あとがき

あとがき

 小野篁を主人公に迎えた平安ファンタジー小説が遂に完結を迎えた。

 第一弾の『TAKAMURA』にはじまり、第二弾『YAKYO』と続き、この第三弾である『SANGI』と続いたTAKAMURA3部作も、ここで終焉を迎える。


 この物語を読んでくださった方の中には、そもそも小野篁って誰よ?というところから入った方も少なくはないかもしれない。


 小野篁。それは平安時代初期に活躍した貴族である。

 この世とあの世を行き来していたという伝説があるため、オカルト好きな人の間では名の知れた人物であることは確かだ。

 ただ、この小野篁を主人公にした物語は、それほど多くはない。


 私と篁の出会いは、二十年前に遡る。

 それはたまたま購入した京都旅行のガイドブックだった。

 その年は京都に旅行へ行く予定を立てており、ガイドブックを色々と調べていたのだ。

 当時はまだ今ほど、ネットにも観光情報は存在しておらず、まだガイドブック頼りの旅行計画を立てていたのだ。

 そんなガイドブックの片隅に目を引く記事が書かれていた。


『現世と地獄を行き来した平安貴族』


 そんな文字が書かれており、私は興味をそそられた。この時、初めて小野篁という人物を知ったのである。

 京都旅行へ行き、もちろん、六道珍皇寺を訪ねた。

 それだけだった。


 まさか、その二十年後になって、小野篁について深掘りして小説を書き始めることとなるとは誰が予想しただろうか。


 最初は2000文字以下の短編だった。クロノヒョウさんの自主企画であり、テーマは『地獄の門の鍵』。そこで思い浮かんだのが、小野篁を登場させた小説を書こうということだった。

 書いてみてわかったのは、平安時代を舞台にした小説を書いたら面白いということだった。時代小説を書いたのもはじめてならば、平安時代について書いたのもはじめてだった。そんな初めて尽くしが小野篁を主人公とした物語のはじまりだったのだ。


 短編を書いてみてコメントなどをたくさんもらえると、調子に乗る。

 そう、私は調子に乗りやすいのだ。小学生の頃の通信簿にも「調子に乗りやすい性格」と書かれていたはずだ。

 そして、調子にのった私は小野篁を主人公にした長編小説「TAKAMURA」に取り掛かった。


 2023年4月3日、TAKAMURAの第一話を公開し、私の小野篁の物語ははじまったのだった。


 小野篁について調べるにあたり、様々な資料を買い求めた。

 何よりも平安時代という時代のことが、私は全然詳しくなかったのだ。

 歴史といえば、戦国、幕末といった時代が好きであり、平安時代なんて興味のきょの字もなかったため、全然知らなかった。そのため、歴史の勉強のようなことからはじめ、平安時代がどんな時代だったのかを知った。次に平安初期という、あまり情報の残っていない時代の人物たちを調べはじめた。小野篁はもちろんのこと、その時代に活躍した人、その時代の帝、大臣などなど。そもそも、官位やら役職というものもよくわかっていなかったので、そこら辺も調べる必要があった。


 そして時代背景や文化も調べた。小説を書くのってこんなに大変なんだっけ?と思うくらいに色々と調べていた。何よりも、ある特定のジャンルには××警察と呼ばれる方々が存在している。そういう方々に突っ込まれても反論できるくらいの知識は持っておこうと思いながら、色々と本を読み漁ったのだ。そのおかげもあってか、あまり突っ込まれることもなく、小野篁の物語を書き進めることが出来た(一説には、その時代に詳しい××警察的な人はいない。需要も無いし)。


 第一弾のTAKAMURAを書き終え、第二弾のYAKYOを書き、そして第三弾のSANGIを書いた。このTAKAMUAR3部作を全作品合わせると30万文字オーバーとなる超大作となったわけだが、小野篁についての物語で書き足りないと思える部分がいくつもある。もっと若い頃の話を深掘りしたいし、TAKAMURAで登場した両面宿儺との戦いなども書き直したい。特に両面宿儺については、当時は呪術廻戦を未読であり両面宿儺のイメージは本当の怪物でキン肉マンのアシュラマンか、あしゅら男爵かといった感じのイメージで書いていた。後々に呪術廻戦を読んで、宿儺ってこんなに格好良くていいのか、もっと格好良く書けば良かったと後悔したりもしたのだ。


 三部作を振り返ると、TAKAMURAでは対妖怪のアクションシーンが多く、YAKYOでは歴史的な部分を多く書き込み、SANGIでは吉備真備にかき回された。

 そんな吉備真備が登場したのも、第二部であるYAKYOからであり、YAKYOの時は最大の敵で、憎むべき相手だった。まさか第三部のSANGIでこんなことになるなんて、誰が予想しただろうか。作者である私自身も想像していなかった結果である。


 平安時代小説を書いてきて、私はどっぷりと平安時代という時代にはまってしまった。

 家にも平安時代に関する資料本が溢れ、いまでも色々なことを勉強中である。

 また、別小説になるが安倍晴明を主人公にした「SEIMEI」も執筆中であるし、源頼光や渡辺綱を主人公にした物語の短編も書いたりしている。

 平安時代は400年も続いた時代であり、その時代の中で様々な出来事があった。

 大きな戦こそはなかったものの、様々な人間ドラマがあり、陰謀渦巻く時代でもあったのだ。そして、ファンタジー要素も強い時代である。陰陽師たちが跋扈し、物の怪やあやかし、鬼といった存在が信じられていた。

 そんな面白い時代を放って置く必要があるだろうか。


 小野篁の物語は、ここで一旦お終いにする。

 でも、きっと我慢が出来なくなって、また篁の物語を書き始めたりするかもしれない。

 その時は、また読んでいただけると嬉しいです。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


 それでは、また別の作品でお会いしましょう。



 2024年 秋 作者

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SANGI 参議・小野篁伝 大隅 スミヲ @smee

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