【ヤクソ・コルメクュンメンタ-要するに第三十話-】魔法少女VSヘルデスラー大総督☆最後の大決戦開戦☆彡【ヴィースィ・ヴェーリ・ルク-五色の章-10-】

「まさかこうも我が計画がうまく行かないとはな。少々見くびっていたか」

 ヘルデスラー大総督はそう言ってホールに備え付けられた壇上でマスタ・ケイジュ、黒いぬぐるみを撫でながらそう言いました。

「マスタを返すんだゾ!」

 ヴァルコイネンさんが私の腕の中から叫びますが、

「兄さんこそ、毒電波から解放されるっピ!」

 とうの弟さん、マスタさんは助けを求めるわけでもなくヘルデスラー大総督になついている様子です。

「ヴァルコイネンさんの弟さんも洗脳されているんですか?」

 それを不思議機思ってヴァルコイネンさんに確認しますが、

「変だぞ、マスタには何の魔法もかかってないんだゾ」

 と、ヴァルコイネンさんも少し驚いた口調でそう言いました。

「その通り! ワシの力により、マスタ・ケイジュは毒電波より開放されただけだ」

 私とヴァルコイネンさんの返答を聞いてか、ヘルデスラー大総督はニヤニヤと笑いながらそう言いました。

「なんなのよ、その毒電波って」

 アクアさんが少し呆れるような表情でヘルデスラー大総督に聞き返しました。

 要はヤバい人ですよね? いろんな意味で。

「人の悪意、あるいは悪魔のささやき、または心身の隙をついて心をに入り込み蝕むもの…… それこそが毒電波」

 アクアさんの問いにヘルデスラー大総督はそう答えますが……

 やっぱりヤバい人ですね?

「あのー、具体的にはどういったものなんですか?」

 その返答によくわからなかったのか今度はピンクローズさんが聞きます。

「仕事が忙しく家に帰る暇もない。アホで屁が臭い上司に、現場を何も理解できていない幹部連中……」

「ただの仕事のストレスか何かじゃねぇのかよ?」

 グリーナリーさんがそう吐き捨てます。

 グリーナリーさん、前は大人な女性、って感じだったんですが、これが本性なんですかね?

 いや、まあ、あれですけど。

「ヴィフレアよ、おぬしも一時期とはいえ、毒電波から解放されていたはずだ、その時のことを思い出せ!」

 ヘルデスラー大総督はそう言って、グリーナリーさんに向かって手を伸ばしますが、

「あんたが私の胸とケツを眺めていたのは覚えているよ」

 と、グリーナリーさんがやっぱり吐き捨てる様に言いました。

 少し憧れを感じていただけに、現状のグリーナリーさんを見ると何とも言えない気持ちになります。

「むぅ……」

 グリーナリーさんのその言葉に、ヘルデスラー大総督も何も言い返せないでいます。

 本当に見てたんですかね?

 胸とお尻を。

「ハカセ! ハカセ! こんな奴らやってしまうっピ! ハカセならできるっピ!」

 口では勝てなかったヘルデスラー大総督を励ますように、マスタさんが騒ぎ立てます。

 いや、勝てるんですか?

 見た目、アルミホイルの帽子を被った白衣のおじさんですよ?

 コスプレしている私以下ですよ?

「そうじゃな、マスタ・ケイジュよ。毒電波より開放されれば分かり合えるはずじゃ!」

 けど、ヘルデスラー大総督もやる気があるように頷きました。

「オイオイ、五対一で勝てるとでも?」

 そう言うグリーナリーさんは動けないはずなのに、なんでそんな強気なんですかね?

 そう言うところはやっぱり見習いたいところではあります。

「ふん、初めから怪人どもなどあてにはしておらぬ。いや、人員的には十分役に立ってはくれたがな。そもそも奴らのほとんどが、マスタ・ケイジュが裏の林で拾ってきた虫達よ」

「そうだっピ! マスタが集めたっピ!」

 えぇ……

 いや、うん、怪人のラインナップを思い返すとそれは納得できはしますが…… えぇ……

「仕事の役にはまるでたたない奴らよ。まだ毒電波遮断戦闘員・ヴァルヨのほうがまだ役になってくれたわ!」

 まあ、そうですよね。虫の怪人達に仕事を手伝えっていう方が無茶な気もしますけど。

 あの戦闘員はギリギリ、アルミホイルを頭に巻いた全身黒タイツの人に見えなくはないですからね。

 それでも警察案件ですけども。

「まあ、元が虫ですからね、期待するほうがダメなのでは? こんな方が開発主任だったとは……」

 アクアさんが呆れたようにそう言いました。

 もっともな気がします。

「いや、優秀は優秀って聞いてるぞ。上司の板岡って奴はあんまり評判よくないって噂だけど」

 グリーナリーさんがフォローを入れる様にそう言った。

「あー、パパさんも板岡さんはダメだと言っていましたね」

 そこにピンクローズさんも入ってきます。

「えぇ、皆さん、関係者なんですか?」

 世間は狭いって奴ですか?

 なんでみんな関係者なんですか?

「ボクは違うよ? パパは俳優でママはアイドルだし」

 なるほど。

 魔法少女の体ではあるけれども、確かにアンバーちゃんは一番の美形だものね。

 それは納得です。

「え? そうなんですか? 通りで美形なわけですね」

 アクアさんがうっとりした目でアンバーちゃんを見ています。

 忘れてました。

 こちらもヤバい人が多いんでした。

 そんなやり取りを見て、ヘルデスラー大総督は、

「何のんきにはないしておる。このワシを目の前にして」

 と、呆れたように言ってきました。

 いや、怪人を全滅させた時点で私達の勝ちじゃないんですか?

 それともヘルデスラー大総督も戦えるんでしょうか?

 虫相手ならまだしも、人となると……

「その…… 山本さんはなにかできるのですか?」

 とりあえず本名で呼びかけて見ます。

「ヘルデスラー大総督と呼ぶのだ!」

「ヴァルコイネンさん、山本さんも怪人化しているんですか?」

 一応確認はしておかないと。

 生身相手に魔法少女が本気で攻撃したら殺人事件になってしまいますよ?

「怪人化はしてないゾ。けど、魔法の力を感じるゾ! どういうわけなんだゾ?」

 ヴァルコイネンさんはそう言って不思議そうな声を上げました。

「ハカセは現代の魔法使いなんだっピ! だから、魔法を使えるんだっピ!」

「そんなはずはないんだゾ! 魔法使いは全滅したはずだゾ!」

 マスタさんの返答に、ヴァルコイネンさんが驚いたようにそう言いますが、もうファンタジーの世界ですね。

 私の理解の範疇を超えています。

 私は魔法少女にもなれなかった一般人ですよ?

 魔法使いがどうこう言われて理解できるわけないじゃないですか。

「どういうこと?」

 私の代わりにアクアさんが聞いてくれます。

「魔法の資質が著しく高い血族が昔は人間界にいたんだゾ! それを魔法使いと呼んでいたんだゾ! でも、魔法使いはとうの昔に滅んだはずだんだゾ」

 なんで滅んだか、とかで回想が始まったらどうしようかと思ったけど、始まりませんでしたね。

「らしいな。が、しかし、ワシにはその血が流れているらしい。そして現代に蘇った! 先祖返りと言う奴だよ」

 ヘルデスラー大総督はそう言って両手を大きく広げて見せた。

 ただ私にはくたびれたスーツを見せつけているようにしか見えないです。

「そうなんだっピ! だからマスタがここにいるのは正当な理由だっピ!」

「話が見えないのだけれども?」

 アクアさんが私の代わりに聞いてくれます。

 ついでに私は何も理解できてません。

 そもそも、何の関与もできないので私はこの場の流れに身を任せるだけです。

「これはまずいんだゾ…… ここはいったん逃げるんだゾ! 魔法界と相談しないといけないんだゾ」

 ヴァルコイネンさんが私の腕の中でそう言って暴れ出しました。

「ええ? 私、家までバレているんですよ?」

 私に逃げ場ないじゃないですか!

「なら、うちに来なさい、ルージュ!」

 アクアさんがそう言ってくれますが…… それは別の意味で逃げ場がないのではないですか?

「え? いえ、そ、それは…… ちょっと身の危険を感じるので……」

「ははっ、クソレズが振られてやんの!」

 グリーナリーさんが動けないのにアクアさんを煽ります。

 そんなグリーナリーさんに対して、アクアさんは、

「貴女は強制的に家に連れて帰ります!」

 そう言って、ニヤリと笑いますが……

 私達魔法少女ですよね? 正義の味方じゃないんですか?

「おま! や、やめろ! 訴えるからな!」

 グリーナリーさんはそう言っていますが、動けない、というか体の主導権をアクアさんに握られているのにどうしてそんな強気なんですか?

 そういった部分は私も見習った方が良いんですかね?

 いや、なんかダメな気がしてきましたよ?

「愚かな、内輪揉めとは。やはり毒電波…… それが諸悪の根源! ワシ自ら毒電波から解放させてやろう!」

 ヘルデスラー大総督はそう言って両手を前に突き出しました。

 その結果、抱いていたマスタさんとやらは床に落ちました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る