第14話 小物

「大きな町ですね」


ガトラー爺さんの頼みでミニエルの事をフレイガス教会に頼むために、俺は二人と一緒に少し遠くのコビルーンの街へとやって来ていた。小さなコビットの街には教会がなかったからだ。


あ、因みに、街に到着する少し前にミニポーションを服用してダウンサイズしていたので、門で止められる様な事はなかった。


「このあたり最大の街じゃからな。とはいえ、それでも冒険者のランクは高くともC程度ではあるが」


「そうなんですね」


小さなコビットの街だと、一番高い等級でDランクだった。それに比べるとワンランク上ではあるものの、それでもたったのCランクだ。これだけ大きな街でその程度だと考えると、討伐難度Bのワイバンにギルド長が頭を抱えていたのも納得できるという物である。


「Bランク以上の冒険者なんて、この辺りじゃそうそうお目にかかれませんから。まあそれだけパワーさんが凄いって事ですよ」


「その通りじゃな。まあ尤も、お主は既にAランク相当の資格を持っておるからそれ以上な訳ではあるが」


コビットの冒険者ギルドで認定できるのはBランクまでだ。討伐難度Aである一つ目の巨人をソロで倒してた俺はAランクに上がる資格があるのだが、昇格する為には王都まで出向く必要があった。


「おいおい、Aランクだとぉ?」


その時、見知らぬ男が此方へと声をかけて来た。上半身が裸にペケ字のサスペンダーで、頭がモヒカンの、何処の世紀末から出て来たって感じの男だ。その直ぐ横には、縮んだ俺と同じぐらいのサイズの筋肉質な大男が立っており、真っすぐ俺を見つめていた。


かなりデカいな……


「見ねぇ顔だが、戯言もほどほどにしとけよ。ガンズの兄貴ですらまだBランクなんだぞ。テメェみてぇな……まあ体格はアレだが、甘っちょろい顔つきな奴がAランクに上がれる訳ねぇだろ!つうかBってのも怪しいもんだぜ!」


モヒカンが一瞬チラッと見たので、ガンズってのは俺をじっと見てる奴の名前なんだろう。


しっかし……こいつがBランクだってんなら、Cランクぐらいしかいないってガトラー爺さんの説明は思いっきり間違ってたって事に成るな。まあたまたまの例外って可能性もあるが。


「唐突に何じゃお主は?」


「ふん、聞いて驚け!俺の名はアベシ!そしてガンズ兄貴はこの街でただ一人のBランク冒険者だ!そこの偽物と違ってな!!」


「ほう……そっちのデカいのはBランクなのか。本当だとしたら相当な腕利きの様じゃな。しかしパワーは決して偽物ではないぞ。ワイバンをソロで討伐してBランクに上がっとるからのう」


「ワイバンをソロでだとぉ?はっ、法螺拭いてんじゃねぇ。ワイバンは兄貴だって梃子摺りかねない厄介な魔物だぞ」


「事実じゃ。パワーよ、おぬしの冒険者証をみせてやってくれんか?やかましくて敵わん」


ガトラー爺さんが首を竦める。


まあ確かに声がデカくてウザいし。無駄に衆目も集めてるし。爺さんの言う通り証拠を見せて黙らせるる方が良さそうだ。俺はインベントリから冒険者証を出して奴の顔の前に突きつけた。


「なっ!?マジか……」


Bランクの冒険者証を見て、アベシが目を剥く。


「これで納得してくれたか?」


「う、くっ……Bランクだからって調子に乗んな!俺には将来Aランク確実と言われてるガンズ兄貴が居るんだからな!」


アベシが兄貴分の巨体の後ろに隠れる様に動き、そこから悪態を吐いて来た。


典型的な虎の威を借る狐ムーブとか初めて見たわ。現実に居るんだな。こういうタイプの人間って。


「特に用がないなら俺達はこれで」


「待て」


これ以上相手にする意味もないで、さっさと去ろうとしたらガンズという大男が口を開いた。


「お前に仕事の依頼をしたい」


と。


初対面の俺に一体何を依頼したいと言うのか?

意味が分からん。

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