夜の激闘

 Side あい


 =夜・タワマン・ロビー内=


 戦いが始まる。

 ディフェンダーの職員とザターンの戦闘員、怪人との戦いだ。

 戦闘員はどうにでもなる。

 問題は怪人だ。

 

 だが白いポニテールの美少女みたいな美少年が周囲の戦闘員を巻き込んで銀色のカマキリ怪人を蹴り飛ばした。


『なんだこの力は!? 本当に人間か!?』


「色々と訳アリな体でして!!」


 そう言ってタワマンの玄関から空高く跳躍。

 影司は怪人に急降下パンチをお見舞いする。


『がふぅ!?』


 よろめくカマキリ怪人。


『何をしている!! カマキリドロン!!』

 

『だらしがない!!』


 銀色のカメ、ハチの怪人と共に追加の戦闘員が影司の周囲を取り囲む。

 怪人3体に戦闘員。

 スペースVフルメンバーでも手こずる戦力だと、あいは過去の経験則で思う。


「一々昭和の悪党なのな—―まあ分かり易いからいいけど」


 と、軽口を飛ばしながら影司少年は次々と来る戦闘員の攻撃を捌き、カウンターの一撃を入れていく。

 まるで未来でも予知しているかのような迷いのない動作だ。

 

『こいつ、本当に人間か!?』


 ハチ怪人が当然の疑問を投げかける。


「人間か—―そいつはどうか怪しいな—―」


 そう言って闇乃 影司は真の姿を現す。

 純白の髪、白い二本角、赤い鋭い瞳に悪魔のような面、昆虫の羽を持つ漆黒のボディのダークヒーロー然とした凶悪な姿を。


『か、怪人!?』


 その姿にあいは驚いた。

 怪人。

 そんな形容詞が真っ先に思いつく姿だ。


『日本政府の負の遺産さ—―』


 そう言って戦闘員を殴り飛ばす影司。

 怪人3体との本格的な戦闘に突入する。

 ハチ怪人の毒針を受け、カメ怪人の口から火炎放射、カマキリ怪人の両手の鎌で斬り裂かれる。

 だがどの攻撃も無傷である。


『政府の連中に体を弄られまくって、この程度の攻撃じゃ死ぬことは出来ない—―』


 そう言ってハチ怪人を殴り飛ばす。


『だけど、こんな体でも救える命が。守れる笑顔があるんだって教えてくれた人がいる――』


 続けてカメ怪人を蹴り倒す。


『体は化け物でも、そんな風な人生を送れるのなら、それでもいいかなって—―』


 そしてカマキリ怪人に右手から軽く光線を飛ばす。


『なんだこの強さは!?』


『我々が相手にならんとは—―』


『一旦退くか!?』


 影司のあまりの強さに怪人達は逃げる算段を立て始める。


『逃がさない!!』


 そこに、あいがパラボラアンテナがついた銃、ピンクシューターを持って立ち塞がり、発射。

 ハチ怪人を吹き飛ばす。

 続いて影司が右腕からエネルギーの刃を発生させてカメ怪人を貫き、爆散。


『こ、ここは一時――』


 残すはカマキリ怪人となった。


『敗者は不要だ』

 

 しかし、そこに新たな影が。

 見たところ漆黒の宇宙刑事(メタルヒーロー)的な背格好の存在。

 手には宇宙刑事伝統のレーザーブレードらしき武装を持ち、カマキリ怪人を背後から一突き。

 爆散させた。


『手負いの元娼婦相手に何を手古摺っているかと思えば――この星にも強い奴はいるらしいな』


『何者だ?』


 影司が尋ねる。


『ザターンの幹部、ベーダ―』


 そう言って剣で影司に斬りかかる。

 影司も手を手刀に変えてエネルギーを纏わせてベーダ―の斬撃を防ぐ。

 そして激しい斬り合いが始まった。


『辺境の未開惑星だと思って来てみれば妖精文明の負の遺産と出会うとはな—―』


『妖精文明の負の遺産?』


『嘗て宇宙で栄えた文明の名だ。それが巡り巡ってこうしてお目に掛かる事になるとはな—―』


『成程—―オーバーテクノロジーの産物だとは思っていたが—―こんなところで裏が取れるとはな—―』


 と、自分の体に埋め込まれた鉱石のルーツを知る影司。

  

『確かに脅威ではあるが—―対処の仕様はある』


 そう言って距離を取り、頭部から赤い光線を放つ。

 右手で受け止める。


『これがその対処か?』


『貴様の体内にある一際大きいエネルギー反応、その部分を砕く!!』


 そして右腕にドリルを転送。

 それで胴体の心臓辺りを狙ってくる。


『盛り上がっているところ悪いが、誰か忘れちゃいないか?』


『なっ!?』


 影司は飛び退き、入れ替わりであいがピンクシューターを発砲。

 ベーダ―はドリル部分でガードするが、ドリル部分が大破。右腕にダメージを負ったのか左手で右腕を持ち、一旦飛び退く。


『念話でタイミング指示したけど、よく信じてくれましたね?』


『確かに容姿は怖いけど、悪い人には見えなかったから』


 戦闘員も粗方倒し終えたらしく、ディフェンダーの人間もベイダーを遠巻きに包囲する体制が出来上がりつつあった。

 それを見て形成の不利を悟ったのかベーダ―は退いていった。


『退いたわね。だけど驚いたわ。地球にもアナタのような人がいたなんて』


『ありがとう』


 そう言って闇乃 影司は人間態に戻る。

 何故か照れくさそうに顔を朱に染めていた。


『どうしたの?』


「女の人に褒められるのに慣れてないだけ……」


『アナタも正直なのね』


 そう言ってピンクも変身を解く。


「本当に綺麗な容姿してるわね」


「そ、そう?」


「照れてる――歳幾つ? 地球人の年齢換算で私は15、6歳ってところだけど」


「今年で高一ぐらいの年齢だから同い年ぐらい?」


「みたいね」


 などと話す二人。

 異性に対して照れてる子供にかまうお姉さんみたいな構図だった。

 

「仲良く話し込んでいるところ失礼」


 話を遮るように北川が割り込んできた。


「夜も遅いしこれから先どうなるか分からんから休めるうちに休め、ここでのゴタゴタはディフェンダーの方でどうにかする」


 その意見にあいは「それもそうね」と言って影司に向き直り、「また今度ゆっくり話しましょ」と影司に挨拶するのであった。


「私は元の部屋に戻ればいいのね?」


「ああ」


 と言って消えていった。



 Side 北川 舞


 =深夜・タワマン・ロビー内=


 事後処理を終えて深夜になる。

 この分だと徹夜になりそうだなと思った。


 ザターンは現在、大阪府内の平野に部隊を展開させていて、自衛隊は遠巻きに包囲してその様子を伺っている。


 周辺各国の動きはなし。

 米国も同じだ。

 藪蛇を突いて襲われたくはないのだろう。


 仮に核兵器を撃ち込んだとしても、宇宙の彼方から増援を送り込まれてザターンの核兵器に当たる兵器を撃ち込まれたらしまいだと—―考えてくれればいいなと北川は考える。

 

 ザターンをダシにして自分達の思い通りに操ってると思われるかもしれないが、それを含めても政治外交と言う奴である。


 闇乃 影司を特攻させてあわよくば共倒れ――と言う案を日本政府は出したが、ザターンの戦力の底が見えない以上はやらない方がベストだろう。


 どんな隠し玉があるのか分かったものではない。


 ともかく、時間に余裕が出来たら自分も仮眠しようと北川は思った。

 

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