アリスの悪夢とドーラ

3.ドーラとの出会い

　その日の午後、いつものように学院の広い廊下を歩いていると、突然、泣き声が耳に飛び込んできました。角を曲がると、一人の少女が壁に追い詰められているのが見えました。何人かの生徒が彼女を囲んで、嘲笑う《あざわらう》ように言葉を投げかけていました。

「どうしていじめてるの？」と私は彼らに声をかけました。

　彼らは驚いたように私を見つめ、何も答えません。ドーラの目は涙で濡れていて、彼女は怯えているようでした。

「大丈夫？」と私はドーラに手を差し伸べました。

　彼女は静かに頷き、私の手を握りました。私たちはその場を離れ、学院の庭に向かいました。

「ありがとう、私、ドーラ。クラムロス子爵家の・・・」彼女が言葉を続ける前に、「クラムロス子爵家？初めて聞くわ」と私は驚きを隠せませんでした。王都の貴族の中でも、その名は馴染みがありませんでした。

「ええ、私たちの家はずっと田舎で・・・」とドーラは静かに語り始めました。

　彼女の声は柔らかく、目には悲しみが宿っていました。彼女は最近、貴族学院に転校してきたばかりだと言います。

　私たちは庭のベンチに座り、彼女の話を聞きました。ドーラは異国の風習や言葉に馴染めずにいること、そして、新しい環境に戸惑っていることを打ち明けました。彼女の瞳には、新しい世界への好奇心と不安が同居しているように見えました。

「ここはとても素敵よ。慣れればきっと好きになるわ」と私は励ますように言いました。彼女は微笑み、「ありがとう、アリス」と答えました。

　その日から、ドーラと私は急速に友情を深めました。彼女は自分の家族や故郷の話をしてくれるたびに、私はその静かな魅力に引き込まれていきました。ドーラの存在は、私の学院生活に新たな色を加えてくれました。同時に、彼女の周りに漂う謎めいた雰囲気が、私の好奇心を刺激し続けていました。