ありんこドラグーン
げど☆はぐ
第1話
声が聞こえる。
(ここはどこ?)
「フリーデよ」
(私は確か荷物を運んでいる途中で事故に遭って・・・?)
「聞こえますか?フリーデよ」
「え?」
フリーデは暗闇の中で上半身を起こした。周りには何もない。ふと背後から暖かな光を感じてフリーデは振り返った。そこには羽衣を纏った金色に輝く美しい女性が立っていた。その優しそうな瞳、穏やかな声にフリーデは少し気持ちが和らいだ。
「あ、あなたは?」
「私は女神ウルト。フリーデよ、あなたは長い旅の途中で力尽きてしまったのです」
フリーデは少し落ち込んだ。
「私、やっぱり死んでしまったのですね・・・」
「ええ。あなたは生前、とても真面目で働き者でした。誠実で頑張り屋なあなたが不幸にも事故に遭ってしまったこと、私も残念でなりません」
「はあ」
「しかし、可哀想に、あなたが死んでも世界では誰も悲しんではくれなかったようです」
「ええ!?そんな!?あんなに頑張ったのに!?私より五倍くらい大きい葉っぱも運んだのに!!」
「ええ。なにせあなたは働きアリでしたから」
フリーデは悔しかった。
(私はあんなに女王様のために尽くし、何度も何度も荷物を運んだというのに、女王様は私の事を見もしなかったというのか)
「働きアリというのはそういう存在です。働くために生まれ、恋をすることもなくやがて死ぬ。あなたの世界ではそれが当たり前、誰もあなたの誠実さを評価しなかった」
「う、うう・・・」
「そんなあなたに今一度チャンスをあげたい。奇跡を授けたい。私はそう思って今ここにいます」
「わ、私はどうなるのでしょうか?」
「あなたは今度、人間として転生するのです」
「え!?私が人間に!?」
「ええ。そしてあなたは今のアリのその力、『硬さ』、『速さ』、『怪力』をそのまま引き継ぎ転生するのです」
「いつも下から見ていたあの人間に私がなれるなんて!喫茶店で優雅にコーヒーとか飲んじゃったりして!もう甘味欲しさに人間の足元でこぼした砂糖をわざわざ集める必要も無いんだ!わーい!」
「私の話を聞いていますか?」
「あっ!す、すみません。つい嬉しくなってしまって。でも人間になったら私、怠け者になっちゃうかもしれません。楽しい事がいっぱいあったりして、そしたらはしゃいじゃうかもしれません」
「いいじゃありませんか。あなたはずっと頑張っていたのです。少しくらいあなたの人生を楽しんだっていい」
「私の・・・人生・・・」
「さあ立ってフリーデ」
フリーデは立ち上がった。いつも四つん這いで地面を這っていたフリーデにはそれすら初めての経験だった。
「あなたの夢は何ですか?」
「私の・・・夢?」
考えたこともなかった。働きアリとしての生涯にそんな物は必要無かった。
「大丈夫です。これからのあなたの人生で、あなたの本当にしたい事を探してください。私はあなたを応援していますよ」
「ウルト様・・・!」
「さあ行って。来世でもアリの力を存分にふるうのです」
フリーデの意識は暖かい光に包まれた。
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