第3話
老人がフリーデのもとにやって来た。
「盗賊を撃退していただきありがとうございました。私はこの町の町長です。すぐに駆けつけていただいたおかげで被害は軽く済みました。女王様のはからいには深く感謝申し上げますとお伝えください」
「いえ、私は城の者ではありません」
「は?しかし」
「たまたま別の用事で王都に帰る途中だったのです。争っているところを見たものですから」
「そうだったのですか。どうやら教会の方に竜も降りた様子。どうかお礼に昼食でも食べていってください」
「ではお言葉に甘えて」
その時町の入口の方から馬に乗った兵士が三十人ほど入って来た。
「む?盗賊はもういないのか?」
先頭にいた騎士は兜の面を上げた。騎士がフリーデを見つけると馬から降りて歩いてきた。兜を脱ぎ、短い金髪が日を浴びて輝いている。堂々とした声でフリーデに声をかけた。
「フリーデ!元気そうだな!私は王国騎士団のラインハルトである!」
「毎回言わなくても知ってますよ」
「そうか!忘れられているかもしれないと思ってな!盗賊が町を襲ったと聞いて馳せ参じた訳だが!」
「私が先程親玉を仕留めました。賞金首だった男です」
「なんと!お前一人で倒したのか!さすがだな!他の盗賊はどうした?」
「町の外で黒焦げになってますよ。一人二人は逃がしたかもしれませんが確認はしてません」
「そうか!よくやってくれた!そちらは町長であるか?」
「はっ騎士様。町長でございます」
「私は王国騎士団のラインハルトである!」
「はっ存じ上げております」
「遅くなってすまなかった!最近あちこちで盗賊や山賊の動きが活発になっている!この町も王都から近いとはいえ兵士の巡回プランに入れねばならぬな!すぐに手配するゆえ安心するがよい!」
「はっありがとうございます・・・!」
フリーデは二人のやり取りに安心して笑みをこぼすと立ち去ろうとした。
「フリーデ!」
「はい?」
ラインハルトはフリーデを呼び止めた。
「前も言ったが王国騎士団に入らないか!」
「いや・・・私は・・・」
「お前が必要だ!」
他意は無いのだろうがまっすぐ見つめて言われるとさすがに少し恥ずかしくなりフリーデは顔を赤らめた。
「最近海を渡ってきた者達が町で悪さをするようになった!竜人の中でもなにやら不穏な動きがあると聞く。お前のような強い騎士が我が国には必要なのだ!」
「私は自由気ままに暮らしています。たまにはこうして人助けもしています。特に今の暮らしには不満はありません」
「そうか!だが女王様もお前をとても気にかけていらっしゃる!女王様は素晴らしい方だ!この国と女王様のために尽くしたくなったらいつでも来るといい!皆がお前を待っている!ではな!」
ラインハルトがマントを翻して町長のもとへ戻って行った。
(女王様か・・・)
フリーデは少し懐かしさを感じた。女王様のために働いた日々。前世の記憶が呼び起こされ、全力で働いていた日々を思い出し、フリーデは今の自分にははたして一体何があるのかと自問自答しながら教会へと歩いて行った。
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