翌朝

 Side 宝田 しおり


 =翌日・朝・タワマンロビー=


 たったの一日で大騒動だ。

 マスコミは日本で宇宙人の侵略が始まる、戦争が始まると騒ぎ立てている。

 ザターンは既に報道ヘリや自衛隊のヘリを無差別に撃墜。

 緊張が高まっており、いつどこで戦闘が始まってもおかしくはない状態だった。


 宇宙では他にも宇宙船が追加で来ているらしい。

 

 昭和の悪の組織のお題目、世界征服と言う単語が洒落にならなくなってきたと、しおりは思った。


 そう思いつつも、あいに会いに来た。

 彼女が単純に心配だからと言う理由もあるが、彼女と会う事で不安を紛らわせたかったと言う気持ちもある。


 タワマン周辺で昨日戦闘があったらしく、その名残が幾つも見られる。

 そんな騒がしい中であいの姿を探そうと思ったが見つからず、彼女の部屋に訪れた。

 

 部屋の前には黒服のSPらしき人物がいたが、手続きを踏んで通してもらう。


「地球の食事もいけるわね、アナタも食べる?」


「こ、コンビニ飯? それにそこにいるのって探偵の闇乃 影司さん?」


 あいの部屋に何故か闇乃 影司がいた。

 

「ちょっとコンビニって言う所に付き添ってもらって地球のこと色々と教えてもらってたの」


 そう言ってテレビのリモコンを動かす。

 どこもかしこもザターンの話題で持ち切りだ。

 ネットと同じような感じである。

 

 テレビとネットは反目し合う仲だが、こう言う時は不思議と協調性を見せて不思議だなぁとしおりは思った。


「それはそうと、どうして闇乃さんいるの?」


「こっちが聞きたい――昨日の襲撃で様子見しに来たら何か誘われて――」


 と顔を赤くして両目を瞑り、居心地悪そうに返事した。


「あ、照れてる? もしかして女の人が好きだったり?」


 やらしい笑みでしおりは尋ねる。


「そりゃ男だし、女の人に興味が無いと言えば嘘になるけど……」


「意外と闇乃君って初心なんですね」


「う、初心じゃないし……その、女性との経験だってあるんですよ?」

 

 と言うが横やりを入れるようにあいが「それさっきも聞いた。そうやって女生を遠避けようとするのが影司君の手口」と言ってきた。


「想像してたより何だかとてもカワイイのね、影司君?」


「か、かわいいですか?」


「うん。恥ずかしいだろうけど女の子にそう言われるのってとても貴重だからね」


「それは分かってるつもりですけど—―その、何だか恥ずかしいですね」


「そう言うところがかわいいんだぞ」


 そう言ってしおりは影司に詰め寄る。

 女性に根本的に弱いのか、影司はされるがままだった。

 そんな影司を観てあいも笑う。


「本当に、男の人とは思えないぐらいに綺麗でカワイイわね」


「あいさんまで……」


「そんなだからか、男の人が苦手な私でも普通に接せられるのかな?」


「だから、僕も男で—―その—―何度も言いますけど、Hな事されたりしたらどうするんですか?」


「説得力ないわよ」


「もうあいさん……」


 などと明るく、何だか甘ったるい雰囲気で3人は話をしていた。


『宇宙から飛来した未確認飛行物体に新たな動きが!!』


 テレビから緊迫したメッセージが飛び込む。



 Side 自衛隊


 =朝・平野・ザターンを包囲している自衛隊の部隊=


『あっちから仕掛けて来やがった!?』


『交戦許可は降りてるのか!?』


『そんなもん取ってる場合か!?』


 ザターンと自衛隊とで激しい戦いが開始された。

 戦いと表記しているが実態は一方的な殺戮だった。


 地球に降り立った円盤型要塞の遠距離からの光線兵器で焼き払われ、残存した生き残りをザターンの怪人や戦闘員が始末する。

 

 ザターンの戦闘機、戦闘ヘリに当たる円盤も狩りに出る。


 単純だがそれだけの戦術は、対人戦闘しか想定していない、間違っても宇宙人との戦闘など想定外な自衛隊には効果的だった。


 そしてこの戦闘は日本政府や静観を決め込んでいる軍事大国に対して強烈なメッセージとして届く事になる。



 Side 宝田 しおり


「酷い—―」


 テレビには黒煙が上がっている。

 地球の軍隊が宇宙人に成す術もなくやられると言うシュチュエーション。

 創作物で幾度も繰り返された光景。

 それが現実な物となった。


 地震や津波などの大災害とは違う、未体験の恐怖。

 日本が、世界がどうなってしまうのだかろうとも思ってしまう。


『ザターンを名乗る勢力は現在大阪の都市部を中心に円盤を送り込んで—―該当地域にいる人はただちに避難を—―』


「ヤレヤレ、とんでもない事になったな」


 と、ここで北川さんが出て来る。


「止めないですよね?」


 あいが言う。


「だが適当に戦っては勝てるもんも勝てんと思うがね?」


「だけどこのまま黙って見ているわけには!!」


 と、あいが北川の静止を振り切るように言う。


「それも一理ある—―私達はバックアップに回る。私達の命令を聞けとは言わん。ただ生き延びろよ」


「はい」


 そしてあいは部屋を出る。


「私はどうしたら――」


「生き延びる事も戦いだと思います。このタワマンは破壊し甲斐がありそだから離れた方がいい—―」


 と影司も部屋を出る。


「宝田 しおり、まだ君は無関係な地球人のフリをするのか?」


「それは—―」


「ディフェンダーとしてではなく、個人的なお願いだ。今は手が欲しい。地球の明日の為に戦ってくれ」


「ッ!」


 しおりは駆け出した。

 

「さて、地球の明日はどうなるかね?」


 一人残された北川もそうこぼして部屋から退室する。

 

 ザターンとの地球との戦いの新たな幕が上がる。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る