夜の会話
Side あい
=夜中・タワマン内・エントランス=
気晴らしに部屋から出る。
広いエントランス。
消灯しておらず電機はついていた。
彼方此方に黒服の人間がいる。
ディフェンダーの人間だろう。
そんな自分に駆け寄ってきたのが北川 舞だった。
「眠れないのか?」
「ええ—―今も仲間が戦ってると思うと」
「だからこそ寝るべきだ—―と言うのも酷な話だな」
北川は「何か飲むか?」と自販機に駆け寄る。
「何でもいいわ」
「そうか—―しかし君は俗に言う宇宙人なのかな? 一応異世界人や宇宙人は知っているが、こうも意外と地球人にそっくりなのが多くて驚いてるよ」
「そうなの」
自分以外にも地球に滞在している宇宙人がいるらしい。
「どうして君はザターンと、宇宙の平和を守るために戦ってるんだ?」
そう言って北川はあいにペットボトルのジュースを渡す。
「平和のために戦うのがいけない事なのかしら?」
あいはペットボトルを受け取り、続けて言う。
「ある日何もかも全てを奪われて、人には言えないような辱めを受けて、その復讐をしたいと言った方が説得力あった?」
「すまない」
「いいえ、誰かに話したかったのかも。これを話すだけでもとても勇気がいるのね—―仲間内でも昔の事はあまり話題に出さなかったから」
と言うあい。
汗を流し、呼吸が荒く、顔が赤い。
「だからかどうか分からないけど、私達スペースVは男の人が苦手なの――」
そして涙を零す。
「こうなったのも全部ザターンのせいよ。あいつら人間じゃない。ケダモノよ」
「その復讐のために戦うのか?」
「最初はそう言う気持ちもあったかな—―」
そう言って天井を見上げるあい。
「でも皆と一緒に戦って、人々に感謝されて――でも時折、こんな汚れた私が人の為に、平和のために戦っていいのかと思う時もあるのよ」
その言葉に北川はと言うと—―
「それは君が決める事だ。たとえ誰にどう言われようとな。私の本音は、ここまで来たんだから地球のために戦って欲しいかな?」
と、身も蓋もない本音を告げる。
「正直なのね」
「嘘を言って慰めの言葉が欲しいような雰囲気でもなかったのでね」
「そう—―」
正直すぎる気もするが、立場をハッキリしている点においては、あいは好感を持てた。
「失礼」
と、そこで北川は無線機をとる。
暫く会話をして—―
「奴達は礼儀正しい古き良き侵略をしてくれるそうだ」
「どう言うこと?」
「奴達の先遣隊と言えばいいだろうか……近くの平原に降り立った。今部隊を展開している最中らしい。自衛隊は原則手を出さないようだ」
それを聞いてあいは駆け出そうとするが腕を掴まれて止められる。
「場所も方向も分からんのに、大体一人で特攻してどうする? 死にに行くようなものだろう?」
「でも—―」
「こう言う時、助けが欲しくてこの星に来たんだろう。大丈夫だ。君には軍隊よりも強くて頼りになる味方がいる。そこは保証しよう」
北川はあいにそう説得する。
『軍隊よりも強くて頼りになる味方だと? そんなのが何処にいる?』
と、今度はタワマンの玄関の方から声がした。
ザターンの銀色のカマキリ怪人と戦闘員とが入り込んでくる。
「軍隊よりも強いかどうかは分からないけど、腕に覚えのある奴ならいるさ、ここに一人な」
立ち塞がったのは—―純白の髪のポニーテール、白い肌、赤い瞳、お姫様のように凛々しく整った顔立ち。
声色も中性的で女の子に見える。
服装もボーイッシュな感じで、ますます外見で判別がつきづらい。
「タイミングよく現れたね? もしかして待ち構えていた?」
呑気に北川は突如現れた白髪の人物に尋ねる。
「中々にエグイ話してるから出辛かったの。ごめんね」
顔を真っ赤にしてシュンとなる。
それを聞いて北川は「ああ、そう言うことか」と納得がいった。
あいの昔話は刺激が強かったらしい。
暈してはいるが、勘の鋭い人間が聞けば、あい達がザターンの連中にどんな仕打ちを受けたか分かる内容だ。
「あの子は?」
あいは当然、北川に白髪のポニテールの人物について尋ねる。
「闇乃 影司。何でも屋だね。最近は探偵業がメインになってるけど」
北川は説明する。
「戦えるの?」
当然の疑問をするあいに北川は「まあ見てれば分かる」と返す。
「見てるだけにはいかないわ! 私も戦う!」
そしてあいも変身する。
こうしてザターンとの戦いの第2幕が切って落とされた。
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