最終話 みんなとオッパイを考えた!

「サブロウ先生、なんでオッパイの語源なんか探ろう思うたん? 四六時中、オッパイのことばっかり考えてたんか?」


「違うわ! 英語のbreast に当たるポルトガル語の単語のひとつ o peito の発見が先でオッパイが後だった。Dorling Kindersley 社のPortuguese English Bilingual Visual Dictionaryという写真付きの辞書があってだな」


「ふむ」


「この辞書には単語の発音が聞けるアプリがあるんだ。その発音がどう聞いても『オッパイト』だったので、ひょっとしてコレが日本語のオッパイの語源ではないかと閃いた」


「なるほど。ただの変態やなかったんやな」


「当たり前だ! そこでGoogleやらWikipediaやらでオッパイの語源を調べ、どれも説得力がイマイチか問題外だったからポルトガル語説を出したのだ」


「なるほど。読者のみなさまも一緒になって、いろいろ考えてくれはったみたいや。色々と質問や疑問が出とるで。まず o peito の発音は本当にオッパイなのか、どう確認できるのかってことなんやけど」


「Google翻訳で o peito と入力して発音させてもウーペイトとしか聞こえなかったなあ」


「せやろ?」


「だが、Bab.la というサイトでもポルトガル語の peito の色々な発音が聞けるんだ。いくつかはたしかに peito はパイトと聞こえる。ただし、正直言ってペイトと言っている方が多い」


「あれ、ほんまや!」


「ただ発音の許容範囲の揺れで、ポルトガル語話者にとっては同じ単語に聞こえても日本語話者であるオレにはペイトとパイトの二通りの発音があるように聞こえる。冠詞の o の発音もウーだったりオだったりに聞こえる。だからオッパイトと聞こえる発音も存在する!」


「全部やないにしても、まぁオッパイトって聞こえることがあってもおかしくないな。ほな次や。peito ってオッパイの意味なのに男性名詞なのはおかしいんとちゃうか?」


「不思議ではあるけれど、peito は男性名詞で間違いない。peito というポルトガル語のルーツはラテン語で胸を意味する pectus (ペークタス)という中性名詞だ。でも、ラテン語から派生したポルトガル語やスペイン語やイタリア語には中性名詞はなく、男性名詞か女性名詞のどっちかになるしかなかった」


「中性名詞がないのはわかったけど、そしたらなんでオッパイが男性名詞になんねん?」


「各言語で pectus から派生した単語はその単語の綴りが、各言語内で、なんとなく男性名詞っぽいか、なんとなく女性名詞っぽいかで振り分けられた」


「なんとなくかい!」


「そうとしか言いようがない。ポルトガル語の peitoに スペイン語の pecho ( ペチョ)もイタリア語の petto (ペット)もそんなわけで男性名詞になった。でもフランス語のpoitrine (プワトリヌ)は女性名詞になった」


「ややこしいなあ。男性を連想させるか、女性を連想させるかとは全く別の次元、単語の字面で決まったということやな。なんとなく」


「その通りだ。実は上記の各言語にはオッパイを意味する別の男性名詞や女性名詞の単語もある。フランス語にも男性名詞の sein (サン)があって、最初オレはこちらにしか気がつかなかったよ」


「なんやそれ!」


「結論、『オッパイ』はいくら女性の象徴でも、文法上も女性名詞になるとは限らない。各言語のオッパイを意味する単語は男性名詞と女性名詞のどちらもアリだ。そしてポルトガル語の peito は男性名詞で間違いない!」


「アカン、頭が痛うなってきたわ」


「オレもだ。日本語のオッパイからどんどんずれるので、これぐらいにしよう」


「ほな次! ペチャパイはスペイン語の pecho (ペチョ)と関係あるんか?」


「それはない。ペチャパイはぺちゃんこのオッパイの略だから」


「平たい胸族やな」


「ぺちゃんこの語源も水気のあるものを下に叩きつけて潰れるときの擬音語『ぺたん』だ。だからスペイン語は関係がない」


「コレははっきりしとるんや。なら次! 乙杯とか王杯からきている説はどうやろ?」


「逆だよ。オッパイが先で乙杯が後のただの当て字だ。王杯は中二心をくすぐるが、オッパイの意味としての使用例そのものが見当たらない。検索すると王貞治杯とかが出てくる。ただオレはブラジャーの大きさならともかく女性の胸そのものをさかずきに例えるのはいかがなものかと思う」


「なんでやねん? フェミニストなんか?」


「違う。イカ🦑とかタコ🐙とかカニ🦀とかを数えるとき〜匹で数えたり〜杯と数えたりするだろう? その違いってわかるか?」


「いやわからんなぁ」


「イカ🦑とかタコ🐙とかカニ🦀食べるとき、その形を器に見立ているのだ。いか徳利とかもあるし、カニ🦀の甲羅も杯っぽいかもしれない。つまりだ」


「ふむふむ」


「基本的には生きているときは〜匹で数えて、死んで食品や器として扱う場合〜杯を使うのだ。そんな『〜杯』の字を女性の胸に使うというのは、それってまさか・・・・・・」


「怖っ! 怖すぎるやろ。それ絶対あかんって! セルフレーティング変えなアカンくなる!」


「だから、お腹一杯説も含めてオッパイに杯の字がある説には同意したくないのだ」


「考えすぎや! そんなコト考えるのセンセだけやと思うで。ほな次。要らないからポイっと捨てたりするのポイからきてるという説はどうやろ?」


「オッパイは大事! 要らないなんてとんでもない!」


「そらそうやけど」


「ただ、ハワイ語に胸、ふところ、心とかを意味する poli (ポリ)という単語があるそうだ。こじつけだがひょっとしてこれが伝わって変化してパイになったとかは・・・・・・」


「明治以前にハワイの言葉が伝わるかいな!」


「やはり苦しいなあ」


「次、peito に丁寧語のがついてpeitoがオッパイになったというミックス説はどうや?」


「それだと御乳上になる。😆 キリスト教の神とは違うものを崇めてそうだ😅」


乳神チチがみさまやろ!🤣」


「絶対異端カルト扱いされるな😂」


「せやな。次、オッパイという言葉はいつから広まったんやろ?」


「例の幕末の『於路加於比おろかおい』が初出でそれ以前はよくわかってないんだ。調べてはみたがお手上げだ」


「歌はどうや?『げんこつやまのたぬきさん』とか?」


「あれは1968年発表の童謡だから新しすぎる。オッパイの普及後だ」


「残念やなあ。最後に、中国語にもオッパイを意味するそっくりな単語があるって聞いたんやけど」


「たしかに中国語にはオッパイを意味する乳房 rǔfáng(ルーファング)とは別の単語がある。簡体字で欧派。繁体字で歐派。発音はどちらも Ōu pài (オウパイ)だ!」


「ほな、それが語源やんけ!」


「落ち着け! 逆だ! 日本語のオッパイを音訳して漢字を当てはめた中国のオタクの皆さんの発明したスラングだ!」


「なんやて!」


「中国語のネット百科事典の百度にはこの欧派/歐派(オウパイ)の項目がある。本家日本語の方のオッパイの由来として、おおうまい説、いっぱい説、古代朝鮮語説はあったが、王牌説はなかったな😆」


「民明書房敗れたり!🤣 さすがに本場中国は騙せなかった!😂」


「ただ、その頁で多数のアニメキャラが紹介されていて、そこに驚くべき日本語のオッパイとの意味のずれがあった」


「なんや、なんや?」


「中国語の欧派/歐派(オウパイ)は大きなオッパイのみ、いわゆる巨乳のみを意味していた。つまり小さいオッパイはもちろん、並の大きさのオッパイも中国では欧派/歐派(オウパイ)ではないのだ!」


「マジかあ!🤣 オッパイは想像以上に奥が深くてオモロかったわ!」


「そうだな。みなさまも最後までお付き合いいただきありがとうございました。😊」


終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

🤩テーマは『オッパイ』!さあみんなで真面目に考えよう!🧐 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画