【ヤクソ・カクスィクュンメンタコルメ-要するに第二十三話-】トイレ籠城戦☆彡【プナイネン・ルク-の章-04-】※G超注意

 格子窓の隙間から、六センチの隙間から、Gの怪人は私の部屋に入り込んで込んできます!

 忘れてました、自分でこやつに、ここがいていると教えたんでした!

 その上で懲りて戸締りをちゃんとするなんて心の中で誓っておきながら、忘れていました!

 危うくGの怪人とと目が合った瞬間、危うく気を失うところでした。

 超巨大なGがぺったんこになって、足でわしゃわしゃしながら格子と格子の合間を通って窓から入って来てるんですよ、そりゃ気を失いますよ!

 一瞬、絶望に捕らえられましたが、手に持っている殺虫スプレーをプシューと……

「うわぁぁぁぁぁ!! 暴れないでください! 気持ち悪い!」

 殺虫スプレーをかけた瞬間、凄い勢いで暴れ出しました。

 ダメだ、キモイキモイキモイです!

「な、なら、そんな酷いものを吹きかけないでください!」

 と、Gの怪人がそう言ってます。確かにそうですが、侵入させてなるものか!

「無理です! 出て行ってください! 出ていけぇ!!」

 思った通り殺虫スプレー、それほど効いてません。

 やっぱり人間大のGには効果薄いんでしょうか。

 こうなったら、急いでリビングに戻って燻煙式の殺虫剤のところまで行って、蓋を急いで開けて着火!

 モクモクと煙が立ち始めます。

 よ、良かった! 事前に使用方法をちゃんと読んでおいて!

 あ、後は……

 そうだ、トイレ、トイレに立てこもろう!

 玄関のドアを開けれないなら、トイレに入り込めればどうにかなるかもしれません!

 私の部屋からものすごい物音がするのを、聞かなかったことにしてトイレに駆け込んで鍵を閉めて、ドアノブを手でしっかりと持ちます!

 タッチの差で何かが、想像もしたくもない何かがガガガガガガッと駆け込んできてトイレのドアを叩きます。

「げほげほげほっ、出てきなさぃ! プナイネン・ルージュさん、無駄ですよ、ゲホッ、こんな煙、けむり。げほっ、うぉぇ、げほっ、き、効きま、げほっ、せんよぉ!」

「き、効いてる! このまま耐えきれば勝てる!」

 それが演技ではないことは、トイレの戸を叩く音が弱々しくなっていることからわかります。

 燻煙式の殺虫剤の方なら、まだ効くようです!!

 山本さんには感謝しないといけません!

「よ、よく考え、げほっ! ここで、このゴキブリーダが死んだら、人間大の死骸が残るのですよ! 良いんですか! げほっ、トレイに閉じ込められ、げほっ、ますよ!」

 そう言われて、一瞬絶望にとらえられますが、それがこのGの嘘だということは私は知っています!

「わ、私、知っていますよ! 怪人は死んだ後、元の姿に戻るって!」

「きぃ、こうなったら実力行使ですよぉ!」

 そう言ってトイレの前でゴソゴソと動く音が聞こえます。

 その音だけで鳥肌もんですよ。

「な、なに!? なにする気ですか! こ、こっちには殺虫スプレーだってまだあるんで…… ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 トイレのドアの下の隙間から、触覚が! 触覚が入って来てるぅ!!!!!!

 こ、こいつ、ドアの下の隙間から入るつもりかぁ!!

 さ、させるか!!

「入ってくるなぁ!」

 便座の上に体育座りしてドアの隙間に向けて殺虫スプレーを噴射!

 今の私にはこれしかできない!

「や、やめな、げほっ、うおぇ、やめな、やめなさい、無駄な…… げほぉ、無駄な抵抗は! やめるのです!!」

 あれ? 今度は殺虫スプレー効いてる?

 と、とりあえず触覚は引っ込んだ!

 行ける! 行けるぞ、このまま籠城戦ですよ!

「こうなったら、げほっ、仕方ありませんケホ、箪笥とか漁っちゃいますからね!」

「や、やめろ、おまえ! ただじゃ置かないぞ!」

「なら、ここ、開けてくださいよぉ……」

「だれが開けてやるもんですか!」

 こ、このままGの怪人が燻り殺されるのを待つしかないですよ。

 ガガガガガガガッ、と音がしてGの怪人がトイレの前から移動していくのがわかる。

 あ、あいつ本当に私の部屋をあさる気か!?

 どうする!? どうする! どうしたらいいのぉ?

 ま、まずは分析です!

 恐らくあのGの怪人は、それほど力がない。

 それは玄関やこのトイレで私がドアを抑えているときは開けれなかったので間違いない。

 ただ見た目が凶悪すぎる。あんなの見たら気絶します。

 気絶したヴァルコイネンさんの気持ちもわかります。

 見た目さえ克服できれば私でもどうにか対処できるかもしれませんが、見た目を克服できる気は一切しません!

 無理です、無理。詰みです。

 こ、このままでは私の部屋がGに漁られて……

 違う! そうじゃないです! あのG怪人の目的は私の部屋から逃げ出すこと!?

 とりあえずこのモクモク殺虫地獄から、抜け出してその後で悠々と攻めてくるんじゃ?

 もしくは戦闘員を呼ばれたらそれで終わりですよ!?

 そうなったら勝ち目はない!

 それにお母さんにこんな超巨大Gを見せるわけには行きません!

 私が、私がやらなければなりません!

 力は私のほうが上なんです、どうにかなるはずです!

 トイレのドアを恐る恐る開けます。

 外の様子を見てみます。もう結構煙がモクモクしてます。

 そして、トイレの前にはとりあえずいません。

 私の部屋のほうから何やらガサゴソと音がします。

 あんにゃろう、私の部屋本当に漁ってやがるな!

 怒りに任せて突撃すると、窓から逃げようとしているG怪人を発見!

 壁尻ってやつですね。対象がGの怪人なので気持ち悪いだけですが。

 とりあえず殺虫剤のスプレーを怪人のケツに向けて噴射させます。

 今見えている部分は、服を着ているのであまり怖くはないですし。

 服? ああ、この服が原因か! 

 服を着ている部分に殺虫剤まいても効果ないのは当たり前ですよね!

 そのせいでそんなに効果なかったんですか!

 最初、吹きかけて時は動揺してて気づけなかったけど、Gの素の部分にならスプレーの殺虫剤も効くかもしれない!

「喰らえぇ!!」

 そう思って服の間の茶色い部分に集中して殺虫スプレーを噴射してやりますよ!

「ぎゃぁぁぁぁ! やめ、やめなさい! 無駄です! 無駄ですよ! 人間並みの大きさのゴキブリーダにそんなもの効くわけが!!」

「き、効いてる!」

 想像以上に暴れている!

 勝てる! 勝てます!!

 魔法少女の力がなくても、怪人に勝てるんです!

「こ、こうなれば!」

 そう言って、Gの怪人が何やら、服を脱ぎだして……

 脱ぐがいい、Gの部分はそれすなわち弱点、殺虫剤が……

「ギャーッ! 脱ぐな! 気持ち悪い!! Gの姿を見せないでくださいぃぃぃぃ!!!!」

「なら、殺虫剤を吹きかけるのをやめてくださぃ!」

「やめるかぁ! 帰れ!!」

「こうなったら最終手段です! 羽を羽ばたかせて殺虫剤を押し返します!」

「やめろ! そんなもの、見せられたら気絶しちゃいますよ!」

 

 その後の光景はあまり思い出したくないです。

 薄茶色の大きな羽が広がっていく様を。

 超巨大なGの羽の下の姿を。

 その羽が作り出した風を全身に受けたことを。


 私は一生思い出したくないです。

 ただそれは弱点をさらしていることには違いがなく、愕然としつつも殺虫スプレーを噴射し続けた私を褒めてください。

 殺虫スプレーの出が悪くなるころ、私の目の前には巨大なGの怪人はいなくなっていました。

 恐らく魔法で作られていた服も一緒に消えていました。

 格子窓からぶら下がるように、三センチ大のGの触覚がどこかにひっかかり、がぶら下がっているだけでした。





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