その先に何があるかって? 夢に希望に栄光に称号に、とにかく沢山だ!

 その涙ぐましい努力の末、見事にアンのハートを射抜いたチャールズに惜しみない拍手を。あわよくば、愛の巣まで完璧ならば……。どうか、チャールズに幸あれ……。
 そんな中降ってわいたようなアンの一言。思い立ったが吉日。軸足は、アフリカへ。ペン突猛進の字のごとく、まるでペン先のような鋭さで以て、アフリカへと突き進む。
 しかし、愚直に突き進むばかりのチャールズではなかった。その筋肉や翼を限界まで鍛え上げ、他のペンギンとは一線を画す(ペンだけに)その仕上がり。「努力の方向、間違ってるんじゃ……」と無粋なツッコミを入れるものなど、いないのです。
 その目に闘志を宿し、山を越え谷を越え。その幾重にも重なる試練の数々はチャールズをさらなる高みへと引き上げる……。もう、ジャッカルすら相手にはならない……。間違いなく、現時点で地上で最も早く走るペンギン間違いなしである。が、しかし。あくまでもペンギンはペンギンである。百獣の王たるライオンの前では、猫パンチで無残に散る……。さらに、獰猛なメスライオンたちの牙が迫り……切れなかった……。
 羽で眼鏡をくいっと上げる動作をイメージしたセリフの後に語られるチャールズの秘密! 彼の壮絶なる特訓(厳密には特訓ではないかもしれないが)の成果が今、具現化する時! あまりの暑さに舌を、否。猫舌を巻いてしまう。まるで己を永久機関にでもしたかのようなその動きに、速さに。脱帽するライオンの群れ。……もっとも、ライオンは帽子なんて被っていないのだけれど。
 そんな様子を樹上で眺めていた、次なる刺客チーター。世界最速を誇る哺乳類。……おっと、これはどうしたことか! 追いかけるまでもなく試合終了となってしまった! チーター選手、スタートラインに立つことすらできずに、サバンナを後にします。……失礼しました。トラックを後にします。
 もはや、光や音に迫らんとする といっても過言ではなくなってきたチャールズ。
 果てない大地を果てしなく駆けても一向に、ダチョウとの邂逅は叶わず。(もう弟子入りせずに帰っても良いんじゃないでしょうか? なんて無粋なツッコミは心の中に留めておきます。)涙が風に乗って流れていく。ダッチョ=サン、何処……。
 ついに、その時が! その姿に惚れ惚れとしながらも、しっかりと情報をゲット!
 目標を定め、チャールズはひた走る。夢というゴールに向かって。

 そんなプロメテウス(夢追い人)をサバンナへと送り出したアンは、瀕死に……。スフェンの健気な訴えにも、辛そうに応えるアン。その姿を想像しただけで、相当に堪えます……。最後の最期のスフェンの言葉……アンにはどう響いたのでしょうか。

 子は親の背中を見て育つ、なんて言葉がありますが。そんな親の背中は遥か遠く。見ようにも遠すぎて、むしろ反面教師のように。スフェンは心を一新して、黄金の国ジパングへ。……え?

 チャールズはもはや生きる伝説かのような存在ににまで登り詰めているようですね……。人鳥を超えたコミュニケーション成立! もはやそれくらいでは驚きすらしませんねぇ。だってほら、わかりやすくペンギンを超越したペンギンの姿をこれでもかと魅せられていますから。それこそ、空でも飛ぶくらいでないと。っと話を戻しまして。
 チャールズの存在は戦争の放棄すら起こさせるほどの影響力となり、かの平和の象徴とされる鳥にまで並び立ちましたね。(どちらが上かなんて議論は愚問ということで。)
 レースの開催の一報が、ジパングに住むスフェンに届く。未だ修行中の身にあって、精神の統一の妨げになるその一報は、スフェンにとって己の未熟さを見せつけられる懸念材料でもあって。
 しかし、ペン許皆伝のスフェンは、明鏡止水の心で以て、決戦の地へ。戦いの火蓋は間もなく切って落とされる。
 ついに、対峙する父と子。己の信念とプライドをかけた戦いが、今始まる。
 その先に待つのは、男同士の熱い握手か。はたまた、殴り合いか。
 いずれにせよ、ペンギン という枠組みから外れた彼らを何と呼称すれば良いのか。地味に頭を悩ませる問題があるとすれば、それに尽きるのかもしれない。

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