第4話 小人の街
俺は4人に案内され、森を抜けてコビットの街へとやって来ていた。距離的にはあそこから半日ほどの距離だ。
「ここがコビットの街か……」
街の周囲には堀があるが、俺なら軽く乗り越えられそうなレベルの物でしかない。こんなんで、魔物の居る世界で防備として大丈夫んなだろうかと心配になる。まあ、余計なお世話ではあるが。
「ま、魔物だ!」
入り口に近づくと、小人が数人慌てて飛び出して来た。その手には槍が握られており、彼らは緊張した面持ちでその切っ先を俺へと向ける。
「これこれ、慌てる出ない。彼は魔物ではなく人間じゃ」
ガトラーさんが俺の事を説明してくれる。
「こんなにデカイのに……本当に魔物じゃないのか?」
「確かにガタイは桁違いだが、れっきとした人間だ。ワシが保証しよう」
「初めまして。アルティメット・パワーと言います。遠い場所から旅してきました」
俺はフレンドリーな笑顔を浮かべつつ、自己紹介する。人間である事を証明する為に。
「言葉を普通に喋ってるって事は……本当に人間なんだな……こいつはたまげた」
「何を喰ったらそんなに大きくなるんだ?」
「まあ色々と。後はひたすら体を鍛えた感じですな」
実際は遺伝子の問題なのだが、適当に話を合わせておく。嘘も方便って奴だ。別に騙して悪い事をしようって訳じゃないんだからいいだろう。
「はぁー、きっとすんごく体を鍛えたんだなぁ。まあいい。通っていいぞ」
「ありがとうございます」
「ああけど……その体格だと建物とかには入れないんじゃないか?」
「ああ、それなら大丈夫じゃ。魔法の秘薬を飲めばいい」
道中ガトラー爺さんと話していたんだが、この世界には体を一回り小さくする秘薬なんかもあるそうだ。それを飲めば、頑張ればこの街で生活できなくもないとの事。
あ、もちろん効果は永久じゃないぞ。あくまでも一時的な物だ。ここで一生暮らす訳でもないのに小人になるとか、絶対ありえないからな。
「ああ、あれか。普通は狭い所での作業用だけど、確かにこの人ならそういう使い方もありだな」
門をくぐって街へと入った。街行く人々皆、俺に気付いてギョッと固まってしまう。ま、彼らからしたら巨人だしその反応も仕方ない。
「ちょっとここで待っとってくれ」
騒がれながらも俺達は街中を進んで行く。しばらく歩いた所で爺さんが古ぼけた店の前で止まり、中へと入っていった。看板を見た感じ薬屋っぽいので、たぶんミニポーションを買って来てくれるんだろう。俺はデカすぎて入るのが難しいし。
「薬を買って来たぞ」
爺さんが木箱を両手で抱えて店から出て来る。中を見せて貰うと、赤い液体の入った瓶がぎっしりと箱の中に詰まっていた。
「これがミニポーションじゃ。ほとんど売れんから、まとめ買いするから安くしろと値切って来てやったわい」
「さっすが師匠」
あんまり人気のない商品の様だ。まあ滅茶苦茶小さくなるとかならともかく、体を一回り小さくするだけの薬だからな。用途が余りにも限定的すぎるので、売れないのも無理はない。今の俺にはピッタリではあるが。
「どれ、早速飲んでみると良い」
「ありがとうございます。あ、お代を――」
俺はこの世界に来た際に、神様から先立つ物としてお金(世界共通らしい)を貰っている。それをチート空間――インベントリから取り出そうとそうとしたが……
「ああ、代金なら構わんよ。危ない所を助けてもらったお礼じゃ」
「そーそー。それに今回の仕事でがっぽり儲かってるしな」
彼らがあの森にいたのは、特殊な薬草を手に入れる為だった。その依頼額が破格だったからあの森にいた様で、あそこは本来なら危険だから近づかない区域だそうだ。
……テリトリーの外らしいけど、近くにあの一つ目の巨人がいるって考えたら当然ではあるよな。
「そうですか。じゃあ遠慮なく」
お礼と言うなら断る理由はない。
「開けにくいな。あっ……もういいや」
小人用の物なので、瓶はかなり小さい。俺はその蓋となっているコルクを摘まんで引き抜こうとしたが、力加減を間違って引き千切ってしまった。もう面倒臭いので、指先で弾いて瓶の飲み口をへし折って開ける事にする。漫画なんかで力自慢がやるあれだ。
「ははは、豪快な開け方だな」
ごり押しで封を開けた俺は、瓶の中身を一気に飲み干す。まあ飲み干すと言うのは少々オーバーか。俺から見たら極少量だし。
「お……」
体に違和感を感じたかと思うと、視線が急に低くなっていく。どうやら、ミニポーションの効果で体が縮んだ様である。サイズは――もともと腰ぐらいまでしかなかった小人の皆と比べ、今の俺は頭二つ程大きい感じだ。
「体が大きいから容量を増やす必要があるかもと思ったが、一本で十分じゃな。まあ効果時間がひょっとしたら短いかもしれんが」
「ああ、確かに」
ガトラー爺さんの言う通りだ。効果時間は12時程らしいが、俺は元の体が大きいから維持できる時間が短くなる可能性がある。
気を付けないとな。宿屋で寝てる時に元の大きさになったりしたら、部屋を破壊してしまいかねない。まあ、効果時間は様子見だな。
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