第二章
第15話
「すみません······抱きついたうえに、泣いてしまって」
フェルネスはムクロに抱きついて泣いていたが、しばらくして落ち着いてきた。
「別にいいよ、当然のことをしただけ······それより、女の子がいつまでも······その格好はいけないと、思う」
「えっ?」
フェルネスは着ている服をよく見ると、ボロボロで泥だらけだとに気づいた。
「あっ! すみません」
フェルネスはとっさにムクロから離れた。
「大丈夫だよ……早く着替えた方がいいな」
ムクロは【
「よかったら、これ使って、きっと似合うよ」
「あ、ありがとうございます」
フェルネスはムクロからの着替えを受け取った。
「シグマ、ノワール、悪いけどフェルネスの着替えを手伝くれないか?」
「主君の頼みなら、任せてください」
「承知しました。さ、フェルネス様こちらへ」
ノワールとシグマは、フェルネスの手を引いて森の中へ向かった。
「さてと、フェルネスはシグマたちに任せて大丈夫だろ」
「それもそうだな······しかし、なぜ主が女ものの服を持ってる?」
「んっ!」
センの質問にムクロは口を
「どうしてなんだ?」
「いや~それはだね~随分前のクエストで手に入れたんだけど、報酬欄には装備品としか、書かれてなかったから、たまに女性専用の装備品が手に入ることがあるんだよ」
「主も失敗するときもあるんだな」
「そっ······そんなことより! センたちに聞きたいことがある!」
ムクロは慌てて話の話題を変えた。
「センたちから見て、あの糸使いの実力はどれほどだと思う?」
ムクロは先ほど戦ったリュドについてセンたちに問いかけた。
「あの糸使いか、フンッ、せいぜいレベル70程度だろ」
「我モ、セン殿ト同意見デス。」
やっぱり、センたちも同じ意見か。あんなのがあと11人となると······いや、他にあいつよりレベルが高いやつがいるかもしれない······それに〈神の魔眼〉でステータスが見れなかったのは〈神の眼光〉っていうスキルの影響か? これは近いうちにフィルデル王国に行く必要があるが、フェルネスのことを考えると──。
「お待たせ致しました。マイマスター」
「いかがでしょうか? 主君」
ムクロは声の方へ振り向くと、そこにはノワール、シグマと一緒にマフラーを巻いてブレザーのような服装をしたフェルネスもいた。
「あのー私が、こんなきれいな服を、着てもいいでしょうか?」
「大丈夫。予想通り、すごく似合ってよ」
でも、ちょっと過剰装備すぎるかな? フェルネスにあげたのはS級装備品の【精霊守護のマフラー】と【聖魔女学院の聖装】、そしてA級装備品の【水精霊の靴】の3つ。まっ【精霊守護のマフラー】以外は、女性プレイヤー専用だし問題ないか。
「他にもあるけど······もうすぐ夜も近いし今日ゆっくりと休むところだが······また、奴らが来るかもしれないから、これを使う」
「マイマスター。それは?」
ムクロが取り出したのは、ガラスでできた呼び鈴のような形をしたアイテムを取り出した。
「これは【不可視の呼び鈴】っていうアイテムでね。まぁ見てれば分かるよ」
そう言うとムクロは呼び鈴をチリーンと鳴らすと周りに半透明の結界が生み出された。
「【不可視の呼び鈴】は特殊な結界がはり、外部からの認識ができなくる。これで今夜は少しゆっくり休めると思える」
「こんな、アイテムを持ってるなんて、ムクロって、本当にすごいですね」
フェルネスは少し驚いていた。
「それはどうも」
気配までは消せないけど、今夜はゆっくりと休ませたいしね。
「さて、晩飯の支度でもしようか」
この後、ムクロが食べた夕食は少し美味しく感じた。
◆◆◆
「──君は、僕より強かったからさ」
あれ、これは? この前の夢の続き? ってこと俺、眠ったのか。
夢である自覚はあったが、ムクロの意思とは関係なく話が進んだ。
「なんで、俺がお前より強いんだ? あの時、俺はお前と戦ってボロ負けしただろ! 何の嫌味だ?」
「嫌味じゃないさ。僕は、今まで色んな相手と戦ってきたけど、どうも、これっ!だという相手と戦ったことがほとんどないんだよ」
「強者うえの孤独ってヤツか? さすが最強さんは言う事が違うね。最強の
【騎士王】は全系統の職業で最強とも言われる職業。系統は戦士職ではあるが、最大の特徴は本来職業は一人一つまでだが、【騎士王】のスキル〈英雄の記憶〉の効果で最大10個の職業を取得ができるようになり、更にスキル〈英雄の成長〉で取得している職業に応じてレベルアップ時のステータス上昇が変化する。つまり取得する職業の組み合わせによっては、複合職以上にステータスやスキルを得ることができる。
『ツヴァイアースオンライン』が実装されて以来、今までこの職業に就けたプレイヤーはたったの5人。
“偽英雄”ジャスティ。
“
“創魔帝”マクスウェル・シュレディンガー。
“
“軍王”レギオス。
どれを除いても最強の存在。そのあまりの強さから、『ツヴァイアースオンライン』の運営の関係者じゃないかって言う噂も後を絶たないが──
「最強だなんて、この職業を持てたのは運が良かっただけだよ──」
ジャスティは照れ顔をしながら嬉しそうに体をくねくねと体を動かした。
こいつに関しては絶対有り得ないな、こんなバカが運営の関係者じゃないな断言できる。
「──とまぁ冗談はさておき、君は僕がこれっ!だと思い、いずれ僕を超えると思ったからギルドマスター代理にしたんだよ」
ムクロはジャスティの言葉にはお世辞などは感じなかった。
「ジャスティ、だから──」
「って言っても、僕が認めた相手って結構いるんだけどね、君をギルドマスター代理にしたのも、ほぼテキトーだったしね」
その一言がなければ、かっこよかったんだけどな。
ジャスティの一言でムクロは呆れた始めた。
「ギルドの中で僕を超えるのなら、ディザスと脱退した子かな」
「ん? そういえば、俺の前のギルドマスター代理ってどんなヤツだったんだ?」
「あっそういえば言ってなかったね。名前は──」
名前を言い始める直前。目の前に靄のようなのがかかり、目の前が真っ白になった。
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