第22話
「グ、グゥ······グガァァァァァァァァァァッ!」
センのパンチで吹き飛んだゴブリンキング・メイジは立ち上がり、咆哮を上げた。
「マジかよ、センのパンチを受けて立つのかよ!?」
ムクロはゴブリンキング・メイジの異様な頑丈さに驚いた。
「さすがは変異種ってところか」
「中々楽しめそうだ」
「ちょ、ちょっと待て、セン! お前が本気を出したら──」
「遊ぶ程度だ!──〈縮地〉」
センはムクロの話を聞かず、〈縮地〉を使い砂煙を巻き上げゴブリンキング・メイジへと向かった。
「あ~全く、センはどうも話を聞かない所があるな······俺は俺の役割やりますか」
ムクロは座り込むフェルネスの方へ向かった。
「フェルネス、大丈夫?」
「は、はい······けど、体が······突然、動けなく、なって······」
「恐らく、〈術式編集〉でレベルに見合わない高威力の〈
ムクロは【
「動かないで、〈
ムクロが唱えると宝石は砕け、フェルネスの傷が治り始めた。
「これで、さっき受けた魔法攻撃のダメージも治ったはず、動ける?」
「少し、だけ······杖をつけば、何とか」
フェルネスは杖を使って立とうとするが、その足は震えて立てずにいた。
「自力で歩くのは難しそうだ。シグマ、ノワール、フェルネスを頼む」
「お任せください主君」
「承知致しました。フェルネス様、お手をどうぞ」
シグマ、ノワールはフェルネスを支えながら立たせた。
「よし、早いところ離れよう。このままだとセンの巻き添えになるからな」
その頃センは〈縮地〉を使い、ゴブリンキング・メイジへ向かっていた。
「さて、久々に本気を出せる相手だといいんだが」
センは笑みを浮かべてながら、鞘から刀を抜いた。
「グァァッ!──〈■■■■■■〉!」
ゴブリンキング・メイジはセンに向かって火の球を放った。
「またその魔法か。他の魔法は持っていないのか? だが、我に魔法は通じないがな」
センは足を止めて、片手で刀を上段に構えた。
「──フンッ!」
火の球が当たる直前、センは上段に構えた刀を振り下ろした瞬間に火の球は2つに分かれ後方へ爆発した。
「グォ!?」
ゴブリンキング・メイジは咄嗟に後ずさりをした。
「言ったろ、我には、魔法は効かんと」
センは笑みを浮かべ再び片手で刀を構えた。
「やっぱり、あの時、見間違いじゃなかった」
その光景を見ていたフェルネスは驚愕した。
「······今······
「おっ! さすがにフェルネスは気づいた?」
「そうですよ! 魔法攻撃の対処法は基本的には避けるか防ぐか、しかないはず、なのに、どうして?」
「たしかにフェルネスの言う通り。けど、センの刀ならそれが可能になる」
「カタナ?」
「そっ、センが持つあの武器は【妖刀 サザンカ】。その装備スキルは魔法を斬ることができる」
「魔法を、斬る?」
センが持つS級装備品【妖刀サザンカ】の装備スキル〈魔法切断〉。魔法スキルを無条件で斬ることができる刀であり、魔法攻撃だけでなく防御系の魔法スキルと魔法スキルで生み出した物質にも有効となっている。
「センの高い、物理攻撃力と【妖刀サザンカ】の〈魔法切断〉。物理防御だろうと魔法スキルによる防御だろうと、大概は貫くことができる。まさにセンは俺の従魔の中でも、最強の一角だよ」
「最強······す、すごいですね」
けど、欠点もある。【妖刀 サザンカ】はあくまで、魔法を
「ハァ~ やっぱり、ダメだ」
センは呆れた口調で刀の峰部分を肩に置いた。
「変異種と聞くから、それなりに強いと思ったが、拍子抜けだ······だが、貴様も王の名を持つのなら、我も本気の一端······
センは笑みを浮かべて、刀を片手で水平に構えて腰を深く落した。
【侍】が持つスキル〈奥義刀術〉。最大で10つのスキルを内包、攻撃型から補助型と多彩ではあるが、その多くが一対一で真価が発揮されるスキルが多い。
「グゥ、グゥ、グァガァァァァァァァッ!」
センの構えを見たゴブリンキング・メイジは、杖を振り回しながら突進して来た。
「ほぉ、貴様も気づいたか、モンスターとしての感か? だが······もう遅い──〈縮地〉!」
センは〈縮地〉で一気にゴブリンキング・メイジとの距離を詰めた。
このスキルは〈縮地〉のような加速系スキルを加えることで貫通力を高め射程を拡張、さらに主から頂いた刀と我の攻撃力が加われば、物理だろうと魔法さえも貫く一手となる。
「これにて終わり──〈玖式・
センは構えている刀を突き出し、刀の先がゴブリンキング・メイジの腹部に触れた瞬間。腹部に穴が開き、轟音と共に十数メートル後ろの崖にも穴が空いた。
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