第8話

 クローディアは久しぶりに生まれ育った屋敷に戻ってきた。庭にイフリートと共に降り立ち屋敷を眺めた。

「五年位じゃ大して変わらないか」

 クローディアが屋敷に入ると背が高い高齢の執事が出迎えた。

「クリフ」

「お帰りなさいませクローディア様。お話は伺っております。ジェット様の部隊に入られるそうで」

「ええ。お父様はいる?」

「戻ったか」

 クローディアの父親が階段を降りてきた。

「お父様、お元気そうね」

「ジェットの部隊に入るそうだな。まだ竜騎士の真似事などしているのか」

「私の勝手です」

「お前は竜騎士が何なのかまったく分かっていない。お前は騎士として育ったのだ。いまさら竜騎士にはなれん」

「ここで押し問答したって私は変わりません」

 クローディアはプイと顔を背けた。クローディアの父親はため息をついた。

「まあいい。女王陛下に尽くすと決めたその意志は評価する。夕食にするとしよう」

「はい」


 盛り上がったとは言えないが久しぶりに家族水入らずの夕食をすませたクローディアは自室に戻った。窓から見える夜の庭園にイフリートが寝そべっていた。

「イフリート」

 クローディアは窓からそっと声をかけた。イフリートは目を開けてクローディアを見て尻尾を少し動かしたが再び目を閉じた。

「頑張ろうね」


 宿屋のベッドにフリーデは足を組んで寝転がっていた。もう片方のベッドに腰掛けて窓から外を見ていたリンネはフリーデに話しかけた。

「ねえフリーデ」

「ん~?」

「私達に何かできることないかな?」

「さあね~」

「クローディアのためにさ」

 フリーデは横になって頬杖をついてリンネを見た。リンネはいつもクローディアに振り回されているように見えるが仲は良い。

(なんだかんだでいいコンビなんだよなこの二人)

「敵の規模がどんなもんか先に見ておくのがいいかもね」

「うん」

「でも戦闘は嫌よ。金にならないし」

「またそんな事言って。そんなに強いんだから手伝ってあげればいいのに」

「別に強いからって戦わなきゃいけない理由なんて無いじゃない」

「まあ、そうだけど」

「大丈夫よ。クローディアは強いんだから」

「そう?いつもフリーデが暴れてるから分かんない」

「クローディアはね、竜騎士になりたいからイフリートに乗ってるのよ」

「・・・?そりゃそうでしょ」

「ま、そのうち分かるわ。明日海を見に行こう。おやすみ」

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