二人はエンジェリア

 Side 宝田 しおり


 =昼・休日・メイド喫茶ストレンジ店内=


 宇宙戦士スペースV、スペースピンクことあい。

 あいから聞かされたのは地球に迫りくる危機であった。


「宇宙戦士スペースVのスペースピンクに、悪の帝国ザターンねぇ……」


 悪の侵略帝国ザターン。

 それがこの戦隊ピンクが戦っている敵組織らしい。

 

 その話を裏付けるような色々とあり得ない証拠を見ているが、それでもしおりは半信半疑だった。


「せめて地球に危機が来てる事だけでも伝えようと思ったのですが――」


 と、深刻そうに項垂れるあい。

 しおりはと言うと――


「正直信じられないと言うか何と言うか……」


「でも、本当なんです」


「うーん」


 などと思っていると。

 

『ここにいたか!! スペースV!!』


『スペースピンクを捕えろ!!』

 

 黒いタイツに白いフルフェイスのヘルメットにプロテクターを身に纏った戦闘員が店内に雪崩れ込んでくる。


「店内を荒らされたくないので」


 あいを手当てしていた黒井 リンカが立ち上がり、2丁拳銃スタイルで次々と発砲する。まるで西部劇の早撃ちガンマンのような華麗な銃捌き。

 だがしおりは突然の発砲と意外な人物の意外な攻撃に「なんなの!?」と悲鳴をあげる。

 出遅れたあいも絶句している。

 

「大丈夫。スタン弾です」

 

 そう言ってリンカは拳銃を仕舞う。

 

「この様子ですと建物は包囲されています。3階の事務所から琴乃学園か秋葉原にワープして逃げるのがよろしいかと」


「言ってる意味は分かりませんがこれ以上巻き込むわけには――私が打って出ます!」


 リンカの提案を却下してあいは変身。

 ピンクのフルフェイスのヘルメット。

 白いアンダースーツにピンクのレオタード柄。

 バックルベルト。

 腰に剣と銃。

 昭和の香りが漂う戦隊ピンクのスーツになった。

 胸がとても大きく自己主張していてやらしい感じがする。


 スーツのところどころに焦げ目のような物が付いていて、傷の具合を見た感じ万全ではないようだ。


 そんな状態でありながらあいはメイド喫茶から飛び出した。

 


 Side あい


 =昼・休日・メイド喫茶前=


 メイド喫茶前では多数の戦闘員が展開していた。

 既に戦闘が勃発している。

 可愛らしく動き易そうなミニスカドレス姿の少女二人組。

 

「エンジェミライ!!」


 ピンクの長髪、髪飾り、ピンク色のドレスの女の子。


「エンジェナイト!!」

 

 長い金髪をポニーテールにし、白いアイマスクをつけた青いミニスカドレスの女の子。


 それぞれ名乗りを挙げて次々と徒手空拳でザターンの戦闘員を倒していく。

 

『貴方達は!?』


「私達はエンジェリア!! こいつらを知ってるの!?」


『こいつらはザターンと言う悪の侵略者で――』


「それだけ分かれば手を貸す理由は十分!! ミライ!! 行くわよ!」


「わかった、ナイト!」


 二人の少女達はあいを援護するように立ち回る。

 その流れに乗ってあいもパラボラアンテナが付いた銃、ピンクシューターで応戦する。

 

『ええい!? 我達ザターンに牙を向くとは命知らずな連中め!!』


 と、敵のリーダー格の怪人が立ち塞がる。

 銀色のクモ型とコウモリ型の怪人だ。

 クモは糸を飛ばして拘束しようとし、コウモリ怪人は空を飛んでのヒット&アウェイの要領で3人を翻弄する。


『ギーギー!!』


『逆らう者は処刑しろ!!』


 そして追加で戦闘員がやって来る。

 

「時間は掛けられない!」


 そう言ってエンジェナイトは手にレイピアを出現させる。

 

「エンジェリア!! フラッシングスピアー!!」


 エンジェナイトの必殺技――レイピアから放たれる眩い閃光、フラッシングスピアーの光が進行上の戦闘員やクモの糸を飲み込んでいく。 


『しまっ――』


 そして光がクモ怪人を飲み込み、クモ怪人は爆発四散した。


「次はアナタ!」


『クッ!!』


 空を飛ぶコウモリ怪人に食らいつくようにエンジェミライの殴る、蹴る。

 それで態勢を崩し、アスファルトの地面に膝立ちになるコウモリ怪人。


『今!!』


 そこにスペースピンクのピンクシューターが放たれる。

 

『我々は――始まりに過ぎない—―やがてこの世界はザターンの物に—―』


 それだけ言い残してコウモリ怪人は倒れ込み、爆発する。

 


 Side 宝田 しおり


 正直しおりには何が何だか分からなかった。

 

 突然、ニチアサの戦隊VS変身女児アニメのコラボバトルが始まった的な。

 

 そうとしか言えない状況だった。


(この状況どうしよう――)


 とにかく野次馬とかどうとか、どうすれば良いのか分からなかった。

 

「やれやれ。派手にやったものだな」 


「アナタは?」


 長い黒髪のおとしやかそうな女性。

 とても大人びていて何処か近寄り難い雰囲気を纏っている。

 周囲に黒服や男性や女性の大人達を引き連れて事態の収拾に当たらせていた。


「北川 舞。アメコミに出て来る世界防衛組織のエージェントをやっている者だ」

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