概要
私は楽師。歌を生業にするものです。
宮殿の後宮《ハレム》の一角に、皇帝《スルタン》になれない皇子たちを幽閉する《鳥籠《カフェス》》がある。出られるのは帝位に就く時か死んだ時だけの実質的な牢獄の中、心身を病んで斃れる者も多いという。
かつて後宮に出入りしていた楽師は語る。宮殿の美や女奴隷たちの芳しさ、そして鳥籠《カフェス》から聞こえた妙なる歌声のこと。
囚われの無聊を歌で慰めていたその皇子は、新皇帝の即位前に死んだはずなのだが──
かつて後宮に出入りしていた楽師は語る。宮殿の美や女奴隷たちの芳しさ、そして鳥籠《カフェス》から聞こえた妙なる歌声のこと。
囚われの無聊を歌で慰めていたその皇子は、新皇帝の即位前に死んだはずなのだが──
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!紡がれる言葉は歌のよう、真実への想像に酔わされる
一人の楽師が語る言葉を、淡々と聞く形になっているお話なのですが、まるで目の前で彼が語っているかのようです。その紡がれる言から、華麗な宮殿の姿、漂う異国の香り。ともすれば彼の声すら脳内に流れ出すかのような筆致。
彼の語る言葉から、もしかして? という疑念をもつのに、真実を知る事は野暮ではないかとも思わせる。彼の紡ぐ物語が本当の事で良いのではないかと、いやはやそうであっても、でも、しかし、と想像が広がって悩みながら告白を聞き終える。
短編かつ、お話としては一人の楽師の告白を聞くだけなのに、読後にはハイクオリティな大河ドラマを読み終えたような満足感。
短時間で素晴らしい読書体験が出…続きを読む