【ヤクソ・カクスィトイスタ-要するに第十二話-】仕事に疲れたOLと大総督☆彡【ヴィフレア・ルク-緑の章-01-】

 私は森田和美。

 都内のそこそこ大きな製薬会社に勤める二十八歳のOL。

 趣味はBL小説の創作よ。

 なに? 悪い?

 まあ、表向きは私も隠しているんだけれども。

 そんなことはどうでもいいのよ。

 仕事よ。仕事、仕事が多すぎるのよ。

 私、別に研究員でもないのよ?

 ただの事務員なのよ? それなのに毎日毎日残業残業ってどういうことよ!

 こっちはね、創作活動で忙しいのよ!

 だから、給料が低くても事務員を希望したっていうのに、なんで残業があるのよ!

 まあ、確かに、研究室に住んでるような開発の連中と比べたら残業は少ないけどさ!

 でもこっちはね、残業が少ないって聞いて事務を希望してんのよ!

 まったく!

 あぁぁぁぁぁ!!! ほんと、ストレスが貯まる!!

 まあ、最近ストレス解消のちょっとしたバイトをしてるんだけどね。

 それに創作活動のいい刺激に…… バイトの同僚が女子ばっかりなのは残念よね……

 でも、黄色のあの子、幼いけど多分、あれの中身はおのこなのよね?

 って、ことはショタなのよね?

 そんな子が魔法で無理やり魔法少女の姿にされて……

 で、それを知らないノンケの男に惚れられて、って、これはありか? ありなのか? どーなんだ、私?

 うーん、最終的に魔法少女からショタに戻って、ショタのほうから告白し直すってのは、あり…… よね?

 ふむ、ふむ…… はじめは勘違いの一目ぼれから入り告白されショタも驚くけど、そのうちショタも気になり始めてショタが思い立ち、実は男の子でしたと言われショックを受けながらも、一目ぼれした魔法少女の面影が残るショタに告白され心が動く主人公……

 あら、良いんじゃない?

 新しいネタができたんじゃないの? これ!?

 ふへへっ、やっぱり私、天才だわ。これだ、次の話はこれでいこう!

 主人公は…… 中学? いえ、もう少し上で物腰柔らかな気の弱い高校生くらいがベストと見た!

 今度、あの子、ケルタイネン・アンバーだっけ?

 あの子は、実際はどれくらいの年齢なのかしらね? 結構、幼いとは思うけど小学生ってほどでもないし、多分中学生くらい?

 まずは観察しないとダメよね。生モノは生々しさと言う鮮度が大事なのよ!

 見た目は完全に魔法少女の姿でも、中身がおのことで恥ずかしながら魔法少女の恰好をしていると思うと……

 それはそれでいいわね。

 女子の体に困惑しているところも良い!

 ふむ…… ふむふむ、それで女子の体にコンプレックスが出来て男に走る……

 ってのは、どう? ふふふっ、段々と良いアイディアがふつふつと湧き上がってくるじゃないの!

 と言っても、ケルタイネンが男の子って確証はないんだけど。

 でも、間違いなく男の子よね。

 私の勘は良く当たるもの!

 そうと決まれば、さっさと仕事終わらせて、帰るぞ、おらぁ!!

 ヒヒヒッ、今度会った時は、お姉さんがじっくりと観察させてもらうからねぇ…… 覚悟しときなさいよ。

 あっ? なんかあのぬいぐるみから、なんか連絡着てるわね、今はまだお仕事中なので無理ですよー、っと。

 ん? それともう一通、これはシニネンからね。ああ、これは確かに。

 下の方の名前で呼び合おうって言うのは私も賛成ね。

 あのぶりっ子ピンクとか舌噛みそうな名前だし。




「次は緑色の魔法少女か。これは正直、ワシにもよくわからん」

 この魔法少女はよくわからない。

 恐らく日常生活でも仮面をかぶって生活しておる。

 それが魔法少女となって更に顕著で強靭な仮面となりヤツの本性を的確に隠しておる……

 曲者やもしれん。

「ハカセ!? ハカセでもわからないことがるんですかっピ!?」

「いや、こやつは自分を隠す術を身に着けておる。恐らくは普段から何かをひた隠し、長年生きてきたのじゃろう、他の者と年季が違う。唯一の社会人…… なのだとは思う」

 タイトスカートとヒールを履きなれているところからもそうじゃろう。

 黄色の魔法少女などは高いヒールに手間取っておるしな。

 その点、緑色の魔法少女は随分と履きなれているように思える。そういった靴を履きなれた社会人であろうことくらいはワシでも察しが付く。

 録画の履歴を見ても、奴が現れるのは、どんなに早くて十八時過ぎ、それ以前に現れたことはまずない。

 それに加え休日は絶対に現れない。恐らく仕事に憑かれ、現実に疲れた社会人で間違いなかろう……

 奴の纏う雰囲気からも分かる。

 どす黒い仕事と言う悪霊に憑りつかれたオーラをワシも感じることが出来るぞぉ!!

「流石ハカセだっピ!」

「いや、わからぬ。断定はできぬが! まあ、それはおいておいて。奴の攻撃は棘の付いた鞭での攻撃だったな」

 茨の鞭を自由自在に扱うのだが、その鞭の威力よ。間違いなく魔法の武器じゃな。

 コンクリートだろうが、鋼鉄だろうが簡単に切り裂く棘、そして、振るわずとも意のままに動く鞭。

 これが厄介でない訳がない。

 それに魔法の武器と言うことで呪文いらずで隙もない。近接から中距離を担ういるのも他の魔法少女の隙を埋めている。

「そうだっピ! 外骨格自慢のゾウムシ怪人が簡単にバラバラにされたのを知ってるっピ! 恐ろしいっピ!」

 確かにあれは酷かった。

 瞬時に鞭を巻き付けたと思ったら次の瞬間には怪人がバラバラにされておった。

 しかも、あやつ、あの緑色の魔法少女はその瞬間に笑っておった。

 目を見開き、口角を上げ、舌なめずりをして、怪人がバラバラにされるのを笑って見ておった! なんと恐ろしい魔法少女よ。

 奴こそが毒電波の発生源ではないのではなかろうか?

 いや、決めつけは良くない、確証を得てから決めるのだ。

 それに、

「あのゾウムシ怪人は別に外骨格が特別硬かったわけじゃないからのぉ、品種もカタゾウムシでもなかったはずだ」

「そ、そうなんだっピ!? でも、やけに外骨格を自慢してたっピ!」

「うむ、あやつは自分をカタゾウムシ科と勘違いしている節があった。あやつはただのゾウムシ科で恐らく元はカツオゾウムシだったはずなのだが」

 少なくともカタゾウムシ科ではない。

 少々思い込みが激しい奴じゃった。

 それでも怪人化した甲虫の外骨格を易々と引きちぎる棘鞭の威力よ。

 そして、あの惨状を見て生き生きとしている奴の胆力の強さよ。

 現代日本において、信じられないほどの残酷さよ。

「ハカセ、詳しいっピ! 流石っピ!」

「まあ、虫は好きだからな、だから虫を怪人に選んでいるわけだが。元が虫だからなのか、最近は魔法少女との間に力の差を感じている」

「そ、そんなことはないはずだっピ!」

 マスタ・ケイジュはそう言って不思議そうに顔を傾けた。

 ふむ、どうもマスタ・ケイジュが知らない仕組みがあるようだな。

 マスタ・ケイジュも非正規の方法で魔法界の力を引っ張ってきていると言っておったし、そもそもの受け取れる魔法の出力が違うのやもしれん。

 これにも検証と実験が必要だな。

「まあ、それも弱点を突けば問題ないはずだ」

「じゃあ、緑の弱点はわかっるっピか!?」

 わかる。いや、まだ推測の域。

 それでも、なおあふれ出ているあの情念……

「奴は自分を隠す術を持っているので確実ではないが、奴は恐らく……」

「恐らく? なにっピ!?」

「婚活中のはずじゃ! 飢えた目をしている。特に雄に飢えていることは間違いない、いや、隠しようがないはずなんじゃ!」

 そうじゃ、それだけは隠し切れていない。

 奴は男に、雄に飢えておる!

 それだけはワシにもわかる、間違いはないはずだ!

 で、あるならば婚活中のはず!

 ここまでの推測に間違いは…… ない、はずだが、なにか違和感が残る…… 何だこの違和感は?

「ハカセは虫と性癖のことしかわからないっピか?」

 なぜだ、なぜマスタ・ケイジュよ。そんな白けた目でワシを見ておる。

「いや、本職は薬学なのじゃがな。それよりもマスタ・ケイジュよ!」

「なんだっピ!」

「いい加減、ここではヘルデスラー大総督と呼んではくれぬのか?」

 うむ、ワシは天才。そして大総督である。

 このワシが間違えるわけがない。

「ごめんなさいっピ! ヘルデスラー大総督だっピ!」

「うむ」

 しかし、決めつけるには早計だった気もする。

 じゃが、男に飢えているように見えることだけは間違いがないように思える。

 ただそれを示す証拠がない。なら、実践を持って証拠とさせて頂こう。

 ワシが天才だということの証明にもなる。

「で、緑には誰をぶつけるんだっピ!」

 それは決まっておる。

 奴しかおらん。奴ならば、例え対象が婚活中じゃなくても平気なはずだ!

「無論、毒電波遮断怪人きってのイケメン、キリギリースよ!」

「あの!キリギリースだっピ!? あの、夏は遊び回り、冬に蟻の巣を訪れ餌にされかけたキリギリスを基にした怪人だっピ!?」

 そんな死にかけのキリギリスだったのか。

 マスタ・ケイジュが捕まえて来たので詳しくは知らなんだが。

 それは置いておいて、

「うむ、奴は女口説きの技は超一流…… 奴なら緑の魔法少女を誑し込んでくれるはずだ!」

 そう、魔法少女が強いというのであれば、こちらに引き込んでやればいいだけの事。

 考えて見れば、魔法少女も毒電波の被害者である。

 毒電波から解放してやれば、こちら側に着くのは通りだ。

「う、うーん? どうなんだっピ? あまり成功する気がしないっピよ?」

 なぜじゃ、マスタ・ケイジュよ。なぜそんな不安そうな目でワシを見ている。

 ワシが彼女いない歴イコール年齢だからか!? そうなのか!?

「ワシを信じよ、マスタ・ケイジュよ! おぬしも危うく毒電波に侵されるところだった。それを救ったのは誰じゃ?」

「ハカセだっピ! わかったっピ! ハカセを信じるっピ!」

 うむ、それでいい。それでいいのだ、マスタ・ケイジュよ。

「うむ、だが、ここではヘルデスラー大総督と呼びなさい」

「ごめんなさいっピ! ヘルデスラー大総督だっピ! ハカセ、なんか元気ないっピ?」

「むぅ、最近残業続きでのぉ…… 少し疲れておる」

 もう何日家に帰ってないことか。一週間や二週間ではあるまい。

 毒電波遮断戦闘員・ヴァルヨを作り出したことにより、人手不足は多少解消し、使いっ走りもできたことでだいぶ楽にはなったが。

 逆にこの研究室から出るのはトイレの時くらいにまでなっている。

 まともなご飯が恋しい。

「それはまずいっピ! 疲れると毒電波に侵されるっピよ!」

「大丈夫じゃ、ちゃんと頭にアルミホイルは巻いておる」

 うむ、このアルミホイルがある限り、ワシは毒電波に侵されるようなこと決してない!

 それ故にワシは負けん!

 決してな!

「それなら安心だっピ!」




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