救われているのはメイドか王子か

どちらがどちらを守っているのかがなんとも言い難いのが、この作品の魅力となっている。物理的には主人公なのだが、精神的にはヒロインであると、天秤に掛ければ傾くだろう。

これは絶大な力を持ちながら自己肯定感の低い主人公が、その身を破滅にフラフラと向かうのをヒロインの婚約者にして姫であるメイドがその本質に気がついて、王道に戻す物語ではないか。

力があるものが一人で旅をしていると、安全マージンが極端に少なくなってしまうのはYouTubeの旅番組を見ていてもしょっちゅう感じるところではある。

言ってみれば自己責任なわけで、守るものがない人間はあれよあれやととんでもなく面白いところに行けてしまったりするのだが、どうにも見てて危うい。もちろん、本当に問題が起こった場合、その人のYouTubeは更新されなくなるので、その詳細はわからない。

どうにも、この主人公には、そういう危うさがある。故に、ほぼ冒険者としての技も力も持たないお姫様が傍で見守ることは、結果的にそれなりに主人公の命綱たりうるのではないか、と現時点では見てしまう。

無論、相当な実力がないと結果的に姫を守り抜くことはできないのでありしかし、姫は自分だけが守られて一人残される結末を一切望んでいない。

これがつまり、どちらが守られているのだろうか?と読んでいる視点から、そのあまりな実力にも関わらず将来に向けて感じる不安の担保なのだろうか。

主人公は姫を守れるだろうか?という見方からいつしか姫は主人公の生を繋ぎ止められるだろうか、というふうに映るのは、主人公が持っている王者の因子ではなく破滅の因子の方が、確実に主人公を堕とすだけの力を持っていることを、とりあえず100話を超えた時点で読者がはっきりと感じるようになっているからでもあるのだろう。

現時点(104話)ではこの不安を解消できるだけの材料を主人公もヒロインも持ち合わせていないが、それはやがて手に入るのだろうか。そしてそもそも主人公の自己肯定感が低い故の自分の命を軽く扱ってしまう危うさが、将来的に悪い方向に結びつかないようにするためにヒロインは何ができるのだろうか?

まだ課題は山積しているが、ここからヒロインが彼をどう守り導くかに注目が集まる。

単純な力は暴力にも、秩序を守る正義にもなり得る。読み始めた時は、女神アストラエア とは関係はないのかと思っていたが、案外、メイドによって示される方向にはそれと関係するところがあるかもしれない。だって、星はいつだって人を導いてきたのだ。メイドが導くその先が王道というのならば、そこには正義があるだろう。

正義は天秤の守り手。全て繋がってくるのかもしれませんね。

この先も楽しみにしております。