エピローグ 探しに行こう

 数日後。

 荷台に無数のスクラップを乗せて、戦場から少し離れた道路を走るオンボロトラックの姿があった。


「――おい聞いたかよ、人類軍がAIマシーンの運用を中止したんだと」

『あぁ、暴走して敵に寝返ろうとしたんだろ?』

「敵に回収される前に敵兵もろともミサイルでドカンだと」

『戦場の支配者の最後がそれとは、無情だねえ』

「AI軍も強力な人間兵スレイヴを損失して戦況に影響が出てるんだと」

『戦争なら地球でやりゃいいのにな』

「まったくだぜ。――あ、おい嬢ちゃん」


 運転手の老人は思い出したように荷台の乗客に声をかけた。


わりぃな荷台なんかに乗せちまって。この分だとあと30分くらいで街につくからよ、もう少しだけ辛抱してくれや」

「ううん、慣れてるから大丈夫」


 老人の言葉に、荷台にいた包帯まみれの少女は遠退いていく戦場を眺めながら返事を返した。


「街についたらその火傷もちゃんと手当てしてもらわねぇとなぁ。――あぁなんの話してたっけ」

『じいさんボケてんのかよ』


 運転手の老人は黄色い歯を見せて少女に笑いかけると、また助手席のAIマシーンとの雑談を再開した。


「……本当に、変なやつ。本当に、自分の全部を差し出そうとするなんてね」


 荷台の少女は苦笑しながら、傍らに置かれた円柱状の機械を撫でた。

 その機械は少々焼け焦げてはいるが、まだ機能停止してはいない。微かな動作音とランプが点滅を繰り返している。


「探しに行こう、二人で。好きって意味を」


笑う少女の胸元でくしゃくしゃになった、だがその鮮やかさは失っていない紅い花が揺れる。少女の髪の色と同じ、紅い花だ。


「だけどまずは……貴方の新しいボディを用意しないとね」


 少女のその言葉に答えるように、アブソルーターと銘が刻まれたAIポッドは緑色のランプを点滅させたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キミへとおくるAIのコトバ。 恋犬 @coydog

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ