数年前、覚醒後、試合1
試合の日となった。ピッチの上には、シュウゴの姿があった。
試合が始まった。シュウゴはディフェンスラインの一番後ろでパスを受けた。一人かわした。相手ゴールへ向けて右足を振り抜いた。
ボールは舞い上がり、相手のゴールへ飛んでいった。フェンスすれすれへふらふらゆらゆら落下していった。
ゴールキーパーは片手を伸ばして弾こうとした。ボールはまるで生き物のようにその手をかわし、ネットを揺らした。
監督も選手も観客も誰もしばし唖然とした。次の瞬間、歓声が上がった。味方の選手は彼に群がり、祝福をした。
ラッキーゴールと誰もが思った。しかしゲーム中盤、チームが追いつかれたとき、シュウゴは同じシュートを放った。
ボールは舞い上がり、相手のゴールへ飛んでいった。フェンスすれすれへふらふらゆらゆら落下していった。またもや生き物のようにキーパーの手をかわし、敵ゴールのネットを揺らした。
ゲーム大詰め、チームはゴールを許して同点となった。アディショナルタイム、残り十秒、シュウゴは再びシュートを放った。ボールはやはり生き物のように敵ゴールのネットを揺らした。
チームはシュウゴの活躍でゲームに勝った。試合後監督は彼にいった。
「大事な試合の直前になって、お前がつまらない事故で怪我をしたときには、正直いってがっかりしたが、ところがどうして、一週間でよく間に合わせてくれた。これぞまさに不屈の闘志というやつだ。しかもお前、とうとう化けたんじゃないか。俺は心底驚いているんだ。こんなにすごいやつだとは思わなかった」
「ありがとうございます!」
シュウゴは有頂天となった。
これまでずっと指をくわえて見ているしかなかった、才能豊かな一段上の選手たちの仲間入りをしたのかもしれない。
いや、もしかすると。
彼の脳裏に奈央が浮かんだ。俺の才能は三村よりも上かもしれない。
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