ギルガ

 Side あい


 =朝・大阪日本橋=


 まさかの宝田 しおりの参戦。

 動きは硬いが、果敢にザターンの戦闘員に挑んでいる。

 

『アナタ、戦うの嫌じゃないの?』


 当然な疑問をあいはしおりに投げかけた。


『うん!! 本当はイヤ!!』


 キッパリとしおりは答える。

 そして迷いを振り切ったようにこう続ける。 


『だけどここで逃げたら永遠と逃げ続けるようで嫌だから私は戦うの! 足手纏いになるかもしれないし、呆気なく死んでリタイアするかもしれないし、考え始めたらキリがないぐらいに怖いけど! もう何かを失って逃げるのはイヤなの!』


 と、叫びながらザターンの兵士をひたすら倒し続ける宝田 しおり。

 その姿は、あいには迷いと言う物を振り切っていたようにもみえた。


『そんな気迫だけで!!』


『我々を倒せると思っているのか?』


 そんなしおりに銀色の十体の怪人軍団が襲いくる。

 数体で包囲し、残りがあいや影司などの助けを邪魔するように動く。

 確かに有効な戦術だった。


 影司が強すぎなければ――の話ではあるが。

 

『ガハッ!?』


 影司の拳がクマ型怪人の胴体を貫き—―爆発。

 爆発を浴びても傷一つつかない。

 怪人軍団残り9。

 連携が弱まる。


 その隙に重戦車よりも重戦車らしい突破力で宝田 しおりのカバーに入る闇乃 影司。


 闇乃 影司のビジュアルは凶悪なので、知らない人間から見ると、ザターンの新手の怪人にみえなくもない。

 しおりは『ヒッ!?』と声を出してしまう。

 そして怪人の首――クワガタ型のをガードした腕ごと宙に跳ね飛ばした。


 怪人残り8体。


『なんだこいつは!?』


『ベーダ―様の報告にあった妖精文明の—―』


『し、信じられん—―』


 ザターンの怪人は決して弱くない。

 特殊部隊の兵士を一方的に蹂躙できるし、戦車の主砲の直撃弾を受けても活動できる正真正銘の怪物なのだ。

 だが闇乃 影司のが桁違いに強いのだ。

 

『下がっていろ、こいつは俺がやる』


 ここに来て新手。

 ザターンの人材の層は厚いらしい。

 ベーダ―と同じく幹部クラスだろうか。


 バッファローのような二本角。

 黄色い二つ目。

 赤いフェイスガード。

 黒いプロテクターに灰色のボディ。

 スマートなシルエット。


『俺はザターンのギルガ—―邪魔になりそうな不穏の分子を始末しに来た』


 そう言って闇乃 影司に掴みかかる。

 影司は相手の両手を掴んだ。

 意図したのかどうなのか、力比べの態勢になる。

 

『このパワーは!?』


『成程、並の戦士では歯が立たんワケだ!!』


 そう言って影司を両腕だけの力で持ち上げて投げ飛ばす。

 地面に軽くクレーターが出来た。

 続いてギルガの二本角から光線が放たれ、爆発が起きる。 


『ぬう!?』


 その爆発の煙の中から影司が飛び出るようにしてギルガの腹部に膝蹴りをかます。

 ギルガは数メートル程後退りする。


『我達メガリアンと対等に渡り合える戦士がいるとは――』


『メガリアン?』


『地球人の視点で言えば、遠い星の機械生命体の名前だ』


『機械生命体か……本当に宇宙は広いね……』


『我達メガリアンは宇宙でも名を馳せた機械生命体――妖精文明の力を得た戦士が相手でも遅れはとらんわ』

 

 その言葉に反応したのはスペースV、スペースピンクのあいだった。


『メガリアンの事は知ってるわ。だけど、どうしてザターンなんかに?』


 と、困惑するように言う。

 

『あいつらが何をやっているのか知ってるでしょう!? なのに—―』


『黙れ!!』


 あいの言葉を遮るようにギルガが叫ぶ。


『俺はザターンの幹部で、ザターンのためにこの星を頂く!! お前たちはその障害となる敵でしかないわ!!』


『けど!!』


 あいは言葉を続けようとするが『あいさん』と、影司が止める。


『ギルガ—―敵として立ち塞がるのなら—―倒す。ただそれだけだ』


『うむ。話が早くてなによりだ』


 影司は何故だかギルガの事を理解しているようだった。

 二人は二人で戦闘に突入する。


『あい、今は他の敵をどうにかしないと!!』


『え、ええ!!』


『まさかギルガを出す事になろうとはな』


 ここでザターンの幹部の一人、黒いコンバットスーツに身を包んだベータ―がやって来た。

  

『ベーダ―!!』


『スペースピンクなどと名乗らずに、仲間と一緒に大人しく売春婦をやっていればよかったものを!!』


『売春婦って……』


 しおりはその単語が気になって口に出した。


『まだ教えてなかったのか? ピンク?』


『――ッ!?』


『宇宙戦士スペースVの連中は元々――』


『やめて!!』


 と大声で遮るように言うが構わずベーダ―は口を動かす。


『ザターンの性奴隷の集まりだったのさ!!』

  

 ベーダ―は勝ち誇ったように暴露した。

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