第14話
「
ムクロは〈神の魔眼〉を使ってフェルネスのステータスを確認してみた。
名前:フェルネス 種族:魔人 職業:なし Lv1
HP:100/100 SP:120/120
STR:20 INT:40
VIT:15 AGI:10
DEX:10
スキル
なし
確かに
「その、なんだ······
「はい······本来、
そうか、ゲームだと自分の好きな職業になれた。けど、この世界では違うんだ。この世界での職業は体の一部みたいなものなんだ。
「これは、きっと私が生まれてきた罰なんです」
「罰? なんでそう思うんだ?」
「王国では、嫌われている混血として生まれ······お母さんを亡くして、職業なく、生まれた。これは神様の······罰、なんです」
フェルネスは裾を握りして、ポロポロと涙を流しはじめた。
フェルネス······君は過酷すぎる人生を歩んできたんだな。こういう時あのバカはなんて言うかな? いや、考えても仕方ないか。
ムクロは立ち上がり、空いているフェルネスの隣に座り込んだ。
「······そんなことないよ」
「······えっ?」
フェルネスは、その一言でムクロの方へ振り向いた。
「フェルネス、神様ってのは気まぐれで案外何も考えてないんなんだよ。生まれてきただけで罪なら、俺だって生まれてきた罪がある······俺は人間と吸血鬼の混血、
「
「あぁ、そうだ、だからフェルネスも混血に生まれてきたからからって罪とか言うな、種族ってのは自分では決められないかな」
まっ俺の種族はゲームで選んだやつだからな、なんかすげえ噓ついてごめん。けど······あのバカなら噓ついてもこう言うかもしれないからな。
ムクロは罪悪感を感じたが、フェルネスを励ますために押し殺した。
「そうだとしても、私には
「そうか、
「えっ?」
ムクロは〈アイテムボックス〉を開き何かを探り出すと、大量の本を次々と取り出した。
「ムクロ、それは?」
「これは【転職の書】。これを使えば、職業が取得できるはずだ」
【転職の書】とは職業を取得したまま、特定の
ムクロは【人魔の黒書】を手に入れてからは、多くの職業クエストと職業ダンジョンを挑戦していき、今では数十にも及ぶ【転職の書】を保持する。
「職業を取得!?」
フェルネスは流石に驚きを隠せなかった。
「そうだうまくいけば、職業が取得できるはずだ」
フェルネスの話を聞くに、この世界では職業は生まれ持った体の一部のようなもの、つまりこの【転職の書】は世界にとって逸脱したアイテム。それにこれを使って職業が取得できる確証もないこれは、賭けだな。
「フェルネス、君はどうしたい?」
「私······」
流石に不安だよな、いきなり職業が取得できるって言ってもな俺でも不安になる。仕方ないここは時間をおいてゆっくり――
「大丈夫です」
「ッ? シグマ?」
仕切り直そうと考えていたがシグマがフェルネスの手をそっと握り話しかけてきた。
「マイマスターなら大丈夫ですよ。フェルネス様。この
「シグマさん······私、守る力が欲しい!······けど」
「ならば、欲しろ」
センもフェルネスに話しかけてきた。
「娘、その書物は
「セン殿! そんな言い方では、フェルネスさんがかわいそ──」
「黙ってろ」
「ひっ! ごめん、なさい」
センの威圧的な言動にノワールは口を挟むが、センの一言ですぐにしょげてしまった。
「セン、ノワールの言う通り、流石に──」
「私、やります!」
「え? フェルネス」
「センさんの言う通りです。私、もう逃げません!」
センはフェルネスの言葉に迷いは感じないように思えたのか、それ以上喋らなかった。
「わかった。さぁこの中から選んで」
「はい」
フェルネスはムクロの【転職の書】の山から探っていると、ある一冊の【転職の書】を手に取った。
「これは?」
「え? どれどれ? これは【転職の書:
「【
「そっ 魔法職【
「いえ、私、これにします。何だか、これなら上手く使えそうな気がします」
ムクロは他の魔法職をすすめるがフェルネスは変えようとしなかった。
「わかった。じゃあ、ページを開いてそれで発動する」
「はい」
【転職の書】はページを開くことで発動し、【転職の書】は光の粒子となり
フェルネスは【転職の書:
エフェクトはゲームと一緒か、問題は。
ムクロはすかさず〈神の魔眼〉でフェルネスのステータスを見た。
名前:フェルネス 種族:魔人 職業:【
HP:100/100 SP:120/120
STR:20 INT:40
VIT:15 AGI:10
DEX:10
スキル
〈元素魔法〉Lv1/10〈四属性魔法〉Lv1/10
〈元素の叡智〉Lv1/10〈詠唱短略化〉Lv1/10
「フェルネス、どうやら成功した」
「ムクロ、私······私に職業が刻まれている、のが、わかりま、す。──う、うぁぁぁぁぁぁ!」
「おっと!?」
転職が成功するとフェルネスは泣き出してしまい、ムクロ抱きついてきた。それを見ていたシグマとノワールが羨ましそうな顔をしてこっちを見ていた。
まったく、ふっ、フェルネスが泣き止んだら、シグマ達にもお礼しておくか。
ムクロはフェルネスを慰めるようにそっと頭を撫でた。泣き止むのに1時間ほどかかった。
◆◆◆
その頃、敗戦した王国の兵士たちとリュドは王国に向かっていた。
「クソッあの野郎、ぶっ殺してやる!」
行き場のない怒りでリュドは辺りの木々を切り刻んでいた。それを見ていた兵士たちは怒りの矛先向かないかと、びくついていた。
「このまま、帰ってたまるか! お前ら、もう一度ヤツらの所にいくぞ!」
「リュド様! 落ち着いてください! 今から行っても間に合わないかと──」
「黙れっ! 雑魚の分際で、俺に命令をするな!」
落ち着くよう説得した兵士の一人がリュドの怒りを買い、リュドの糸によって切り刻まれた。
「俺は負けてねぇ! 油断しただけだ! 今度こそ──」
「今度こそ、なんだ?」
「あぁ!? 誰だ!」
リュドはノイズが混じったような声が聞こえる方へ振り向くと、暗闇から外套で体を隠しフードと顔の上半分しかない仮面を被り背中には、大剣背負った者が現れ出した。
「あっ、あなたは!? ど、ど、ど、どうしてここに!」
リュドや兵士たちが相手を見るや否や体中から汗が出始めて体が震え始めた。
「なに、帰りが遅いんで迎えに来たのだが、なんだそのざまは?」
「い、いや、その、これには」
「失敗したんだ。仕方ない······すまないが死んで役に立ってもらうぞ」
呆れた口調で背負っている大剣を手にかける。
「ま、待ってください! 仕方なくて、あの混血を守っていあいつが、強くて!」
「あいつ? あいつとは誰だ?」
「な、名前までは分からないが、職業は従魔職で、たしか“
「 “
その名を聞くと大剣から手を離した。
「······そうか、なら、王様からはこっちから伝えとく、命拾いしたな。リュド、帰るぞ」
そう言うと後ろを向いて歩き出した。
「た、助かった」
安堵したリュドと兵士たちは、一気に腰が抜けて座り込んでしまった。
「やっぱりあいつには関わっちゃ、ダメなんだ。俺たちの中で、王様が最も気に入っている。
「そうか、ふっふふふ、ついに……来たか、早く来い! “
その者は、マスク越しで不適切な笑みを浮かべながら暗闇へと消えた。
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