文章を読んでみたいです。