一先ずの終結

 Side ベーダ―


 =朝・大阪日本橋=


 こんな筈ではなかった。

 全体的に見ればザターン陣営が勝っている。

 日本政府も、地球のどの陣営も全く手出しができていない。


 この大阪日本橋も時間を掛ければ、戦力を投入し続ければ陥落するだろう。

 

 だと言うのに劣勢。


 この地域に投入した戦闘員部隊の被害は甚大。

 怪人部隊は全滅。

 ギルガも押されている。


『一旦退くしかないか――』


 ベーダ―達は不本意ながら撤退を判断した。



 Side 宝田 しおり


=数時間後・大阪日本橋近くの学校にて=


 日本含めた世界が大パニックと言った様子だった。

 ザターンの突然の攻勢停止。

 大阪日本橋からも撤退をしたが占領下におかれた地域もある。

 死者・行方不明者数もまだ正確な数は分からない。

 

 確かに大阪日本橋で敵の幹部格を退けはしたが、事態は悪化している。

 このままではいけない。

 だけど、どうすればいいのか分からなかった。


(それでも、私に出来る事をしなくちゃ!!)


 せっかくコンバットスーツまで引っ張り出したのだ。

 戦闘ではピュアリアの中学生二人に助けられる形になったが、せめてそれ以外で活躍したい。

 自衛隊や警察、ディフェンダーズの人達と協力して炊き出しをしている。

 

 その中には闇乃 影司やミサキ・ブレーデル、黒井 リンカ、エンジェリアの桜木はるかにシルヴィア・ホーリー、そしてスペースピンクのあいの姿もあった。

  

 細かい事情云々は北川さんが話をつけてくれた。 

 自衛隊や警察の人は思ったよりも頭が柔らかく――いや、現実逃避しているのかもしれない。

 宇宙人の侵略が現在進行形で行われているのが現実だ。

 特撮ヒーローよろしく変身装着式のコンバットスーツやらニチアサの戦闘女児やら

いても不思議ではない――みたいな思考回路になってるかもしれない。

 

(まあ後ろ指さされて罵倒されたり、もの投げられたりするよりかはマシか……)


 などと考えていた。

 

(そう言えばこの手の集まりに過剰に反応を示す市民団体の姿もないわね)


 宝田 しおりは日本での暮らしは長い方だ。

 日本のローカル事情にも明るい方である。

 こう言う時に足を引っ張る市民団体の影の形も何もなかった。

 

(ふと思ったけど戦争反対とか自衛隊批判する団体とかって何時頃から姿をみせなくなったんだっけ?)


 などと首を捻りながら一息つく。


「あ、あいさん」


「しおりさん……」


 そしてばったりとスペースピンク、あいさんと二人きりになった。

 二人は変身を解除していて、遠巻きにだがチラチラと視線を感じる。


「周囲の視線感じるわね」


「え、ええ……まあこんな体してるから仕方ないのかな?」


 コンバットスーツを着て炊き出ししていた宝田 しおりも同じようなもんだ。

 なんならエンジェリアの二人や影司、ミサキ、リンカもそんな感じである。


「あいさん気を付けなさいよ? 顔も綺麗なとんでもないレベルの美女なんだから?」


「も、もう、しおりさんってば……」


 あいとミサキは目鼻立ちの整った美女な上に爆乳で均整の取れた、奇跡的な体のバランスを保持している。

 変身できるとか宇宙人と戦ったとか抜きにして二度見、三度見は仕方ない美女だ。


(影司君とシルヴィアさんも凄い容姿してるし――)


 影司とシルヴィアはとんでもないレベル、国宝級でハイレベルな容姿をしている。


(リンカさんは目に次背格好してるのもあるけど、何だかんだで綺麗な部類だし)


 黒井 リンカは不愛想な感じだがメイド服着てウロチョロしているので、どうしても目についてしまう。


(はるかちゃんも悪くないんだけど相手がねぇ……)


 桜木 はるかも悪くない容姿はしているが、比較対象が悪すぎる。 


(私は――まあ比較対象が悪すぎるわね)


 しおりの自己評価は悪かった。

 ブサイクではないと思うが、飛びぬけて綺麗と言うワケでもない。


「でもホッとしてます。私のせいでこうなった――ぐらいの事は言われると思ったんですけど……」


「ここまで来たらもうそんなの無しよ――どう言う理由で地球に攻めて来たか分からないけど、攻めて来る以上は立ち向かわないと」


 宝田 しおりは現地住民の気持ちを代弁するかのように言う。

 一方で彼女は地球人類の愚かさと言う奴も分っていた。


(今は大丈夫だけど、きっと時間が経てば必ずあいのせいで地球が侵略された、攻め込まれたと叫んで、しまいにはザターンに引き渡せば戦争は解決すると言う馬鹿を言い出す奴が出て来る)


 あいを差し出せば戦争は終わる、もしくは地球から叩き出せば戦争は回避できるとか、日本人は時として信じられない事をやってしまう人種なのだ。

 そう言う人種の姿をしおりは日本での暮らしで嫌と言う程目にしてきた。

 

「でも――」


「でももなし。ここまで来たらもう仲間でしょ」


 しおりは笑みを浮かべてあいに言う。


「仲間……か……」


「うん、仲間。だから一緒にいよ?」


「ええ……」


 あいは笑みを浮かべて頷いた。

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