一つになれない地球

 Side 宝田 しおり

 

 =休日・昼・メイド喫茶ストレンジ店内=


 ディフェンダー。

 北川 舞さん曰く、アメコミに出て来る世界防衛組織。

 北川はそのエージェントなのだとか。


 赤味かかった茶髪の女の子、エンジェミライ、桜木 はるかは驚いた様子を見せたが、金髪のポニテールの女の子、エンジェナイト、シルヴィア・ホーリーはある程度ディフェンダーについて知っている様子をみせた。


 二人はI市から大阪日本橋に偶然遊びに来ていて今回の騒動に巻き込まれたとの事だ。


「今回の事態は日本政府も静観せざるおえないだろう。何しろ相手が相手だ。どうもできんよ」


「そんな……」


 何となくそんな気はしていたが、いざ否定されると何だか悲しくなってしまう。


「つまり国はアテにならないと?」

 

 あいが尋ねる。


「好き好んで星間戦争などしたくないと言うのが世界各国の本音だろうね」

 

 北川は容赦なく現実を突きつける。


「まあ、そのための私達だが—―必要とあらば核兵器の使用許可も降りるだろう」


「核兵器って—―」


 そんな物騒なとしおりは思った。

 他の面々も押し黙っている。


「他の選択肢はスペースVやエンジェリア、君達のような存在を結集させてザターンを地球から叩き出す」


「あの~念のため聞くけど、私は~」


 宝田 しおりは本当に巻き込まれただけの無関係な一般市民である。

 これ以上巻き込まれないウチにフェードアウトするのが筋なような気もした。


「確かに君は無関係だが、自分が助けた、自分がここまで関わった事件の事を知りたい口だろう?」


「そりゃそうだけど……」


 内心を見透かされてグウの音も出ないしおりだった。


「それに今はそう言う事にしておいた方が都合が良いだろう?」


「ッ!? は、はい」


 しおりは北川に「秘密を知られている」事をなんとなく感じ取って慌てて返事をした。


「「「?」」」


 北川としおりの二人のやり取りに、あい、はるか、シルヴィアの三人は首を傾げる。 


「さて、今後の事だが……」


 と北川は話を変える。

 

 

 =夜・大阪日本橋近くのタワマン=


 大阪日本橋近くのタワマン。

 そこにあいと宝田 しおりがいた。

 

 宝田 しおりは臨時のディフェンダーの協力者として雇われた。

 その事にあいは、北川が気を利かせたのか? と首を捻る。


「気持ちは嬉しいけど、これ以上巻き込むワケには—―」


「それを言うなら地球人で日本人の時点でもう十分巻き込まれてるわよ。宇宙からの侵略者が来るってそう言う事でしょ?」


「でも—―」


「それはそうと、あいの服、似合うのあってよかったね」


「え、ええ、ありがとう……」


 あいの服は全身ピッチリスーツなレトロなSFスーツから、地球のカジュアルな衣装に着替えている。バストサイズが大きいので、いい服があっても着られない物もあったが、しばらくの衣食住の手配はディフェンダーがしてくれた。


「……」


「やっぱり気持ち紛れない?」


 しおりがあいに尋ねる。

 あいは頭を縦に振って返事を返した。


「星を守るために、宇宙の平和を守るために仲間と一緒に頑張っていましたけど—―」


「他の星の事情とかはよく分かんないけど—―こう言う時に一致団結出来ないって悲しいよね」


 と、しおりが言う。

 こうは言うが、しおりも日本の暮らしは長いし、インターネットで色々な情報を収集が出来る世の中、地球の複雑なアレコレな事情は知っている方だ。

 

 宇宙人が襲来して人類が一致団結できるのなんて映画やコミックでも最近は見なくなってきている。


「でも、このままじゃ、助かる命も助からない—―」


「うん……」


 しおりはどう言えば良いのか分からなかった。


「あのね。私どう言えば良いのか分からないけど、けど、助けを差し伸べてくれる人は探せば沢山いると思う」


「そうかな?」


「そうだよ。私も、何が出来るか分からないけど—―」


 と言ったところであいは「気持ちは嬉しいけど—―」と言葉を遮る。


「ダメだよ。これ以上私に関わっちゃ。どうすればいいのか私も分らないけど、なるべく無関係な人間を巻き込みたくないの」


「でも—―」


「気持ちだけはありがたく受け取っておくわ。もう帰りなさい」


「う、うん—―」


 しおりは日を改める事にした。

 タワマンに—―ディフェンダーの職員の監視や警備はあるだろうが、あいを一人残して立ち去った。



 =夜・帰り道=


 しおりはどうすればいいのか分からなかった。


 相手は地球を狙う宇宙人。

 今頃世界中の政治家達は大慌てだろう。

 地球滅亡を知らされたような心境かもしれない。

 

 それに引き換え自分のような一個人に何が出来るのだろうかと思った。

 戦おうと思えば戦えなくもない。

 だが戦うのは怖い。

 目を付けられたら面倒である。

 

 きっと今の生活とおさらばしなくてはならなくなる。


(なりたいなぁ、カッコいい正義のヒロインに……) 

 

 などと考えながらしおりは帰路につく。

 

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