【ヤクソ・カハデクサン-要するに第八話-】ピンクの魔法少女と半額シール☆彡【ヴァーレアンプナイネン・ルク-桃色の章-01-】

 私の名前は新田加奈子。

 三十六歳。今時珍しい三児の母です。

 子供達は十二歳、八歳、六歳とやんちゃ盛りで少し困りものですね。

 まあ、一番上のお姉ちゃんはしっかり者なので、弟くん達の面倒をちゃんと見てくれるえらい子さんですが、それでもまだ十二歳。

 やっぱり甘えんぼさんなのも、しかたないですね。

 それにパパさんも今は在宅勤務に切り替わって、子供達の面倒も見てくれているので安心してバイトに行けます。

 なにせ今やっているバイト代の方がパパさんのお給料よりも良くって辞めれないんですよね。

 パパさんはそんな高額のバイトなにやってるんだって、心配されるんですけど、ゴスロリ服着て魔法少女やってますぅ、なんて言えるわけないですし。

 そもそも自分の名前もよく覚えてないのよね、ヴァー…… ヴァーなんとかかんとか、ローズピンクだったような?

 まあ、覚えられないのは仕方ないです。諦めましょう。

 それに、いつまでも嘘は付けないですし、今度、ヴァ…… ヴァル…… ぬいぐるみの妖精ちゃんに相談しましょう。

 パパさんくらいになら言っても平気でしょうし。

 それに三人も子供達がいると色々と必要になってくるんですよ。お金とかストレス解消の場とか。

 今のバイト先はそれを両方解消できて尚且つ拘束時間も少ない、それでいてお給料もとんでもなく高いという夢のようなバイトなんですよね。

 やっぱり人には言えませんけど。

 世間的にもバイトの規則的にも、です。


 魔法少女、と言っても、私ができることはピンク色のビームを出すことだけなんですけどね。

 シンデルン、違う、シニタエテル…… これも違いますね。

 もう、覚えにくいのよね、魔法少女の名前!

 青色ちゃんは、いろんな魔法を開発しているみたいだけど、私あんまりお勉強は得意じゃないから、未だにピンク色のビームを撃ち出すのしか覚えられてないですし。

 しかも、その名前が「ペルシカンヴァリネン・ヴァレフデュス」とか舌噛みそうな魔法の呪文を言わないといけないですしで、お母さん、てんてこまいですよ。

 これもやっとの思いで覚えたんですよ。

 この魔法と変身する魔法だけは必須なので。

 でも、周りの魔法少女ちゃん達はものすごく強いし、ストレス解消にはなるしで良い職場なんですよね。

 それに私も子供の頃はやっぱり魔法少女に憧れてましたしね。一度はやってみたかったので夢も叶ってますよ。

 私が知っている魔法少女よりも戦隊ものに近い気がしますね。色とりどりの魔法少女ちゃんが五人もいますし。

 赤色ちゃんだけは普通の子ですけども。

 私は変身しているので身バレの可能性はありませんが、赤色ちゃんだけはただのコスプレなんですよね。

 身バレでもしたら可哀そうよね。

 さてさて、考え事はこの辺にして、お買い物に行かないといけません!

 そろそろ半額シールが貼られるお時間ですので。

「パパさん、パパさん! お母さんはスーパーに買い物に行ってきますよ、お仕事大変ですけど、子供達の事よろしくお願いしますね」

 パソコンの前でお仕事をしているパパさんにそう伝えると、パパさんは無言で手を振って応えてくれます。

 うーん、ちゃんと聞いているか怪しいですが、もうお姉ちゃんが帰ってきてくれているので、まあ、大丈夫でしょう。

 では、お母さん、半額シールの品々、見切り品を求めて、いざ、出陣です!!




「続いてはこのピンク色のゴスロリ魔法少女…… こやつのビームはとことん厄介じゃ」

 青色の魔法少女ほどではないが、このゴスロリ魔法少女も十分に厄介ではある。

 特に後方に居座られビームを連射されるだけで勝負にならない。

 だが、それも個別撃破なら何も問題ない。

「そうですっピ! あのビームは誘導ビームで撃たれるとほぼ確実に当たるっピ! かわせたのは毒電波遮断怪人・コバエーンだけだったっピ!」

「その後、その毒電波遮断怪人・コバエーンも青色の魔法少女の魔法で撃墜されておったがな」

 青色の魔法少女はその場に合わせた多彩な魔法を扱う。

 どれくらいの魔法のレパートリーがあるかは分からぬが、それでも毒電波遮断怪人・マダムマンティスならまず間違いなく仕留められるであろうて。

 ふふ、楽しみではないか。異種間の百合と言う奴も。

「厄介っピ! 厄介っピ!」

「しかも、あのビーム、見た目以上に威力が高い…… 装甲自慢の怪人達がこどごとく灰燼と化していた」

 そう、誘導性能も高いのに加え、その威力が尋常ではない。

 恐らくは標準的な小型ミサイル並みの威力はあり、少なくとも戦車を破壊する程度の威力はありそうじゃ。

 いくら怪人とはいえ直撃したらまず助からん。

 それを、ああも連射されては手も足も出ん。

「怪人だけに灰燼だっピ?」

「コホン、マスタよ。マスタ・ケイジュよ。あのビームは鏡で反射することは可能か?」

 光線のように思えるが、熱光線と言うわけでもなさそうではある。

 しかし、魔法由来の物となると物理法則もあまり役に立つとも思えん。

 そうなると、マスタに確認せねばならん。これだから魔法と言う奴は厄介極まりない。

「出来るけど無理だっピ」

「む? どういうことかね?」

「普通の鏡では不可能っピ! けど怪人化の魔法で鏡を怪人化すればできるっピ! でも不可能だっピ!」

 ますます意味が分からん。

 この妖精は何を言っているんだ。

「それは?」

「鏡もアルミホイル同様、魔法を基本的に弾くっピ! それゆえ弱い怪人しか作れないっピ! 弱い怪人ではあのビームは反射には耐えれないっピ!」

「なるほどのぉ、ならば、まずは当たらない怪人を用意するしかあるまい」

 しかし、鏡型の怪人を量産するならばあるかもしれぬな。

 アルミホイルとは違い多少コストは上がるが仕方あるまい。

 いや、ここのトイレの付属品の鏡を使えば、それなりに数は用意できるか?

「流石ハカセだっピ! それは、どんな怪人だっピ?」

「あのビームはある程度の衝撃を与えることで炸裂し爆発することはわかっておる。なにか障害物をとっさに作れたり隠れれたりする怪人が良かろう」

 となると、奴か、あるいは奴か……

 この時点で数は限られてくる。

「流石っピ! 流石ハカセだっピ!」

 褒められるのは素直に嬉しいが、マスタ・ケイジュは手放しで褒めてくれるからな。

 そろそろ有難みが薄れてきて…… いや、ここは素直に喜ぶべきだ。

 そうでなくてはいかん。

「ここではヘルデスラー大総督と呼びなさい」

「ごめんですっピ! ハカセ!」

「ふむ。とりあえず条件に合いそうな怪人はこやつしかおるまい……」

 あやつに余り攻撃性能がないので、ゴスロリ魔法少女の討伐は今回は無理かもしれぬな。

 まあ、他の魔法少女と合流しなければ、今回はそれで良しとしようではないか。

 今回の本命は青色の魔法少女。一番魔法の扱いが巧みなあやつをこちらに引き込めれば、それでいい。

 魔法という不確定要素がなくなれば、こちらの作戦も立て易く、それだけで不安要素はなくなるというものだ。

 ゴスロリ魔法少女は、後日量産した鏡怪人か戦闘員だかに任せれば済むことだ。

 なにも何も問題はない。

 なぜなら、ワシは天才なのだからな。

 




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