KAC20241 解けない問題

久遠 れんり

恐怖の試験

 僕はには三分以内にやらなければならないことがあった。

 だが……


 

 雲野月雄くもの つきおは普通自動車第一種運転免許を取るため、免許センターに来ていた。

 五十分間の試験時間。

 試験の問題数は全九十五問で、九十点以上で合格となっている様だ。


『青の灯火信号は、必ず進まなくてはいけない』

 これは良くある引っかけ問題だ。

 答えはバツ。前が渋滞していたり、緊急自動車が来ているときもある。


『信号が青の灯火になっても、前の車が発進しない場合、警音器を鳴らして知らせてあげる』

 これもバツだ。警笛。つまりクラクションは危険なときと、警笛区間以外は鳴らしてはいけない。


 調子よく解いていく僕だが、手が止まる。


『私は、月雄に囁かれるとき右耳がいい』

 はっ? なんだこれ。


 今俺には彼女はいないし、何で俺の名前?

 囁く?

 女の子にそんな事した覚え……


『月雄がバックに入れるとき、私はゾクッとする。○か×かどっち?』

 えっ、バックに入れる?

 えっ車? 教官はあれ? 男だったし。


 えっ? バック。男?


 いやな考えが浮かぶ。でもそんな事、した覚えもない。


 いや幾人か教官はいたし、担当は変わった。

 その中で、何とか思い出すが、女の人が思い出せない。


『幾度も同じ事を聞いたのは、私の興味をひくため?』

 幾度も同じ事を聞いた?


 ドンドン判らなくなってくる。

 確かに初めての車の操作。一番最初は聞いた。

 でもあれは。


 そして、問題内容が変わる。

『娘の事を本気で愛している』


 いや試験問題がこれって、一生免許が取れないんじゃ?

 僕はもう訳の分からない汗でびっしょりだった。

 そして。

『僕は、きみを愛している』

 配点十点。


 時間いっぱいまで考えたが、その答えを埋める事ができず諦めた。


 時間が来て退出をする。

 気のせいか、職員の人たちが、視線をそらす。


 そして、結果発表前に、どこかでおっさんの咆哮が聞こえた。

 試験には落ちたが、きっとそれで良かったと思っている。


 この会場、たまに外れ問題が出るらしい。

 それに○をすると……


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KAC20241 解けない問題 久遠 れんり @recmiya

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