血は繋がってなくとも、家族の愛の物語

いろんな人がすでに勧めているでしょうけれど、非常にお勧めな作品です。我々が生きるリアルと主人公の生きるファンタジーの世界の互換性をしっかりと感じさせる作品でもあります。

タイトルとしては、現代の洗練されすぎた試験勉強と実際の頭脳の見過ごされた可能性の関係性にも似た、主人公の世界の魔術と主人公独自の魔術へのアプローチの差異は、読んでいて非常に引き込まれます。

また、血のつながっていない人間が周りと家族になるまでの物語でもあります。ここは最近よく取り上げられる、しかし非常にハードルの高いジャンルでもあります。なぜならこうした設定は本当に多く、しかも直近に非常にあたった漫画作品があるからです。

しかし、この作品はそこに明らかな独自性をを見出しています。僕は継承という点に特に惹かれます。

主人公はかつて気がつかないうちにそこにいて、それから引き離されることを強く拒否しますが、結果的に説得されて新しい家族の一員となることになります。

そこにはさまざまなハードルがあり、単純に生活環境の違いから、身分の差、修練の差、学問の差、そして何より血のつながりがそこにないこと……

しかし何より一家を包み込み存在である母親が、彼を一目見た時にその養育を継承することを決心することが、この新しい家族の新たな保証となるのです。

家族から家族へ。そしてその家族が共に血が繋がっていない……流れとしてはエデンズゼロが違いですが、血の通った人間同士のどこか原始的な受け渡しが、母親の役割の継承という意味では、ここ最近は読んだことがないですね。古典ではなくはないですが、多くは父性の継承ですから(そして片方は殆どが実親)、双方実親ではない母性の継承は実はそこまで扱われてこなかったテーマかもしれませんね。

孤児院から貴族社会、という流れだと、シスターからその家の正妻、という流れはあるはずなのですが、この流れ自体はよく見るものなのに、思い出してみても著名なラノベの中では……ないのではないですか?

それを細かく説明し始めると激しいネタバレになるので書きませんが、今現在読んだ直後に書いていないにも関わらず内容がかなりはっきり思い出せることからも、非常に印象深い作品であると思います。

ぜひお読みください。私も続きを心待ちにしております。

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