第4話
ダメだ、状況が悪化してしまった······仕方ない、一度センとクロを戻すか
ムクロはセンとクロに従魔モンスターを召喚解除するスキル〈召喚術:送還〉を使おうとするが、シグマが歩き出しセンとクロの間に入り込み、スカートの中から一瞬で2丁の拳銃を取り出しセンとクロに銃口を向けた。
「シグマ殿コレハ我々ノ問題デス! 下ガッテ頂キタイ!」
「その通りだ、これは我らの問題だ、それとも人形風情が邪竜王である我に歯向か──」
シグマはセンに向かって微笑で振り向くが眼は笑ってなく怒りのようなのを感じ取った。
「セン様、マイマスターが説明している途中なのに、聞く耳を持ちませんでしたね?」
「我はただ──」
「聞く耳を、持ちませんでしたね?」
「だから我は──」
「持ちませんでしたね?」
「──くっ······すまな、かった」
シグマの圧に押されセンは等々観念して構えを解いた。
「わかればいいのです。······そしてクロ様」
シグマはクロの方を振り向いた。
「我モ、デスカ?」
「当然です。マイマスターの忠誠心は見事ですが、理由は先程のセン様と同じです」
「ソ、ソレハ······タシカニ我ハ主殿ノ従魔ナノニ聞コウトモシナカッタ······申シ訳、ナカッタ」
素直に行いを認め威嚇を解くとクロの周りに生み出した冷気と氷が消失した。
「素直でよろしいです」
シグマは拳銃を下ろしスカートの中にしまいノワールの方へ歩き出した。
「ほら、ノワール様。泣くのはお止め下さい、折角の綺麗な顔が台無しですよ」
「うぅ、シグマ殿······グス」
シグマはノワールの腕を掴み慰めながら立たせた。
「もう、ノワール様は私より強いのですから、ちゃんとしてくださいね」
「······申し訳ない」
「マイマスター、この様なことにマイマスターの大事な時間を無駄にしてしまい申し訳ございません」
シグマはムクロに向けて深く頭を下げて謝ってきた。
「主殿、申シ訳ナイ」
「私もすみませんでした。不甲斐無いばかりに主君を困らせてしまって」
「······すまなかった」
シグマに続いてクロとノワールも謝ってきたがセンだけが不機嫌そうな顔で謝ってきた。
「いや、もう問題ないから気にするな、次から気をつけるようにしてくれたらいいから、それにしてもよくあれほどの気迫を出していたのによく止められたな、クロは伝説級センに至っては神獣級だってのに」
「当然です。私はマイマスターのメイド兼従魔ですから、例え相手が私より格上だったとしてもマイマスターを害する者であれば許しません」
モンスターにはそれぞれランクがあり下級、中級、上級、最上級、伝説級、神獣級の六段階に分けられる。伝説級以上となればボスモンスターと同類でありゲームでは上級プレイヤーが数十人掛かりでも苦戦するほどの強力なモンスターも存在した。
今回召喚した4体のランクは、シグマは最上級、クロとノワールが伝説級、そしてセンが神獣級である。特にクロとセンは元ボスモンスターであり、特にセンは元々ゲーム内では最強の
本来であればボスモンスターは従魔化できないが【人魔の黒書】の装備スキル〈絶対従属〉により〈契約〉が可能となっている。
「······そうか、じゃあこれからも期待しているからな」
そう言うとムクロはシグマの頭を一撫でするとシグマの頬が少し赤くなった。
「さて、話を戻すが、俺たちは今──」
俺はシグマたちにこの世界は俺たちがいた世界とは別だと伝えた。流石に俺がゲームのプレイヤーに転生した事は流石に話さなかった。
「──っていう状況になっている。信じてもらえるどうかわからないが」
流石に信じてもらえないか?
「なるほど、前とは別の世界か······確かに信じがたいが、我々は召喚されたばかりだ。主の言葉を信じるしかない、そう思わんかお前ら」
そう言うとセンはシグマたちに問いかけた。
「私はマイマスターの話を信じます」
「我モ、シグマ殿ト同意見デス」
「私も同じです。主君を信じます」
「ッ······そうか、ありがとう、みんな」
まさか信じてくれるとは思わなかった······話の内容自体も転生とゲームのことを除けば大体間違ってはいないしよしとするか。
「それはそうとして、我々はこれからどうすればいい?」
センがムクロに問いかけてきた。
「今はそこまで考えていない、けどまずはこの森から抜けることが先決だ。できれば街か村があるのならそこで情報を集めようと思う。異論がある奴はいないか?」
「私はマイマスターの決定に従います」
「我も同じく」
「我ハ主殿ト共二」
「私は主君に従うまで」
セン、シグマ、ノワール、クロは再びムクロの前に跪いた。
最初はどうなるかと思ったけど、どうやらセンたちを召喚して正解だったかもしれない、性格は難儀だが、実力はあるから問題はないだろ······これから、忙しくなりそうだな。
◆◆◆
同時刻。ムクロたちがいる反対側の森では、鎧を纏った数人の兵士が顔の上半分が見えないほどにフードを深く被った少女を追い回していた。
少女は兵士たちから少しでも逃げようと必死に息を切らしながらも森の中を駆け抜けた。
「逃がすな! 絶対に生かして捕まえるんだ!」
兵士たちも少女を捕まえようと追いかけるが一向に距離が縮まらない。
「クソッ! 魔法を使ってあいつの足を止めろ!」
兵士の一人が他の兵士に魔法を放つようにと指示を出した。
「ですが、王には生かして捕らえるようにと」
「だったら、死なない程度の威力の魔法を使え!」
「りょ、了解しました」
鞘から剣を抜き、逃げている少女に向かって剣を構えた。
「〈
剣の先から火の玉が数発放たれた。
「ハァハァハァ──ガハッ!」
放たれた数発の火の玉は、少女を外れるが最後の一発は少女の背中へと直撃しそのまま倒れ込んだ。
「よしよくやった! 俺が見てくる」
指示を出した兵士が安否を確認しようと少女が倒れ込んだ場所へと移動した。
よし、これで手柄は俺の物だ。これで俺も十二英雄だ。
満面の笑みで確認をするが倒れ込んだ場所には少女の姿はいなかった。
馬鹿な⁉ ガキはどこ行った! 死なない程度はいえ深手を負ってるはず⁉ いったいどこ行った!
「ガキがいなくなった! そう遠くには行ってないはずだ、探し出せ!」
指示を受けた兵士たちは少女を再び探し出した。
「······もう······行った、みたい」
少女は兵士たちの足音が遠くなるのを待って茂みの中から這いずりながら出てきた。
「少しでも······遠くに行かないと、帝国に行けば······」
背中に焼けただれるような痛みに耐えながら少女は歩き出した。
痛い、熱い······お願い······誰でもいいから、助けて。
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