3話 スキルと世界
数日後、俺はラウルの父に招かれ彼の家を訪れた。
「シオンだけ誘ったのになんでゴリ……エレナまで連れてきちゃうんだよ」
「俺が呼んだんじゃないよ」
「私がいるとなんか問題でもあんの?」
無論嘘ではない。彼の家にいく途中、たまたまエレナと遭遇。
どこに行くの?と訪ねられラウルの家に行くと答えた。
そこでなぜか私も行く!と言い出し、いや誘われたのは俺だけだし……と言いかけると肩を潰されそうになり止むを得ずと言うわけだ。
俺を責めるものはいないはずだ。
「それで今日はなんで呼んだんだ?」
「呼んだのは私だよシオン」
「おじさま!」
「エレナも来てたのか。いつも息子と仲良くしてくれてありがとう。丁度いい、君も来なさい」
ラウルの父、ジョージ3世。
俺たちの住む村を含めた一帯を納める領主だ。
(W不倫状態にある)母のおかげかマメに俺のことを気にかけてくれる人だ。
「みんなもうすぐ7歳になるからな。そろそろスキル判定をする頃だろう」
「キタあああああああああ!!!!」
「うっさいわね!急に大きな声を出すんじゃないわよラウル」
「言ったろシオン。これで俺の超最強チートスキルが明らかになって、みんな騒然になるんだよ!」
「そうなんだ。どんなのが出るんだろうな」
「シオンだってザコスキルでも極めたら最強!なんて展開もあるし、ワンチャンあるって!」
そんなこと言っても俺はおこぼれ転生だし、別に最強になって活躍したいわけでもない。
そういえば俺、この世界で何がしたいんだろう。
「ねえ、私はどんなスキルになると思う?」
「「パワー型のゴリ押しスキルだろ」」
「なんで声揃えるのよ」
「それじゃあ……まずはラウル。お前からこの水晶に手をかざすんだ」
「ええ〜主役は最後に取っておいてみんなをビックリさせるのがお約束なのに」
「また訳のわからないこと言ってないで、さっさとやりなさい」
俺たちは客間に通された。中央のテーブルの上にはまるで占いにでも使うような水晶玉が置かれていた。
ラウルが促され渋々手を伸ばすと、それに反応し水晶玉が強く輝いた。
「ラウルのスキルは……クラスSの[賢者]!魔術系技能でもダントツの魔力量と使える上級魔法の多さを誇る歴史上数人しか持たない希少技能……!さすがだラウル!」
周りの使用人たちもざわついている。神もお墨付きのレアスキルをちゃんと与えられたようだ。
ちなみにスキルには上からS、A〜Eのランクがあり希少性やその強さ、汎用性で分けられている。
期待通りだったようでラウルのにやけヅラが止まらない。
「エレナとシオン、次はどちらがやる?」
「はいはい私!いいでしょシオン」
「ああ、もちろんいいよ」
「やった!」
高く手をあげエレナが立候補した。
正直あまり興味がないため順番などどうでもいい。
「しょうもないザコスキルかクラスSのパワー関連が出るか賭けようぜシオン」
「わかりきってるのに、賭けとして成立しないだろう」
「エレナのスキルは……すごい!ランクAの[
「やったー!!私のスキルすごいって!……アンタたち反応薄くない?」
「いやーすごいすごい」「こりゃ予想外だった」
なるほど、どうりで子供にしては壁を壊すわ岩投げるわ、少し小突いただけで肩脱臼させられるわ曲がらない方向に関節が曲がるわ……補正が入ってたのなら全てに納得がいく。
しかもこのスキル、聞くところによると単純な成長でもその効果は強まり鍛えれば鍛えただけ天井しらずで伸びる性能らしい。
日常生活に支障が出そうなスキルだ。もう嫁の貰い手はないな。
俺たちの住む集落から西に馬車で1週間くらいのところにこの世界における首都、みんなはただ
「父さん!僕この力で魔王軍を倒すよ!そしてこの世界を平和にするんだ!」
「何言ってるんだ。お前はここで私の後を継いで領主になるに決まってるだろう。お前が長男なんだから」
「え……?」
ラウルは膝から崩れ落ちた。
ここが既に平和(エレナの周りを除く)すぎて忘れていたが、この世界は現在魔王率いる魔族と数十年に渡り戦争が続いている。
戦争と言ってもほとんどは魔族との国境付近で、こんな辺境には大した脅威もないのだ(エレナの周囲を除く)。
こうしてラウルの異世界転生、チートスキルで無双する辺はこれにて終了となる。
「早い早い!これじゃ転生した意味ないじゃん!」
「また転生だのなんだの訳のわからないことを言って、この後また家庭教師が来るんだからとっとと勉強しろ!」
「助けてシオン!俺には世界を救う使命が!」
「じゃあお疲れ。俺帰るから」
「私も帰って家の手伝いしなきゃ。またね」
「この裏切り者どもがああああああああああ」
ちなみに俺のスキルの話はしょうもないので割愛させてもらう。
なぜなら俺の番が回ってきた時、水晶玉は全く反応もしなかった。
スキル[無し]
やってくれたな神様。
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