転生チートの時間停止など不要!~非力で敵にダメージが与えられないので頑張って筋トレ→あれ、強くなりすぎてこれもう時止める必要なくね?←今ここ~
まんじ
第1話 開幕負けイベ
俺の名は
先天性の病で医者には二十歳まで生きられないと言われていた。
そして18の時、実際医者の言う通り二十歳まで生きる事無く俺は病死する。
『ああ……もし生まれ変われたなら、次は誰よりも強い体で生まれたいな』
病気で早死にする事無く。こんなガリガリの情けない体じゃなく。次の人生はマッチョで強い男になりたい。
それが俺の
――そしてその願いは、俺を哀れんでくれた神によって叶えられる。
「おおおおおおおおおお!本当に転生してる!!」
今際の際の妄想かとも思ったが違った。神とのやり取りは本当だった。健康な肉体の実感を得た俺は、ガッツポーズで雄叫びを上げる。
「よっしゃあああああああ!おらっしゃああああああ!転生じゃあああああ!!」
テンション高すぎ?
いやそりゃ上がるでしょ。
転生だよ?
しかも健康な体での?
それもチート付き。
テンションが上がらない訳がない。
そう、俺にはチートがあった。
しかもそれは漫画なんかで出て来ると、ほぼ最強クラスの扱いになる【時を止める】能力だ。
それを!
健康な俺が!
手に入れた!
「テンション爆上げじゃああああああ!!」
そら叫ばずにいられない。しかもこれだけ叫んでも息一つ切れないし。
健康な体万歳!
「よし!じゃあ新たな人生のスタートだ」
出発地点は
多分、街に着くまでに魔物と出会って苦戦したら、ここに戻ってきて回復しないさいって事なのだろう。だがそんな物は不要だ。何故なら今の俺は健康で、しかも時を止める能力まで備わっているのだから。
早速洞窟を出ると――
「ふぁっ!?」
目の前には、一つ目の青い肌をしたマッチョな巨人が立っていた。
身長は俺の倍ほど。俺の身長は確か160だったから、こいつの身長は優に3メートル越えと思われる。
どう見ても、ゲームなら中盤とか、下手したら終盤に出て来そうな雰囲気なんだが?
「いやいやいや!最初のポイントでいきなりこんな強そうなやつ出て来る!?」
普通スライムとかゴブリンっしょ!
なにこの巨人!?
こんなのと戦えってのか、俺に!
時間止めた位で何とかなる気が全くしねぇんだが!
いや、待てよ!
冷静に考えて、最初の
「はーい、ナイストゥーミーチュー」
俺はフレンドリーに挨拶した。
英語が出たのは何となく。
特に意味はない。
「ごあああああああああ!!!」
俺に声を掛けられ、此方に気付いた巨人が雄叫びを上げる。その目は血走っており、とても友好的には見えない。
気分は――
あれ?
俺なんかやっちゃいました?
――状態だ。
悪い意味で。
「ごああああああ!!」
巨人が手を振り上げ、それを俺に叩きつけようと振り下ろして来た。
いくら健康になったとはいえ、運動も格闘技もした事のない俺にそれが躱せる訳もない。なので俺は咄嗟にチートを発動させる。
「くそっ!止まれ!!」
やっべー、ギリギリ。
そう、ギリギリ巨人の拳は俺の目の前で止まっていた。もしあとゼロコンマ一秒発動が遅かったら、今頃俺は……
「うう……」
あり得た最悪の未来を想像し、恐怖に身震いする。いくら健康になったとはいえ、この馬鹿みたいな体格差の相手に頭上からぶん殴られたらきっとぺしゃんこだ。マジやばかった。
「くそっ!ビビらせやがって」
だがもうこっちのターンである。
時間が止まっている以上、もはや奴の命運は尽きたと言っていい。とか一瞬思ったが……
「……本当にそうか?」
よくよく考えてみて、相手がデカすぎて殴ってもダメージが通るかとても怪しく感じる。もう何なら、武器があっても足せないんじゃないかとさえ思えて来た。
「取り敢えず攻撃してみるか……」
考えていても仕方がない。まずは行動だ。俺は地面に落ちている大きめの石を拾い、巨人のすねの辺りに思いっきり投げつけた。
するとその石は――バキッという音と共に、綺麗に二つに砕けてしまう。
「……うん無理!戦術的撤退!」
石が砕ける防御力の奴に攻撃が通る訳もない。俺は一目散に洞窟へと逃げ込む。ここは魔物が入って来ない安全地帯なので一安心だ。
え?
安心だよね?
神様がいってたし。
因みに一度で止められる時間はだいたい十秒程。で、クールタイムは止めていた時間と同じ。要は三秒止めたら再使用まで三秒かかるって感じになっている。
「ごおおおおお!!」
巨人が洞窟の外で喚いている。だが洞窟の方に入って来る様子はない。因みに洞窟は滅茶苦茶大きいので、巨人でも楽々入って来れるサイズだ。ので、狭くて入って来れないという事はない。
「ふう、大丈夫みたいだな」
顔を出して敢えて巨人に洞窟にいる事を気付かせてみたが、奴は吠えるばかりで近づいてはこなかった。まあ神様が言ってたんだから、そりゃ本当に決まってるよな。もちろん信じてましたよ、神様。
「にしてもあの巨人、どう考えても倒せそうにないんだが……」
逃げて進むという手も……まあないな。
動きは別段鈍くなさそうだったので、時止めによる10秒のアドバンテージがあっても、あの体格差だと下手したらあっという間に追いつかれかねない。
「となると……鍛えるしかないか……」
わざわざ神様がスタート地点を安全な回復ポイントにした理由。それがなんとなくだが透けて見えて来る。要は、此処で鍛えてから出発しろって事なのだろう。
「ま、運動は生前したいしたいって思ってたしな。よーし!滅茶苦茶鍛えるぞ!!」
こうして始まる。
俺の異世界トレーニング生活が。
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