第5話 冒険者登録
――大きな建物の前。
「ここがこの街の冒険者ギルドさ」
俺が次につれて来られたのは冒険者ギルドだ。ここでは仕事を引き受けたり、魂石の買取なんかがして貰える。アニメやラノベなんかにある冒険者ギルドまんまの場所だと思ってくれればいい。
ここに来たのはバンズ達のクエストの清算と、俺の冒険者登録をする為である。
因みに、冒険者登録には身分証が必要になる訳だが……それは転生時にちゃんと神様に用意して貰ってあるので問題ない。インベントリの中だ。
「なんだぁ……」
「おいおい、随分デカいな」
ギルドの扉を屈んで潜ると、中にいた小人達が俺を見てざわつく。ミニポーションを飲んだとはいえ、それでも俺は彼らから見たらかなり大きい。流石に魔物とは間違われないが、どうしても目立ってしまう。
受付のカウンターまで行き、バンズがそこにいる受付の少女に声をかける。
「ミキティ。クエストの清算だ。それと――」
彼は振り返らず、背後にいる俺を右手の親指で差した。
「あいつの冒険者登録の手続きを頼むよ」
「あ、はい」
「アルティメット・パワーです。よろしくお願いします」
「アルティメット・パワーさんですね。賜りました……それにしても、凄く大きいですね」
受付の少女――ミキティが、俺を見て感心した様にそういう。匿名掲示板にいる様な連中が反応しそうな言葉で。
「これでもミニポーションを飲んでるのよ」
「え!?ミニポーションを飲んでこれなんですか!?じゃあ本当はどれだけ大きいっていうんです!?」
「は?あれで縮んでるのか?」
「そんな事あり得るか?」
「あれよりデカいとか……そこまで行くともうほとんど魔物じゃねぇか」
ケディの言葉に、ミキティが目を丸める。後、彼女の声が大きかったせいか、それを聞いた周囲の冒険者達が再びざわついた。
「あ、すいません。あたしったら大声を出してしまって……」
「ははは。これで縮んでいる状態なんて言われたら、ミキティが驚くのも仕方ないさ」
「ほんとすいません。まずは清算からしますね」
バンズ達の受けてい仕事は、貴重な薬草の収集だ。ミキティはクエストの清算と、道中で彼らが狩った魔物の魂石の買取の処理をテキパキと済ませる。
「次はアルティメット・パワーさんの冒険者登録をしますので、身分証の提示をお願いしますね」
「あ、はい」
俺は神様に作って貰った身分証を、インベントリ――空間に穴が開いた感じ――に手を突っ込んで取り出す。
あれ?なんか小さいな?
身分証は金属プレートなのだが、思ったより小さい。一般的な名刺を二回りほど小さくした感じだ。この世界の身分証ってのは、どうやら随分小さいみたいだな。
「く、空間系魔法!?」
ミキティに身分証を渡そうとしたら、彼女が目を見開いて驚く。
実はこの反応は二度目だ。一度目は、魂石を収納する時に見せたバンズ達四人の反応である。どうもこの世界では、空間系の魔法は珍しいそうだ。ま、俺のは魔法じゃないけど。
「あ、やっぱこっちでも驚くよねぇ」
「俺達も最初見た時はびっくりしたからな」
その反応を見て、バンズとケイディがいたずらっ子の様な顔をする。二人の親し気な態度を見る感じ、受付のミキティとは仲が良いのだろう。
「パワーさんは魔法使いなんですね」
「ああいや……ただの特殊能力で、見ての通り俺は近接戦闘タイプですよ」
この世界には魔法だけでなく、特殊な能力を持つ者も存在している。まあ俺のは神様から貰ったチートだけど、そういう事にしておく。その方が丸い。流石に神様から貰ったとは言えないからな。
「ああ、成程。特殊能力を持ってる方って、私初めて見ました」
「何を言っておる。わしの弟子のミニエルも特殊能力持ちじゃぞ」
「ああ、そうでしたね。忘れてました。ごめんね、ミニエルさん」
「ああいえ、私のは地味ですから。ははは……」
ミニエルも特殊能力を持っている。相手の魔力の流れが見える魔眼という物で、相手がどういった魔法を使おうとしているかをその魔力の流れから見切る事の出来る効果だ。
まあ対魔法使い用の能力だな。上手く嵌まれば相当強い気もするけど……ただこの辺りに魔法を使う魔物はいないらしいから、全く活用出来てないみたいだけど。
「では、身分証をお預かりし……ん?」
ほんのりと白く発光する金属製の身分証をミキティに渡すと、彼女が眉根を寄せる。そして『んんんんんんんんん!?』とうなり出した。何か問題でもあったのだろうか?
神様が用意してくれた物だし、偽物と見抜かれるって事は無いと思うんだが……ひょっとして普通の人間用だから、小人の世界じゃ通用しないとか?あり得る。
「この刻印と色……ちょ、ちょちょちょ……ちょっと待っててくださいね!上に確認してきますので!」
ミキティが慌ててカウンターを離れ、奥の扉からどこかに行ってしまう。
「パワーよ。お主、何を渡したんじゃ?」
「いや、一応身分証なんですけど……この辺りじゃ通用しない物だったのかもしれませんね」
「まあ遠くから来たんなら、そうなのかもな」
恩人というのもあって、バンズ達は俺の事を全く詮索しなかった。だから道中も、彼らがその辺りの話をふって来る事はなかったのだ。有難い事である。
「お待たせしました」
少し待つと、奥の扉からミキティが戻って来た。黒いスーツっぽい服装をした、片メガネの男性を連れて。
誰?
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