第13話 頼み事

討伐難度Aランクの単眼の巨人を単独討伐したと言う事で、俺はAランク冒険者になる資格が与えられた。あくまでも資格なのは、小ビットの町にあるギルド支部では認定する事が出来ない為だ。そのためAランクに上がるには、王都へと向かう必要があった。


「実は折り入ってパワー殿に頼みたい事があるんじゃ」


高級っぽい料理屋。そこにガトラー爺さんに呼び出され、行ってみたらいきなり頼みがあると言われる。何か討伐して欲しい魔物でもいるのだろうか? ほぼ脳筋の俺に出来る事なんてそれぐらいだし。


「頼みっていうのはなんでしょう?」


「うむ、実はミニエルの事なんじゃ……」


ミニエルの事? はて? 俺がミニエルにしてあげられる事なんて……まさか打たれ強さを生かして、魔法訓練用の動く的にでもなってくれとでもいうつもりだろうか?


パッと思いつくのはそれぐらいなのだが……


「ミニエルは今年で17歳じゃが、その魔法の力量はもうワシと大差ないレベルじゃ。いや、もう魔力量だけならワシなどより余程多い」


ガトラー爺さんは60を超える年齢だ。そんな彼にたった17歳で追いつくのなら、彼女の才能は相当な物だろう。


「天才なんですね」


「うむ。師匠のワシが言うのもなんじゃが、間違いなく天才じゃ……但し、魔法ではなく神聖魔法の方ではあるがな」


神聖魔法? 名称だけだと単に聖属性の魔法っぽく聞こえるが、わざわざ分けたって事は別物って事なんだろう。たぶん。


「そう……あの子は神聖魔法に類まれなる資質を持っておる。そしてそれゆえ、似て非なる物ではあるが、共通する部分も多い魔法に対しても高い適性をみせておるのじゃ」


運動神経が良い奴はどんなスポーツをやらせてもある程度熟すって聞くので、その魔法版みたいな物だろう。


「なるほど……それじゃ、ミニエルは神聖魔法も使えるんですね」


「いや……」


俺の言葉に、ガトラー爺さんが首を横にふる。才能があるのに使えない? どういう事だろうか? 


「パワー殿も知っておる通り、神聖魔法を扱うには神の祝福を受ける必要がある」


まったく知りません? まあでも肩書が神に仕える騎士――ゴッドナイトなので、それっぽく頷いておく。


「しかしあの子は……」


爺さんが大きく溜息を吐く。どうやらミニエルが神聖魔法を覚えるのは、何か問題がある様だな。


「あの子の両親はフレイガス教会の信徒だったんじゃがのう……禁忌を犯し、大罪人として処罰されてしまっておる。そしてそのせいで、その娘である彼女は教会に拒絶され、祝福を受けられずにいるんじゃ」


「……」


ミニエルには何の落ち度もない話だ。理不尽極まりない。とは言え『やらかした信徒の子供に神の祝福を与えるのはちょっと……』と考える教会側の判断も分からなくもない。まあ要は、身内に犯罪者が居ると警察官にはなれないって感じの話だな。ちょっと違う気がしなくもないが。


しっかし、この話の流れ……


「そこでじゃ……神仕の騎士であるパワー殿の力を是非お貸りしたい」


ですよねー。俺の肩書、教会関係者なんだから、そらこの流れで頼むはそれに決まってる。


けど俺のは用意されただけの身分でしかない。フレイガス教会に知り合いは疎か、場所すら知らないってのが本音だ。そんな俺がミニエルの世話をするなど、無理無茶不可能もいい所である。


「どうか……どうかミニエルに祝福を受けられる様、働きかけては貰えんじゃろうか。頼む」


ガトラー爺さんが深く頭を下げる。まいったなぁ……


「どうかこの通りじゃ、パワー殿」


「分かりました……一応試すだけ試してみます。ですけど、俺がとりなしたからって上手くいくとは限りませんよ」


ゴリゴリに頭を下げられると、動も断り辛い。なので、試すだけ試してみる事にする。ひょっとしたら、神様が用意してくれた身分証だけで話が通せる可能性もあるからな。


まあダメだったらその時はその時だ。


「おお、感謝するパワー殿!!」

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