5.夏の終わり
夏が終わりに近づき、辺境伯領の空気にも変化が感じられ始めました。緑豊かな木々が徐々に色づき始め、朝晩は涼しさを増していきました。しかし、その美しい変化とは裏腹に、私たちの心は重たいものに押しつぶされそうでした。
「もうすぐ学院が始まるわね」とドーラが言いました。
彼女は窓の外を見つめながら、思い詰めた表情をしていました。私たちの夏は、予期せぬ出来事によって翻弄され、心に深い痕を残していました。
私たちは静かに荷物をまとめ、王都へ戻る準備を始めました。荷造りをしながら、私たちは過ごした夏の日々を振り返りました。
「こんなはずじゃなかったのに・・・」と私がつぶやくと、ドーラは「でも、ここで過ごせて良かったわ。アリス、本当にありがとう」と静かに言いました。
王都への帰路についたその日、私たちは辺境伯領を後にしました。馬車の窓から見える風景は、行きとは異なり、少し寂しげに感じられました。私たちは言葉少なに旅を続け、夏の間に起きた出来事を思い返していました。
王都に到着すると、学院の門が私たちを迎え入れました。友人たちが私たちを歓迎し、「夏休みはどうだった?」と尋ねてきました。私は強いて笑顔を作り、「色々あったけど、良かったわ」と答えましたが、心の中には依然として重たい影が残っていました。
私はドーラと一緒に過ごした夏の日々を振り返りました。
「辺境伯領で起きたこと、忘れられないわね」とドーラが言いました。
私は彼女の手を握り、「一緒にいられたこと、私にとっても大切な思い出よ」と答えました。
私たちは辺境伯領での出来事に対する不安と恐れを共有し、互いに支え合いました。辺境伯領での夏は、私たちにとって忘れがたい経験となり、私たちの心に深く刻まれたのでした。それは、新しい学期が始まるとともに、新たな章への扉を開いた瞬間でした。
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