【第9回カクヨムWeb小説コンテスト】応募作です。
村で血の繋がらないおじさんとおばさんと暮らしていた少女オリヴィア。
そんな生活の中で新しく家族として迎え入れられた少年リオネッロ。
弟同然に接していたのだが、教会で歌っていたところリオネッロに忍び寄る魔手。
リオネッロは汚い大人たちの奸計に陥って外科手術を受けさせられてしまう。
そのことを止められなかったおじさんは、オリヴィアもおばさんから遠ざけるために一手打つことにした。
オリヴィアは愛する義弟のために決断する。
これは声楽を舞台とした、義理の姉弟の心模様の物語。
重厚と言えば良いのでしょうか。
まるで、パイプオルガンが響くような。圧倒されそうなほど、ヒロイン達が不利な状況が続きます。
18世紀のイタリアを舞台に
(これも今作品の特筆すべきところで、ナーロッパなんて揶揄されがちなライトノベル・ファンタジーにおいて、史実をベースに描くからこその説得力を感じるんですよね)
悪魔狩りをベースに。
作者様が得意とする、オペラの世界。
特に18世紀のイタリアは、後期バロック。これより少し前にオペラが生まれるという下地ができていた時代。
もし間違っていたら、ごめんなさい💦
音楽は宗教にも政治も利用(そもそも、そこがベースとも言える)され、大人の思惑がこれでもかと、渦巻く。まさに華やかな暗黒時代。
このなかで、どう悪魔を浄化していくのか。
信じ合うヒロイン達の関係にも注目だし、
何より、この絶望的な状況のなかで、まったく折れないヒロインの心根。
テンプレで安定感のある。でも量産されたポップなラノベに少し食傷気味な、そこのあなた。
クラシカルで、ロジカル。だけれど、重厚で熱いこの物語。
オペラグラスで、覗いてみませんか?
この作者様は、ハッピーエンディングを保証してくれます。
さぁ、一緒にラストはスタンディングオベーションしましょう!
今読まなきゃ、もったいない!
ボーイソプラノを保つためだけに去勢され、教会に結婚を禁じられて子供を持つこともできなかったカストラートに光を当てた、純愛物語です。カストラートが隆盛した18世紀イタリアを舞台にし、悪魔憑きという当時のキリスト教の思想も取り入れた意欲作です。
作者様の深い知識に基いた音楽の描写が素晴らしく、音楽と共に育まれるリオとオリヴィアの純愛が美しいです。ですがリオは養親の強欲故に断種されてしまい、オリヴィアと結婚できないことになり、読者に切ない感情を呼び起こします。それでもオリヴィアは健気にリオと共にいれる音楽の道を選びます。
2人が困難を乗り越えて愛を育み、人々を悪魔憑きから救う続きが楽しみです。
皆様は、「カストラート」という言葉をご存知でしょうか?
ご存知ない方は、ぜひこの作品を読んで、知ってほしいです。
美しく荘厳なオペラの舞台から始まる本作は、カストラートになった少年と、姿を偽って彼をそばで支え続ける少女の物語です。
史実をベースに、悪魔祓いなどのファンタジー要素も!
作者様のイタリアやオペラへの深い造詣と、安定の描写力、筆力に裏打ちされた作品。
綾森先生の作品はどれも素晴らしくて、「読ませる」力がすごくあるなぁと尊敬しているのですが、個人的には今まで以上に、ものすごく心を揺さぶる作品になっていると感じます。
どうにもならない悲劇が襲ってきても、プロローグでそれをすでに乗り越え、成長している二人が描かれているから、安心して読めるのかもしれません。
件の悲劇は……、もう、胸がギュッと締め付けられるのですが、それ以上に、輝かしいほどの純粋な愛がこの作品にはあります。
ヒロインが明るく活発な子なので、今後、悲しみを吹き飛ばして、バッチリ活躍してくれることでしょう(๑>◡<๑)
とにかく、幸せになってほしい。
ただそれだけを祈ります!
流行り病で孤児となったオリヴィアと、同様の境遇の少年リオ。
某夫婦に引き取られますが、決して楽な暮らしではなく、こき使われ、ふたりは心も仕事も支え合って生活していました。
教会の聖歌隊で、その美声に目をつけられたリオ。
その時から、互いを強く想いあうオリヴィアとリオの、厳しくも新たな人生が始まります。
安定の素晴らしい筆力で、読みやすい文章の作品。
18世紀のイタリアを舞台に、貧しさや当時の恐ろしい慣習に負けることなく、愛を育み、スポットライトを浴びて人々を救うようになる、天使のようなふたりが描かれていきます。
逆境にくじけず、愛と歌を昇華させていく天使のふたりを、絶対に応援したくなりますよ。
僕はこの物語を読んで、どの様な美しき表現がこの先に生まれるのかと期待しています。
こちらの筆者様の作品で、最初に拝読させて頂いたとある物語があります。僕はその主人公が歌唱する場面が、とても美しいと思いました。音楽的な造形の深い筆者様が生み出す表現は、表層を越えて、深い部分で読者様に訴えて来ると感じております。
さて、そんな筆者様が書かれる本作を鑑みるに、少しダークな世界観が漂います。ただし、物凄く暗いものではないのでご安心を。それは悪魔という存在がいる世界です。
悪魔、皆様はどういう存在を想像致しますか? 人により様々なイメージがあるとは思いますが、簡単に言えば邪悪な者であると思います。そして、その根幹にあるものは「悪意」です。この「悪意」という意識が悪魔なる存在を産み出します。
ではその対極に神を思い浮かべた場合、その根幹はなんでしょう? 勿論すぐにご理解頂けるかとは思いますが「愛」です。
「悪意」と「愛」この二つの意識は戦うという構図ではありません。よく善と悪の戦いなどと言いますが、もっと根源的な部分で考えると「悪意」と「愛」という意識は存在であり、人間はその影響下にあると感じます。
この関係は、多少の誤解を含みながらも、敢えて「北風と太陽」みたいなものだろうと思うのです。「愛」、それはとても心穏やかで暖かいモノであり、改めて大切なテーマでもあると考えます。
お勧め致します。
音楽への並みならぬ愛を持たれる筆者様が、美しい「愛の歌」の物語を書かれております。ファンタジーとしての魅力を放ちながらも、読み手に大切な「愛」とは何であるのかを問いかけて来るようです。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)