第13話
「どうやら、マイマスター。決着が着いたようですね」
「ソノヨウダ」
砂煙が徐々に晴れるとリュドは呆然と立ち尽くしており左耳から血を出し、ムクロが振り下ろした刀は地面にめり込んでいた。
「ころ······ころ、さ······」
リュドは放心状態となっており膝から崩れ落ち、ムクロは地面にめり込んだ刀を引き抜き鞘に納めた。
「なんてね。殺しはしない······おい! そこの兵士たち!」
ムクロは森に隠れていた兵士たちに向かって喋り出した。
「この放心状態の野郎を連れてさっさといけ······さもないと今度は、てめぇらの番だ」
兵士たちは慌ててリュドを担ぎ上げて、森の中へと逃げ去っていった。
まっ噓だけどね。この姿とさっきの戦闘を見れば、いやでも逃げたくなる。
「はぁ~やっと終わった。〈
ムクロは〈魔獣同化〉を解除したことで元の姿へと戻り、センも元へ戻った。
「お疲れ、セン」
「主、なんであの糸使いを殺そうとしなかった?」
「えっ?」
「主の決めたことにあまり詮索はしないが、あの人間は生かしておくべきではなかったはずだ」
「かもしれないね······あいつにとどめを刺すとき、あの一瞬……バカの言葉が過ったせいかな」
「バカ?」
「そのバカがこう言ったんだ『戦いで命乞いするヤツは戦いの覚悟が出来ていないから命を取る必要はない』ってな」
「ほぉ、それはまるでその者の呪いだな」
「いや······これは
ムクロは仮面を外してセンに向かって微笑んだ。
「さてと、ひと段落……と言いたいとこだけど、ここからが問題だ」
ムクロはフェルネスの方に振り向いた。
この後ムクロたちは場所を移動しその頃には夕暮れとなりムクロたちは、野宿をすることにした。センとノワールは周辺の警戒を行い、伏せているクロにフェルネスとその横にシグマを座らせ、ムクロはフェルネスの正面に座った。
「さて、フェルネス。君は何者なんだ?」
フェルネスはムクロの質問に少しびくついた。
「あの糸使いは君が混血だからって言っていたけど、そのフィルデル王国のトップのヤツがわざわざここまで追ってくる理由にはならないはずだ。捕まえるだけなら部下に任せればいい話なのに来た……君は一体?」
「そ、その……」
フェルネスは黙り込んでしまった。
当然か、さっきの会ったばかりの人に教えられるわけないか。ここは諦めた方がいいかな。
「別に言いたくないなら、無理に言わなくていいから、悪いな」
「い、いいえ……私はムクロに命を救ってもらった。お礼をしたいけど、今の私は何もない……だから、少しでもお礼ができるのなら、話します」
フェルネスは覚悟を決めたかのようにフードを外すと、白銀の色をした髪が現れた。
白銀色の髪だったのか……めっちゃ綺麗だな。
ムクロはフェルネスの白銀の髪に一瞬見惚れてしまった。
「私には……フィルデル王国に追われる理由があるんです」
「追われる理由? それって?」
「……私には……魔族の血が流れているからです」
「魔族!?」
魔族、ゲームでもいたな課金種族だったけど。魔族は基本となる五つの種族より遥かに戦闘能力が高く褐色肌に黒髪が特徴の種族。課金種族の中でも最も高額な種族だったな、俺も買おうと思ったけど高すぎてやめたけど。
「でも俺が知る限り、魔族は褐色肌に黒髪が特徴だったはず、君はどう見ても肌が褐色じゃないし髪の色だって違うけど?」
「いえ、正確に言えば私には……半分、魔族の血が流れているんです」
「半分……魔族? それって?」
「私は、人と魔族の間に生まれた……魔人なんです」
「魔人?」
これまたゲームでも存在しなかった種族の名前だな? フェルネスが人と魔族との混血だから襲われた?······いや、それだけじゃないはず、まだ······なにか、引っかかる。
「君が魔人だってことは分かったけど、なんで亜人や混血を差別する王国なんかに?」
「そ、それは……これは、お母さんから聞いた話ですが……」
フェルネスは生い立ちついて話してくれた。
フェルネスが言うには十数年前。フィルデル王国とラデル帝国との間で戦争が起りその時に帝国の同盟国であるアルディド魔族国も戦争に参加していて、当時王国の王都の外れにある森で暮らしていたフェルネスの母親が手負いの魔族の兵士を看病した際に結ばれたらしく、その数日後に魔族の兵士は忽然と姿を消し、その後フェルネスが生まれた。
当時の王国も亜人や混血に対して酷い差別はあったが、幸いなことに王都の外れにある森に暮らしていたから、魔人だったフェルネスのことは隠せていたが、半年前に母親が流行り病で病死し、しばらくはフェルネスが一人で暮らしていたが、ある日突然王国の兵士たちがフェルネスを魔人だと気づかれて、敵対国である帝国に向かって逃げているところ、そして今に至るという。
「そう言う事だったのか、けどなんで君のお母さんは魔族の兵士を助けたんだ? 王国は亜人や混血を差別しているのに?」
「……私のお母さんは、亜人や混血に対して差別意識を持ってなかったんです。だから、王都での亜人や混血の人たちの扱いを見て、息苦しく感じて、森の中に住むようになったと聞かされました」
「なるほどね、でもなんで帝国に? 魔族国に行けば父親の手掛かりがあるんじゃ?」
「魔族国は、帝国の西側にあるんです。ですので魔族国に行くには、帝国を通らなければいけないです。けれど私には魔族国まで行けるお金がありません。ですので――」
「帝国でお金を稼いでから、魔族国に行こうとした。でしょ?」
「……はい……でも、それはきっと無理ですね」
フェルネスがそう言うとふさぎ込んでしまった。
「無理?」
話しから考えると、帝国は魔族国と同盟を結んでいることだから、亜人や混血の差別がないはず。
「それは、どうして?」
フェルネスはゆっくりと顔を上げた。
「私には……生まれつき
「……えっ!?」
それを聞いたムクロは、静かに驚いてしまった。
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