その血の呪い、その運命の呪い。

親から子に引き継がれる呪いってあると思いませんか? 例えば、虐待された子供は自分の子供も虐待するなんて言いますよね。あるいは一部の精神疾患は遺伝する可能性も示唆されています。親が狂ったから子も狂うのでは? これも血の、運命の呪いですね。

本作『豊臣の子』は、そんな親から子に受け継がれる呪いを物語った、歴史小説の傑作です。タイトルの通り、豊臣秀吉の子、一族の物語。

ある乳母の死をきっかけに、豊臣家の当主が発狂し……? 

物語は最初、豊臣家の当主秀頼が発狂した理由を探るミステリーとして始まります。やがて中盤、この謎に決着がつくと、今度は新たな問題が発生、そして物語は大阪の陣へと移っていきます。
みんな狂っている。まさにその通り。作中のキャラクターは全員何かしらのことに執着し、皆精神を、魂を失っていきます。そうした先、まるで散りゆく花のように解けていった命の先、その血の呪い、その運命の呪いが……

おっと、熱くなりましたね。ネタバレにならないよう、ここまで。
結末はぜひ、読んで確かめてみてください。
一族の呪い、ある意味で究極の親ガチャ物語(なんて言うと格が落ちるか)。
自身に紡がれた運命に何かしらの不満、遣る瀬なさ、諦め、苦悩がある方はぜひ、読んでみてください! 

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