地球靴

プルーモンディ

現在、公園1

 シュウゴは公園のベンチに座り、リュックからタオルと水筒を取り出した。タオルで汗をふいた。水筒のドリンクをごくごく飲んだ。

 うららかな春の昼下がりだった。サッカーグラウンドを中心とした広い公園には、満開の桜が立ち並び、菜の花が咲き、蝶が飛び交っていた。

 シュウゴのリュックの中には、サッカーのスパイクが入っていた。彼はいつもそのスパイクをリュックに入れて持ち歩いていた。いつどこへいくときも必ず持っていった。

 そのスパイクは、昔シュウゴが愛用していたスパイクだったが、今はもうはいていなかった。はく必要もなかった。はきもしないスパイクを、彼はいつもリュックへ入れて持ち歩いていた。もう何年も持ち歩いていた。

 シュウゴはある子供へスパイクをあげたかった。

 その子供は、数年前、ふらっとシュウゴの前へ現れた。そして、スパイクをくれと、彼へしつこくせがんできた。彼は断った。そのときはまだ、そのスパイクを愛用していたからだ。以降、子供が彼の前へ姿を現すことはなかった。

 シュウゴはその子供にスパイクをあげたかった。いや、スパイクをあげる相手は、その子供でなければならなかった。

 子供は再び彼の前へ姿を現すと、シュウゴは感じていた。根拠はないが、確信に近い感覚だった。しかし、いつなんどき現れるかわからなかった。

 だからシュウゴは、常にスパイクを持ち歩いていた。子供と再会し、スパイクをあげたら、ようやく、けりがつく。

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