“灰かぶり姫”が昇る階段の先で待ち受ける運命は…?

洗練された舞台劇のような台詞が毎話、胸に突き刺さる大人の恋愛譚です。

その年の「四月一日」は、今までのどの桜咲く春とは違った…

京都の老舗会社に清掃員として入社したヒロイン・咲良は、不思議な縁から会社の社長・涼真と近しくなり、意外過ぎる提案を受けます。

それは偽装結婚の誘いだった…余りにも不釣り合いな二人の男女の出逢いから、物語が始まります。

──愛を知らない独りの男性、愛を知りたい独りの女性

社会的な格差は圧倒的で、障壁は余りにも高い。双方が悩み、戸惑い、行手には荊棘が立ち塞がります。

果たして仮初めの結婚に、意味があるのか?
苦難を乗り越えた先に、祝福される未来が拓けているのか?

序盤は、途方に暮れながらも直向きに前進するシンデレラ・ストーリーにも思えますが、二人の過去が絡み、謎を秘めた展開に読者は驚き、引き込まれていくことでしょう。作者様の真骨頂とも言える深みのある人間ドラマの開幕です。ヒロインの周囲にちらつく不審な影、過去に起きた重大事件とは何か?

予測し得なかったスリリングな物語が待ち構えています。直線的構造のロマンスではなかった…謎が謎を呼びます。

作者様は、代表作の大河ドラマで、人と人の思わぬ繋がり、或いは巧妙に配置したアイテムで読者の度肝を抜いた伏線回収の名手でもあります。現在、四十話を過ぎた辺りでの寸評になりますが、期待します。ハンカチを用意して物語の行く末を見守りたい。

そして、序盤で得た「名作かも」という読者諸氏の予感と手応えは「本物だ」と力強く言い切ります。

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