【ヤクソ・カクスィクュンメンタネルヤ-要するに第二十四話-】ヴィフレア救出作戦☆彡【ヴィースィ・ヴェーリ・ルク-五色の章-04-】

「ねえ、ヴァルコイネンさん。何、いの一番に気絶してるんですか? 守ってくれるって話でしたよね?」

 Gの怪人を倒した後、気絶したヴァルコイネンさんが起きるのを待って、それからなんだかんだした後、一息ついてからだけど、私はヴァルコイネンさんを問いただしています。

 なにが私を守るだ! 

「ごめんだゾ。まさかあんなにも恐ろしい怪人が現れるとは思ってもみなかったゾ。人間はどれだけあの虫を恐れているんだゾ? あと片付けはしたが普通の虫だったゾ。謎だゾ」

 恐ろしい? まあ、確かに恐ろしかったけれども。

 そういえばなんでGってあんなに恐怖を煽るんですかね?

 蜂や毛虫のような毒を持っているわけでもないのに。なんか精神的に来るんですよね。

 謎です。

「それ、なにか関係あるんですか?」

「あるんだゾ、大ありだゾ。人間が恐れれば恐れるほど、魔法界の住人にはそれが怪人になると、とてつもなく恐ろしいものに思えてくるんだゾ」

 そんな関係があるんですか、なら確かにGは、それこそ最上級の恐れ方されますよね。

 だから、一目見て気絶しちゃったんですかね?

 そう言われると、あんまり責めるのもかわいそうな気もしてきます。

「あー、まあ、相手がGならそうもなるのも頷けますね…… ある意味一番恐れられている虫な気もしますし」

「そんな怪人相手に良く一人で勝てたんだゾ。魔法も使えないのに凄いんだゾ! 正直驚いているんだゾ」

 普通に殺虫剤が効くとか何なんですかね、怪人って。

 力もそんな強くないようでしたし。

 あれ? 実は怪人っ弱いんですか? 普通の人でも倒せるんですかね?

 少なくとも殺虫剤は効くみたいですし。

 まあ、今はもう関係ないよね。後は皆にお任せします。

 そもそも私には何もできないですし。

「あ、ほら、皆からも心配のメッセージが来てますよ、皆、優しいです」

 Gの怪人を倒したことでスマホの機能も回復して皆に連絡も襲われて、なんとか撃退できたと知らせておいたんだけど、私への心配の返事が返ってきています。

 結局あのGの怪人の魔法は通信障害を起こす? で良かったんですかね?

 なんで一人で行動してたか謎な怪人ですね、戦闘員でも連れていたら私、本当に詰んでましたよ。

 それはともかく仲間っていいもんですね。

 素顔も本名もしらないですけど、こんなに心配してくれています。特にアクアさんとアンバーくんちゃんが。

「それと、ヴィフレアの囚われている場所が分かったかもしれないゾ」

 皆からの心温まる心配のメッセージを読んでいると、急にヴァルコイネンがそんなことを言い出しましましたが何を根拠に?

「そうなんですか? でも、急にどうしてです?」

「あの怪人の死骸の近くに名刺が落ちてたんだゾ。あの虫をかたしているときに見つけたんだゾ」

 三センチ大のGですよ。かなりの大物ですよ。

 自分で片付けたくないじゃないですか。かと言って、そんな大きなGを私の部屋の窓の先に置いておくのは嫌です。

 なので、気が付いたヴァルコイネンさんに頼んだら、ちゃっちゃとかたしてくれました。

 怪人化してなければヴァルコイネンさんはGを恐れたりしないみたいですね。

 と、いうことろで差し出された名刺を見ます。

 Gが持っていたと思うと、受け取るのはなんか嫌なので、受け取らないでヴァルコイネンさんに持たせたまま見せてもらってます。

「九条製薬 開発主任山本慶太…… 山本? これお隣さんが落とした奴じゃないですか? お隣さんも山本さんですよ」

 普通に考えるとそうなりますよね。

 確か私が小さいころ、お隣の山本さんにも息子さんがいたはずですね。その人の物なのでは? 関係ないのでは?

 そもそも、そんな致命的な手掛かりになるような物を持たせるわけ……

「違うゾ。この名刺からはわずかな魔法力を感じるんだゾ。しかもヴィフレア・グリーナリーの居場所を隠している魔法力と同じ波動なんだゾ! 間違いないゾ。これは挑戦状なんだゾ」

「私には普通の名刺に見えますけども」

 ヴァルコイネンさんがそこまで言っているのであれば、言っている通りなんでしょうけども。

 魔法力なんて言われても私にはよくわからないですよ。

 資質も才能もゼロなので。

「君は魔法資質ゼロだからだゾ」

 そう改めて言われると来るものがあります。

 なんでそんな私を選んだんですか!

「じゃあ、ここに乗り込むんですか?」

 私の素性と家がばれた以上はさっさと片を付けて欲しいですね。

 いつまでも殺虫剤片手にはいられませんし。

「そうだゾ、この場所もプナイネン・ルージュのことも、バレてしまった以上、早い方がいいんだゾ」

 確かに今のままでは安心して寝れないですし。

 何より仕事で疲れているお母さんを巻き込みたくないです。

「じゃあ、皆にも連絡します。それと殺虫剤を買い込んで行かないといけませんね」


「アクアさんどうしたんですか、そんな渋い顔して」

 アクアさんが顔をピクピクさせながら名刺に書かれていた住所の建物を見ている。

 知っている建物なんですかね? この反応は。

「いえ、何でもありません」

 アクアさんはそう言いつつも、その美しい顔を歪めて、まだ渋い顔を見せてますね。

「あら、ここ……」

 と、ピンクロースちゃ、いや、ピンクローズさんも知っている建物ぽいですね。

「ピンクローズちゃ…… さんもこの場所をご存じなんですか?」

「ええ、パパさんの務め先ですよ。パパさん、今は在宅勤務中ですけどね」

 え? パパ? パパってことは結婚だけでなくお子さんもいるってことですか?

 そ、それは予想してなかったですよ。

「ヴァーレアンプナイネン・ローズピンク! 個人情報は言ってはダメなんだゾ」

「あっ、ごめんなさい!」

「え? ご結婚されているんですか?」

 と、アクアさんが物凄い顔で驚いている。

 まあ、その気持ちはわかりますよ。

 だって、ローズピンクさん、見た目は十代前半ですもんね。

 それも魔法少女の見た目は、の話なんですけれども。

「やっぱりしてたんですね」

 と、これは私。ヴァルコイネンさんがうっかり喋ってたしね。けど、パパさんってことはやっぱりお子さんもいるんですよね?

 ローズピンクさんの姿しか知らないけど、犯罪じゃないんですか?

「え! 通りでしっかりしてると思ってました!」

 これはアンバーくんちゃん。

 確かに、小さい割にはしっかりしていると思っていましたよ、私も。

「えへ、実はそうなんですよ!」

 と、ローズピンクさんが嬉しそうに言っています。

 その笑顔を見るからに夫婦仲は良さそうですね。

「だから、個人情報はダメなんだゾ!」

「ごめんなさい、もう言いませんよ!」

「にしても、どうします? 正面から殴り込みますか?」

 そう言ってアンバーくんちゃんが、力こぶを作って見せます。

 なんでも必殺技を会得出来たんだとか。

 いいな、必殺技。私も一度は使ってみたいです。

 まあ、そんなものは一度で十分そうですが。

「いえ、それはやめてください。こっちに役員用の裏口があります。そこから参りましょう、案内します」

 アクアさんがやる気満々のアンバーくんちゃんを止めて、そんなことを言いました。

「よくそんなこと知っていますね」

 と言うことは、やっぱりアクアさんの知っている建物なんですね。

 色々世間は狭いと実感させられますね。

 なんか運命的な力でも働いているんですかね。

「こちらにもいろいろとあるんですよ」

 アクアさんはそう言って困ったような顔を見せてくれました。




「ハカセ! なんでですっピ! なんでゴキブリーダに名刺を持たせったっピ!」

 そう言いつつ、マスタ・ケイジュはモニターに映し出された魔法少女達を見ている。

 彼女らはもうすぐそこまで来ている。

 彼女らとの因縁ももうすぐ終わる。

 が、なんで奴らは役員用の入り口を知っているのだ?

 関係者でも紛れ込んでいるのか?

 ま、まあ、いい。毒電波を遮断してやればどうとでもなる。

 そして、なぜ魔法少女を呼び込むような真似をしたかというと、それは一言で言うと今や我が城となったこの場所に案内するためだ。

 それをマスタ・ケイジュに言ったところで理解はしてくれまい。

 まあ、マスタ・ケイジュには、仕事が多すぎてこの場から動けないなど言っても分からぬことよ。

 誠に業の深き毒電波よ。これは、もう少しワシもアルミホイルを頭に巻かないといけない。

 それに、あの怪人はマスタ・ケイジュはやけにかっておったが、ワシから見ると……

「ふむ、あの怪人は…… 魔法能力も情報遮断しかもっておらぬしな、その上、力も弱い。見た目以外、大した能力は持っていない」

 その見た目が、あの黒いあの虫だ。

 そのインパクトは計り知れない。

 だが、それだけの怪人だ。あの大きさになってしまったら狭い場所に逃げ込むこともできず、その特性を生かすようなことはできない。

 まあ、追跡能力はそれなりのもののようだがな。

 あの虫が作る抗菌成分にはワシも一目を置いてはいるが、精神的にワシは関わりたくない。それは他の者にその件は任せるよ。

 なによりやはり見た目がな…… 気分的にもな……

 あまりワシも近くに置いておきたい怪人でもない。

「そ、そんなことないっピ! 恐ろしいっピ! もの凄い怖いっピ!」

 そこだ。

 そこなのだよ、マスタ・ケイジュよ。

 おまえは言葉が足りない。

「そこを勘違いしていたよ、マスタ・ケイジュよ」

「どういうことっピ?」

「キミら妖精、魔法界の住人から見れば、人間の恐怖する対象を怪人化すると強く見えるそうだが、この人間界ではなんの力もないと言うことが、だよ」

「なっ! そ、そんなことはないっピ! 怖いは強さだっピ!」

 怖さは強さか。まあ、一理ないこともないわけではない。

 が、それは物理的な強さではない。

「それは魔法界の話ではないのかね?」

「そうだっピ!」

「ここはどこだい、マスタ。ケイジュよ」

「ハカセの研究室だっピ!」

「そう、ここは人間界、魔法界とは違うのだ、マスタ・ケイジュよ。人間界では恐れだけでは、物理的な力になりえないのだ」

 故にあの怪人は弱い。

 見た目は強烈だがな。そもそももう寒くなる時期だ。虫自体が元気がない。特に最近怪人化したあの怪人はな。

 ミンミンゼーミ同様ほぼ死にかけのを怪人化したため、本当に弱い。

「そ、そんな!? そんなことあるっピ?」

 そう言ってマスタ・ケイジュは首を傾げた。

 なんとも可愛げのある姿だ。よし、許そう。

「あるのだ。まあ、今はそんなことはどうでもいいことだ。せっかく魔法少女達を一カ所に集めれたのだ。一網打尽と行こうじゃないか」

 魔法少女の一人…… 二十八歳は少女なのか?

 まあいい。魔法少女の一人を毒電波より開放して味方につけている。

 ここは今や毒電波遮断教団の本拠地であり数々の怪人もいる。

 鏡で作った新型の戦闘員も用意してある。

 何よりここにはワシがいる。なにも負ける要素はない。

「流石っピ! ハカセ! 流石っピ!」

「ヴィフレア・グリーナリー、準備はできているかね?」

「はい、大総督!」

 フラフラと歩み寄ってくる。

 研究施設内、職員の全員を簡易的ではあるが毒電波からの保護もしている。

 今ならここで多少暴れても平気なはずだ。

「うむ、新型の鏡型毒電波遮断戦闘員・ペイリの準備はどうだ?」

「はい、大総督! 済んでおります!」

 魔法少女ヴィフレア・グリーナリーからの返事も心持、強く返ってくる。

 ピンクの魔法少女を野放しにするとこの研究施設そのものを破壊されかねない。

 だが、それは毒電波遮断戦闘員・ペイリで抑え込めばいい。

 他の怪人達と連携すれば、何の心配もない。

「では、毒電波遮断戦闘員・ペイリを持ちてピンクの魔法少女を抑えよ。ヴィフレア、キミに青色の魔法少女を任せる。黄色は今のところどうにもできん、残りの怪人で時間稼ぎをする。赤はほっておけ。そして、魔法少女達を一人ずつ捕らえ、毒電波より解放してやるのだ」

「はい、大総督!」

 魔法少女達を捉えられれば我が悲願、毒電波の根絶も夢ではないぞ。

 グワハハハハハア!!




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