第6話 ?
ミキティがスーツを着た片メガネの男性を連れ、戻って来た。男性の年齢は60台ぐらいだろうと思われる。
「お待たせしました」
「初めまして。冒険者ギルドの支部長を務める、ハリスともうします。アルティメット・パワー様で宜しかったですか?」
ギルドの偉いさんの様だ。態度は凄く丁寧なので、身分証の事で責められるといった感じではない様に思える。
「あ、はい。そうです」
「失礼ですが、此方に手をかざして頂いて宜しいでしょうか?」
男性が小脇に抱えていた板をカウンターへと置き、そしてその上に俺の渡した身分証を乗せる。
「これの上にですか?」
「はい。確認のためよろしくお願いします」
ガトラーさんの方を見ると――
「それは身分証が本人の物か確認するためのマジックアイテムじゃ」
――彼がそう説明してくれる。
確認するって事は何か問題が……いや、それ自体は普通か。確認しない方が逆に問題まであるしな。
支部長をわざわざ連れて来たってのが少し気にはなるが、ここで断ったら悪い事してますって宣言するに等しい。ので、拒否するのはアウトだ。俺は素直に板の上に手をかざす。
まあ神様の用意した物だし、きっと大丈夫なはず……
俺が手をかざすと板がうっすらと青く光る。
「本人で間違いない様ですね」
どうやらオッケーの様だ。まあ俺は神様を信じてたから、大丈夫だって確信してたけどね。いやほんと。
「アルティメット・パワー様。こちらへどうぞ」
支部長が俺を案内しようとする。でもどこに? 登録は別の場所じゃないと駄目なのか?
「んん?ギルド登録はこの場でよかろう。何故彼を連れて行くんじゃ?」
ガトラーさんが俺の疑問を代わりに聞いてくれる。
「実は……パワー様に折り入ってお話があるのです」
折り入って話? この街に来たばかりの俺に? 一体何の話だろうか? やっぱこの体格を生かした力仕事?
「一体何の話じゃ?」
「それはこの場では……」
なんか……周りには言えない秘密の話っぽいな。本格的に意味が分からない。
「ただ……ガトラー殿だけでしたら同行して頂いても構いません」
「ふむ。分かった。ワシもついて行こう。パワーもそれでいいかね?」
「あ、はい」
正直、今の俺の頭の中はハテナマークでいっぱいだ。だがだからこそ、話だけはしっかり聞いておく必要がある。訳の分からない状態を理解できないままだと、どこで足を掬われるか分からないしね。
「どうぞこちらへお掛けください」
俺は支部長に案内され、奥の部屋へと入った。そして進められるままに椅子に座ったのだが……小人用のソファは俺に小さすぎるせいか物凄く窮屈だ。
しょうがないので尻を浮かせ、空気椅子で対応しておく。
「あ、もうしわけありません。何分そのサイズの物しか御座いませんでして……」
その姿を見て、支部長が頬を引きつらせた。
「あ、お気になさらずに。このままでも全然大丈夫ですんで」
あの洞窟で頑張った体を鍛えたお陰で、今の俺なら24時間子の体勢でも大した苦にはならないのだ。
まさにパワー!
いや、この場合は持続力だからちょっと違うか?
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