一人の楽師が語る言葉を、淡々と聞く形になっているお話なのですが、まるで目の前で彼が語っているかのようです。その紡がれる言から、華麗な宮殿の姿、漂う異国の香り。ともすれば彼の声すら脳内に流れ出すかのような筆致。
彼の語る言葉から、もしかして? という疑念をもつのに、真実を知る事は野暮ではないかとも思わせる。彼の紡ぐ物語が本当の事で良いのではないかと、いやはやそうであっても、でも、しかし、と想像が広がって悩みながら告白を聞き終える。
短編かつ、お話としては一人の楽師の告白を聞くだけなのに、読後にはハイクオリティな大河ドラマを読み終えたような満足感。
短時間で素晴らしい読書体験が出来ます。ぜひのご一読をお薦めします!