数年前、覚醒前、病院2

 努力は無限、シュウゴの強さ。


 最近大学の新聞に載ったシュウゴを紹介するフレーズだった。

 シュウゴは子供の頃からサッカーをしていた。才能があるやつらには歯が立たなかった。そのぶん、命知らずの体を張ったプレーをしてきた。地面を這いずり回ってボールを奪った。体を放り投げてシュートを防いだ。試合が終わると、全身傷だらけになった。

 シュウゴのプレースタイルは中学、高校と変わらなかった。その練習量と献身的なプレーにより、いつしか彼は努力の塊として多少なりとも認められるようになった。

 しかし彼は内心うれしいと思っていなかった。努力するしか、体を張るしか能がないやつみたいでかっこわるいと思っていた。それでもシュウゴは、自分にも隠れた才能があり、ある日突然花開くかもしれない、そんな思いで努力を続けた。

 努力は報われた。インターカレッジに顔を出す大学にスポーツ推薦で入学できた。シュウゴは修行僧のような修練と、献身的なプレーを重ね、二年目の春、大事な試合のスターティングイレブンに抜擢された。

 ポジションは左のディフェンダー。最も得意なポジションだった。千載一遇の願ってもないチャンスだった。

 そんな折の事故。自分の不注意が招いたこの事故。情けない限りだった。


「膝の靭帯しているね」

 診察室でレントゲンを見ながら、医者はいった。

「来週の試合? まにあわないね。半年はかかると思うよ」


「監督さんに伝えておくわ」

 病室でしょげこむシュウゴへそれだけ告げると、奈央は病院を去った。

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